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1次試験対策

【経営法務】優先して覚えるべき条文と暗記のコツ|中小企業診断士1次

中小企業診断士1次「経営法務」で優先して覚えるべき条文と暗記のコツを、現役診断士監修で解説。会社法・知的財産権・契約法・民法など範囲の広い科目を、頻出論点別の重みづけと比較表で整理し、暗記に頼り切らない理解の道筋を示します。

中小企業診断士1次試験の「経営法務」は、会社法・知的財産権・契約法・民法・独占禁止法など、出題範囲が広いわりに配点はそれほど大きくない、いわゆる「範囲対得点の効率が悪い科目」と言われます。条文をすべて覚えようとすると消化不良に陥り、逆に手を抜くと足切り(40点未満)に直結する科目でもあります。

この記事では、経営法務で優先して覚えるべき条文・論点を頻出度別に整理し、暗記のコツを現役中小企業診断士の監修のもとまとめました。範囲の広さに圧倒されている受験生が、合格点(60点)と足切り回避(40点超え)を両立させるための学習地図として活用してください。

経営法務の科目構造と「割り切りの戦略」

最初に、経営法務という科目の輪郭と、戦略的な向き合い方を整理します。範囲がそもそも広いことを前提に、どこに時間を投下するかの設計が合否を分けます。

試験時間・配点と問題数

経営法務は試験時間60分・配点100点で、問題数は概ね20〜25問前後で推移しています。1問あたりの配点は4〜5点程度と、1次科目のなかでは1問の重みが比較的大きいのが特徴です。ケアレスミスの影響が大きいため、確実に取れる論点を落とさないことが、合格点到達の前提になります。

出題範囲の広さ

出題範囲は大きく**会社法/知的財産権/契約・取引関連法/民法/独占禁止法/その他関連法(金融商品取引法・倒産法など)**に分かれます。1問あたりの配点が大きい一方で、1論点が出題される確率は決して高くないため、すべてを完璧に押さえようとすると時間対効果が下がります。

「合格点」と「足切り回避」を分けて考える

経営法務は、近年難化傾向で平均点が下がる年度もあり、受験界では「得点源にしにくい科目」として知られます。戦略としては、60点(合格点)を目標にせず、まず40点台後半(足切り回避ライン)を確実に超え、余力で50〜60点を狙うのが現実的です。他科目で稼げる受験生ほど、経営法務は守りの科目に位置づけるのが定石です。

優先度マップ:どこから覚えるか

経営法務の論点には、明らかな出題頻度の差があります。最初に「毎年出る論点/隔年出る論点/たまに出る論点」を分けて、時間配分を決めましょう。

頻出度別の優先度マップ

領域 主な論点 出題頻度 学習優先度
会社法 機関設計、株式・株主、設立、組織再編 毎年複数問 最優先
知的財産権 特許・実用新案・意匠・商標・著作権 毎年複数問 最優先
契約・取引法 売買契約、契約不適合責任、消費者契約法 毎年 優先
民法 債権・債務、時効、相続 隔年〜毎年 優先
独占禁止法 不公正な取引方法、課徴金、企業結合 隔年
倒産法 民事再生・会社更生・破産の違い 隔年
国際法務・英文契約 準拠法、英文契約条項 たまに
その他 金商法、個人情報保護法 たまに

「最優先」と「優先」だけで全体配点の7割前後を占める年度が多く、まずはここを集中的に押さえます。「中」「低」は捨てるのではなく、頻出論点の延長線上で軽く触れる程度にとどめるのが現実的です。

重点投下すべき2大領域

なかでも、会社法と知的財産権は経営法務の二大頻出領域です。両者だけで毎年全配点の5割前後を占めるため、ここを落とすと合格点到達が難しくなります。**「会社法と知的財産権で40点、残りで20点」**を目標値に置くと、学習設計が立てやすくなります。

会社法で優先して覚えるべき論点

会社法は条文数が多く、全部を覚えようとすると挫折します。試験で問われやすい論点に絞って覚えるのがコツです。

機関設計のパターン

会社法でもっとも頻出なのが機関設計です。株式会社では、株主総会・取締役(会)・監査役(会)・会計監査人・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社といった機関の組み合わせが、会社の規模や公開/非公開で変わります。

  • 公開会社(株式の譲渡制限なし)は取締役会の設置が必須
  • 大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は会計監査人の設置が必須
  • 監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の3類型の違い

この3点を中心に、「会社の規模と公開性で必要な機関がどう変わるか」を表で整理しましょう。

株式・株主の権利

株式・株主関連では、普通株式と種類株式の違い、株主の権利(共益権・自益権)、株主総会の決議要件が頻出です。決議要件は次の3つを区別します。

  • 普通決議:議決権の過半数で過半数賛成
  • 特別決議:議決権の過半数で2/3以上賛成(定款変更、組織再編など)
  • 特殊決議:頭数や持株数の特殊要件(株式譲渡制限の追加など)

「どの決議事項がどの要件か」を、頻出パターンに絞って暗記するのが合理的です。

設立と組織再編

設立では発起設立と募集設立の違い、現物出資の検査役調査などが問われます。組織再編では合併(吸収・新設)、会社分割(吸収・新設)、株式交換・株式移転の4類型の違いを押さえます。とくに「どの組織再編で株主総会の特別決議が必要か」「反対株主の株式買取請求権」が頻出論点です。

取締役の責任

取締役の善管注意義務・忠実義務、競業避止義務・利益相反取引、経営判断原則といった責任関係も、近年定番の論点になっています。実務上の不祥事や判例を背景にした出題が増えているため、テキストの記述に加えて代表的な判例の結論だけでも押さえておくと有利です。

知的財産権で優先して覚えるべき論点

知的財産権は会社法と並ぶ二大頻出領域です。産業財産権4種+著作権の5本柱で整理します。

産業財産権4種の比較

権利 保護対象 存続期間 審査 出願先
特許権 高度な技術的アイデア(発明) 出願から20年 実体審査あり 特許庁
実用新案権 物品の形状・構造に関する考案 出願から10年 形式審査のみ(無審査) 特許庁
意匠権 物品・建築物・画像のデザイン 出願から25年 実体審査あり 特許庁
商標権 商品・役務を区別する標識 登録から10年(更新可・半永久) 実体審査あり 特許庁

この比較表は経営法務の超頻出論点です。「保護対象・存続期間・審査の有無」の3点を、4種類の権利で確実に区別できるようにしておきます。とくに実用新案だけ無審査で権利行使に技術評価書が必要な点、商標だけ更新で半永久な点は、選択肢で狙われる定番ポイントです。

著作権の特徴

著作権は産業財産権と性格が異なり、創作と同時に発生(無方式主義)、登録不要、保護期間は原則として著作者の死後70年という点を押さえます。著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)が一身専属で譲渡できないのに対し、著作財産権は譲渡可能、というのも頻出論点です。

共有・職務発明・先使用権

実務的な論点として、共有特許の取り扱い(他の共有者の同意なしに実施は可、譲渡には同意必要)職務発明の帰属と相当の対価、**先使用権(特許出願前から実施していた場合の権利)**などが定番論点です。条文番号まで覚える必要はありませんが、結論を1行で言語化できるようにしておきます。

契約・民法で優先して覚えるべき論点

契約法と民法は、改正民法(2020年4月施行)の論点が依然として出題されやすい状況です。

契約不適合責任

旧民法の「瑕疵担保責任」が、改正民法で「契約不適合責任」に再構成されたのは、近年の頻出論点です。買主の救済手段として、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除の4種類が認められ、消滅時効は「不適合を知った時から1年以内に通知」が原則という点を押さえます。

消滅時効

民法の消滅時効は改正により、原則として**「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」**のいずれか早い方とされました。商事債権の特則(5年)が廃止され、原則に統合された点が試験では狙われやすいポイントです。

消費者契約法・特商法

BtoC取引では、**消費者契約法(不当条項の無効、誤認・困惑による取消)と特定商取引法(クーリングオフ)**が定番論点です。クーリングオフ期間の長さ(訪問販売・電話勧誘8日、連鎖販売20日など)は混同しやすいため、表で整理して覚えるのが効率的です。

連帯保証と根保証

民法改正で個人根保証の極度額設定が必須になった点、事業に係る債務の保証で公正証書による保証意思の確認が必要になった点も、近年の頻出論点です。経営者保証ガイドラインとの関係も含めて押さえておきます。

暗記のコツ:条文を「丸暗記しない」5原則

経営法務で挫折する受験生の多くは、条文を丸暗記しようとして消化不良に陥ります。条文の番号と文言ではなく、結論と例外を覚えるのが正攻法です。

コツ1:「原則→例外→趣旨」の3点セットで覚える

法律は「原則がこう、例外がこう、その理由(趣旨)がこう」という3点セットで成立しています。たとえば「株式会社は株式譲渡自由が原則、ただし定款で譲渡制限を設けられる、趣旨は閉鎖性の維持」のように、3点を1セットで覚えると応用が利きます。

コツ2:比較表で違いを浮かび上がらせる

特許・実用新案・意匠・商標の4種比較、合併・会社分割・株式交換・株式移転の4種比較のように、**「比較表を自作する」**のが定着の早道です。テキストを写すのではなく、自分の手で項目を並べ替えて作るのがポイントです。

コツ3:判例の結論だけ覚える

経営法務では判例ベースの出題も増えています。判決理由まで深追いせず、**「この事案では○○という結論が出た」**という結論だけ覚える割り切りが現実的です。経営判断原則・取締役の責任関係などは、代表判例の結論を押さえるだけで選択肢の絞り込みが容易になります。

コツ4:数字は「セット」で覚える

存続期間(特許20年・意匠25年・商標10年)、決議要件(過半数・2/3・3/4)、クーリングオフ期間(8日・20日)など、数字は単独でなく類似項目とセットで覚えるのが鉄則です。1つだけ覚えると混同しやすく、セットで覚えると相互参照で記憶が安定します。

コツ5:直前期に総ざらいする論点を絞る

直前1か月は新しい論点を増やさず、会社法(機関設計・決議要件・組織再編)と知的財産権(4種比較・著作権)の総復習に時間を集中させます。この2領域だけで40点前後を取れる状態にしておけば、足切りリスクは大幅に下がります。

過去問の使い方と勉強の進め方

経営法務は範囲が広いぶん、過去問の使い方で学習効率が大きく変わります。

領域別・論点別に解く

過去問は**「年度別」ではなく「領域別・論点別」**に解くのが効率的です。直近5年分から「会社法の機関設計」だけを抜き出して連続で解くと、出題者の問い方の癖と引き出しが見えてきます。

学習サイクル:テキスト→過去問→誤答ノート

学習サイクルは**「テキストで論点理解→過去問で問われ方を体験→誤答ノートで弱点を集約」の3ループが王道です。誤答ノートには「論点名/なぜ間違えたか/正答の根拠(条文の要旨や判例の結論)」**を1問1ページで蓄積しましょう。詳しくは過去問の入手方法と効果的な使い方も参照してください。

学習時間の目安

経営法務は範囲の割に配点が小さいため、1次全体800〜1,000時間のうち80〜120時間程度の投下が現実的な目安と言われます。ここに過剰な時間を投下するより、財務・会計や企業経営理論に時間を回した方が、合計点では有利になる場面が多いと考えられます。

法改正への対応

法律は改正があるため、最新版テキストを使うのが大前提です。とくに会社法・民法・知的財産権法は近年改正が続いており、古いテキストや問題集の解説では誤情報が混じる懸念があります。改正論点はテキストに「改正」マークが付くことが多いため、優先的に演習しておきましょう。

他科目・2次試験との接続

経営法務は1次完結型の科目ですが、他科目との関係も意識しておくと学習効率が上がります。

企業経営理論との重なり

会社法の機関設計・組織再編論点は、企業経営理論の組織論・経営戦略論と一部重なります。同じ「組織」というテーマで両方の視点から整理すると、片方を学ぶともう片方の理解も深まる相乗効果があります。詳しくは企業経営理論の覚え方も参照してください。

財務・会計との重なり

会社法の会計監査・計算書類、知的財産権の資産計上などは、財務・会計の制度会計と接続する論点です。両科目の学習を同時並行で進めると、それぞれで触れる用語が相互補強になります。

2次試験ではほぼ問われない

経営法務の知識は、2次試験(事例Ⅰ〜Ⅳ)では直接的にはほぼ問われません。事例Ⅰで組織再編が背景情報として登場する程度です。そのため、1次で完結させる意識で、深追いせずに必要十分なラインで切り上げるのが効率的です。

よくある質問(FAQ)

Q. 経営法務は何時間くらいかければよいですか?

1次全体で800〜1,000時間が目安と言われるなかで、80〜120時間程度の配分が現実的です。範囲は広いものの配点が小さいため、過剰投下は他科目の足を引っ張ります。法律の素養がない方は120時間寄りに、行政書士など法律系資格を持つ方は短縮可能と考えられます。

Q. 法律の勉強は初めてです。何から手をつけるべきですか?

会社法の機関設計と知的財産権4種の比較表から始めるのが定石です。この2領域は経営法務の頻出度がもっとも高く、初学者でも図表で整理しやすい論点が多いため、学習の入口に向いています。民法・契約法は会社法と知的財産権の後で十分間に合います。

Q. 条文番号まで覚える必要はありますか?

基本的に不要です。1次試験は条文番号を直接問う問題はほぼなく、**条文の内容(原則・例外・要件・効果)**が問われます。判例も判例番号や日付までは不要で、結論と理由の要旨を押さえれば対応できます。

Q. 足切り(40点未満)を回避するには何を優先すべきですか?

**会社法(機関設計・決議要件・組織再編)と知的財産権(4種比較・著作権の基本)**の2領域を確実に押さえれば、配点ベースで40点前後を確保できます。残りの民法・契約法・独禁法は得意なところだけ拾う意識で、深追いしないのが現実的です。

Q. 法改正への対応はどうすればよいですか?

最新版のテキストを使うことが第一前提です。中古の古いテキストや古い問題集の解説は、改正前の内容が混在している可能性があります。直前期には、利用している予備校や出版社の「改正情報まとめ」をチェックして、自分の知識を上書きしておきましょう。

Q. 過去問は何年分やればよいですか?

直近5年分を領域別・論点別に2周が目安です。10年以上前の問題は会社法・民法の大改正前のものが混じるため、現行制度との齟齬が出やすく注意が必要です。新しい年度を厚く回すバランスが合理的です。

まとめ

経営法務は範囲が広く配点が小さい、効率の悪い科目です。優先論点に絞って割り切ることが、合格点と足切り回避を両立させるカギになります。本記事の要点を振り返ります。

  • 経営法務は会社法・知的財産権の2大領域で全配点の5割前後を占める
  • 学習目標は**「60点」より「40点台後半を確実に超え、余力で50〜60点」**が現実的
  • 会社法は機関設計・決議要件・組織再編の3点に重点投下
  • 知的財産権は産業財産権4種+著作権の比較表で整理
  • 暗記は**「原則・例外・趣旨」の3点セットと比較表**が定着の早道
  • 過去問は領域別・論点別に直近5年分2周、最新版テキストで法改正に対応

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出典・参考

  • 一般社団法人 中小企業診断協会/日本中小企業診断士協会連合会 公式試験概要・過去問題(令和5・6・7年度)
  • 中小企業診断士1次試験「経営法務」公開問題および公式解答
  • 会社法・民法・特許法・実用新案法・意匠法・商標法・著作権法 各条文
2026年5月13日15分で読めます
監修:中小企業診断士 久保谷太志執筆:診断士エアポート 編集部
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