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2次試験対策

【事例Ⅳ】財務・会計計算問題の頻出パターン完全攻略|中小企業診断士2次

中小企業診断士2次試験の事例Ⅳで頻出する財務・会計の計算パターンを徹底解説。経営分析、CVP分析、NPV・投資意思決定、CF計算、セグメント別貢献利益まで、現役診断士監修で出題傾向と解き方の手順を整理します。

事例Ⅳ(財務・会計)は、中小企業診断士2次試験4事例のなかで計算中心の事例として位置づけられ、出題テーマは「経営分析・CVP分析・NPV(投資意思決定)・キャッシュフロー・セグメント別貢献利益」の5領域に集約されます。パターンを押さえれば最も得点が安定する事例でもあります。

この記事では、過去問の傾向をもとに事例Ⅳの頻出計算パターン5領域を整理し、各パターンの基本公式・解答手順・つまずきやすいポイントを現役中小企業診断士の監修のもと解説します。電卓操作と計算過程の書き方まで踏み込み、得点源化のロードマップとしてご活用ください。

事例Ⅳの全体像と得点戦略

事例Ⅳは「与件文+設問」の構成こそ他事例と同じですが、配点の6〜7割が計算問題に振り分けられています。残り3〜4割は記述問題(経営分析の所見、投資判断の理由、財務的助言など)で、計算結果と一貫した論理を求められます。

配点と時間配分の目安

80分という制約のなかで、典型的な配点は次のように分布する傾向です。

設問 内容 想定配点 想定時間
第1問 経営分析(指標選定+記述) 25点前後 20分
第2問 CVP分析またはセグメント別貢献利益 20〜25点 15〜20分
第3問 NPV・投資意思決定 25〜30点 25〜30分
第4問 記述(財務的助言・リスク分析) 15〜20点 10分

この配分から逆算すると、第1問と第2問で40点前後を確実に拾い、第3問のNPVで部分点を積み上げる戦略がもっとも安定します。第3問を完答しようとして時間切れになるのが、事例Ⅳ最大の失敗パターンです。

部分点を確実に拾う書き方

事例Ⅳは計算過程・途中式・解答数値が個別採点されるため、最終解答が合わなくても部分点を取れる科目です。次の3点を守るだけで、得点期待値が安定します。

  • 計算過程を箇条書きで番号を振って書く
  • 単位(円・万円・千円)を毎回明示する
  • 端数処理(四捨五入の位)を設問の指示どおりに行う

「答えが合っているか」より「採点者が論理を追えるか」を意識するのが事例Ⅳの作法です。

学習開始の時期

事例Ⅳは1次の財務・会計の知識を土台にしますが、計算スピードは別途トレーニングが必要です。1次試験終了直後(8月)から週3〜5回の演習をスタートし、10月の本試験まで継続するのが現実的なペースです。

頻出パターン1:経営分析(収益性・効率性・安全性)

事例Ⅳの第1問は、ほぼ毎年「与えられた財務諸表から経営指標を3〜4個選び、課題と強みを記述する」形式で出題されます。

選ぶべき3つの観点

経営分析の指標は数十種類ありますが、事例Ⅳで使うのは次の3観点に絞られます。

観点 代表指標 計算式
収益性 売上高総利益率/売上高営業利益率/売上高経常利益率 各利益 ÷ 売上高 × 100
効率性 売上債権回転率/棚卸資産回転率/有形固定資産回転率 売上高 ÷ 各資産
安全性 自己資本比率/流動比率/負債比率 自己資本 ÷ 総資本 × 100 など

各観点から1つずつ、合計3つの指標を選んで「強み1つ+弱み2つ」または「強み2つ+弱み1つ」で構成するのが定石です。

指標選定の手順

  1. 与件文から課題のヒント(在庫過多、売上低迷、固定費負担、過剰投資など)を拾う
  2. 同業他社平均または前年数値と比較し、差が大きい指標をリスト化
  3. 与件文のキーワードと数値の差が連動している指標を優先的に選ぶ
  4. 観点が偏らないよう、収益性・効率性・安全性から1つずつ取る

与件文に「在庫が積み上がっている」と書かれていれば棚卸資産回転率、「設備投資をした」と書かれていれば有形固定資産回転率というように、与件と数値を結びつけられる指標を選ぶのがポイントです。

記述のテンプレート

経営分析の記述は60〜80字程度で、次の型に当てはめると安定します。

〇〇率が×%と同業他社比で〔高い/低い〕。これは与件文の「△△」が要因で、〔強み/弱み〕となっている。

「数値→与件の根拠→評価」の3点をコンパクトに収める書き方が、採点者に意図が伝わりやすくなります。

頻出パターン2:CVP分析と感応度分析

第2問では、CVP(損益分岐点)分析を軸にした計算が頻出します。1次試験で学んだ公式を土台に、複数製品や条件変化を絡めた応用問題が出題されます。

基本公式の再確認

求めるもの 公式
損益分岐点売上高 固定費 ÷ 限界利益率
損益分岐点販売数量 固定費 ÷(販売単価 − 変動費単価)
目標利益達成売上高 (固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率
損益分岐点比率 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 × 100
安全余裕率 (実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高 × 100

CVPの基礎はCVP分析(損益分岐点分析)の解説記事で網羅していますので、不安な方はそちらで概念を固めてから取り組むと効率的です。

事例Ⅳならではの応用論点

事例Ⅳでは、単純な損益分岐点計算より一歩踏み込んだ次の論点が頻出です。

  • 複数製品の加重平均限界利益率:売上構成比をウェイトに限界利益率を平均
  • 感応度分析:販売単価10%下落/変動費5%上昇のときの損益分岐点変化
  • 固定費の変動費化:業務委託化などコスト構造の変更後のCVPシミュレーション
  • 目標営業利益率からの逆算:「営業利益率10%を達成する売上高は?」

これらは公式の組み合わせで解けますが、条件を読み飛ばすと一気に外すため、与件と設問条件を表に整理してから計算に入る習慣が有効です。

計算ミスを減らすコツ

CVP問題は数字が大きく、千円単位/万円単位の取り違いが起こりやすい論点です。次の3点を守るとミスが減ります。

  • 与件の単位(千円か万円か)を最初に丸で囲む
  • 限界利益率は%ではなく小数で電卓に入力(0.4 など)
  • 解答欄の単位(千円・百万円)を再確認してから書き写す

頻出パターン3:NPV・投資意思決定

第3問で出題されるNPV(正味現在価値)は、事例Ⅳで最も配点が高く、かつ最も差がつく論点です。完答は難しくても、部分点を計画的に積み上げるのが現実的な戦略です。

押さえるべき4つの計算要素

NPV計算は次の4要素で構成されます。

  1. 初期投資額:設備投資、運転資本の増加など
  2. 各年のキャッシュフロー(CF):税引後営業利益+減価償却費 ± 運転資本変動
  3. 割引率:通常はWACC(加重平均資本コスト)が与えられる
  4. 回収・残存価値:投資終了時の機械売却益、運転資本の回収

このうち、各年のCF計算が最もミスが多い箇所です。

CF計算の標準フォーマット

税引後CF =(売上 − 費用 − 減価償却費)×(1 − 税率)+ 減価償却費
       =(売上 − 費用)×(1 − 税率)+ 減価償却費 × 税率

減価償却費は現金支出を伴わないが税効果を生むため、「税効果(タックスシールド)」の部分だけを足し戻す形が標準です。この式を暗記しておくと、与件のパターンが変わっても応用できます。

NPVの計算手順

NPV計算は次の5ステップで進めます。

  1. 初期投資額を確定し、年度0のCFとしてマイナスで記載
  2. 各年の税引後CFを上の公式で算定
  3. 残存価値・運転資本回収を最終年度に加算
  4. 各年CFに割引係数(複利現価係数)を掛けて現在価値に換算
  5. すべての現在価値を合計し、NPVを算出(プラスなら投資採用)

割引係数は問題文に表で与えられるのが通例です。自分で計算する必要はなく、表から正しい値を読み取れるかが勝負になります。

部分点戦略

NPVは満点を狙わず、次の優先順位で部分点を取りに行きます。

優先度 取りに行く要素 期待配点
各年の税引後CFの計算式と数値 配点の3〜4割
初期投資額と残存価値の特定 配点の2割
割引計算とNPV最終値 配点の3〜4割

CFまでを確実に書ければ過半の部分点が確保できます。残り時間で第4問の記述に移るほうが、最終得点の期待値は高くなるのが事例Ⅳの構造です。

頻出パターン4:キャッシュフロー計算書の作成

第2問または第3問で、間接法によるキャッシュフロー計算書(営業CF)の一部作成が問われることがあります。

営業CFの構成要素

間接法の営業CFは、税引前当期純利益から以下を加減算して算出します。

  • 加算:減価償却費、引当金の増加額、支払利息、売上債権の減少、棚卸資産の減少、仕入債務の増加
  • 減算:受取利息・配当金、売上債権の増加、棚卸資産の増加、仕入債務の減少
  • 末尾:法人税等の支払額をマイナス

「資産が増えればCFは減る、負債が増えればCFは増える」という運転資本のルールを押さえれば、暗記量は最小限で済みます。

投資CF・財務CFも基本パターンを押さえる

投資CFは設備投資・有価証券売買、財務CFは借入・返済・配当が中心です。営業CFほど複雑な計算は問われませんが、3区分の合計=現金及び現金同等物の増減という構造を理解しておくと、検算に使えます。

CF計算書の基礎は別記事で詳しく扱う予定ですので、本記事では「事例Ⅳで頻出する論点」に絞って整理しています。

頻出パターン5:セグメント別貢献利益と意思決定

複数の製品ライン・事業セグメントを抱える企業を題材に、事業の継続/撤退判断や製品ミックスの最適化を問う問題も頻出です。

貢献利益の概念

貢献利益は、限界利益から個別固定費を差し引いた利益で、各セグメントが共通固定費と全体利益にどれだけ貢献しているかを示します。

セグメント貢献利益 = 売上高 − 変動費 − 個別固定費
              = 限界利益 − 個別固定費

意思決定では、貢献利益がプラスなら撤退すべきでない(共通固定費の回収に貢献している)という判断軸が基本です。

撤退判断の典型例

ある事業の営業利益がマイナスでも、共通固定費を配賦したあとの数値であれば、貢献利益はプラスのケースが多くなります。撤退すると共通固定費は他事業に振り替わるだけで、会社全体の利益はむしろ悪化するという落とし穴があります。

事例Ⅳでは、こうした「営業利益では赤字に見えるが貢献利益では黒字」という構造を見抜けるかが問われます。

製品ミックスの最適化

制約条件(生産能力、原材料の上限など)があるときは、制約資源1単位あたりの限界利益が大きい製品から優先的に生産するのが正解です。たとえば1時間あたりの限界利益が大きい製品をフル稼働させ、余った時間で他製品を生産する方針になります。

この論点は線形計画法の入口にあたるため、計算自体は四則演算で済みますが、**「何を基準に並び替えるか」**を見誤らないことが重要です。

事例Ⅳで使う電卓・記述・時間配分のコツ

計算量の多い事例Ⅳでは、知識量だけでなく操作スピードと書き方の作法が得点に直結します。

電卓操作の3つの工夫

  • メモリ機能(M+・MR)を使い、途中式の数値を保持する
  • 桁数の多い計算は千円単位・万円単位に揃えて入力
  • 税率や割引係数は再利用するため、計算開始時にメモ欄に転記

電卓のキーを叩く回数が多いほどミス率は上がります。本試験では「12桁・大型・ルート機能つき」の関数電卓以外の事務用電卓が一般的に使われています(試験要項で持込条件を事前に確認しておきましょう)。

解答用紙への書き方

事例Ⅳの解答用紙は枠が狭いことが多く、計算過程を整理して書く工夫が必要です。

  • 式と答えを改行して分離する
  • 単位を毎行末に記載する
  • 端数処理の指示(四捨五入の位)を式の前に書く

「採点者が計算過程を一目で追える」レイアウトを意識すると、部分点が取りやすくなります。

時間配分の見直しポイント

80分の本番では、各問題に張り付かず、20分・15分・25分などの目安時間で一度区切る判断が大切です。1問に20分以上かけても解答が固まらないときは、いったん他問題に移って取り戻したほうが、総得点は上がる傾向があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 事例Ⅳはどのくらいの時期から勉強を始めれば良いですか?

最低でも本試験の2〜3か月前、できれば1次試験終了直後の8月初旬から着手するのが安全です。事例Ⅳは計算スピードと電卓操作の習熟が必要なため、他事例より早めに準備しないと得点が伸びにくい傾向があります。

Q. 簿記2級レベルの知識は必要ですか?

必須ではありませんが、簿記3級+管理会計の基礎が固まっていると学習がスムーズです。簿記2級のキャッシュフロー計算書・連結会計までは事例Ⅳでは深く問われないため、過剰投資にならない範囲で活用するのが現実的です。財務・会計の学習順序は簿記未経験者向けの財務・会計の勉強法で詳しく解説しています。

Q. NPVが苦手で部分点も取れません。どう対策すれば良いですか?

まず「各年の税引後CF計算」だけに絞って訓練するのが効果的です。NPV全体を解こうとせず、減価償却費のタックスシールドと運転資本の変動だけを正確に処理できる段階を目指します。そのうえで割引計算は最後に乗せるイメージで、過去問5年分を反復すると安定して部分点が取れるようになります。

Q. 経営分析で同業他社平均が与えられていない場合はどう判断しますか?

与件文に同業他社の数値がない場合は、前年同期との比較や**業界一般水準(中小企業白書の指標)**を参考に判断します。本試験では多くの場合、同業他社または前年の数値が与えられるため、与件をよく読んで比較対象を取り違えないことが先決です。

Q. 計算問題と記述問題、どちらを優先すべきですか?

配点の重い計算問題から着手するのが基本ですが、第4問の記述を後回しにし過ぎて時間切れになるのがよくある失敗パターンです。80分のうち最後の10分は記述に確保し、計算問題に詰まったら一度切り上げる判断力が合否を分けます。

Q. 事例Ⅳの過去問は何年分やれば良いですか?

直近5〜10年分を反復するのが目安です。事例Ⅳは出題パターンが安定しているため、5年分を3周以上回すと頻出論点が体に染みつきます。過去問の入手と使い方は過去問の入手方法と効果的な使い方も参考にしてください。

まとめ

事例Ⅳは中小企業診断士2次試験のなかで、もっともパターン化が進んでいて得点を計画しやすい事例です。本記事の要点を整理します。

  • 出題は「経営分析・CVP・NPV・CF計算・セグメント別貢献利益」の5領域に集約
  • 第1問・第2問で40点前後を確実に拾い、第3問のNPVで部分点を積む戦略が安定
  • 計算過程・単位・端数処理を丁寧に書くことで部分点が取りやすくなる
  • NPVは完答より「税引後CFまで確実に書く」優先順位で取り組む
  • 直近5〜10年の過去問を反復し、電卓操作と計算スピードを鍛える

事例Ⅳは反復学習が得点に直結する事例で、早めの着手と過去問の周回で合格点に届きやすくなります。診断士エアポートでは、全7科目の映像授業と過去問演習を月額3,980円で提供しています。2次試験対策の全体像は2次試験対策の基本もあわせてご覧ください。


出典・参考

  • 一般社団法人 中小企業診断協会/日本中小企業診断士協会連合会 公式サイト(試験科目・出題範囲)
  • 経済産業省/中小企業庁 中小企業白書(経営指標の業種別水準)
2026年5月12日15分で読めます
監修:中小企業診断士 久保谷太志執筆:診断士エアポート 編集部
事例Ⅳ中小企業診断士 財務2次試験経営分析NPV

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