中小企業診断士の2次試験に合格したら、実務補習または実務従事で15日以上の実務要件を満たし、合格日から3年以内に経済産業大臣への登録を申請します。登録が済んで初めて「中小企業診断士」になります。
この記事では、令和8年度(2026年度)の2次試験を受けた方を主な読者に想定し、合格発表から実務補習の申込、登録申請、登録後の更新までを時系列で整理しました。金額・期限・手続きは、中小企業庁の「中小企業診断士の各種申請・届出の手引き及びQ&A」と日本中小企業診断士協会連合会の公表情報をもとにしています。
中小企業診断士試験の合格後の流れ|全体像
まず全体の流れを押さえておきましょう。2次試験の合格はゴールではなく、「登録を申請できる資格を得た」段階です。
合格から登録までの4ステップ
合格後にやることは、大きく次の4つです。
- 合格の確認と合格証書の保管(登録申請で提出する書類になる)
- 実務要件(15日以上)を満たす:実務補習の受講、または実務従事(診断助言業務・窓口相談業務)
- 登録申請:マイナポータルによるオンライン申請が原則
- 公示・資格者証の交付:申請を受理した月の翌々月に氏名と登録番号が公示される
令和8年度合格者のスケジュール早見表
令和8年度試験の公表日程と、実務補習の例年の実施時期をあわせると、次のような流れになります。
| 時期 | イベント | やること |
|---|---|---|
| 令和8年10月25日(日) | 2次試験(筆記) | 受験・再現答案の作成 |
| 令和9年1月13日(水) | 2次試験 合格発表 | 合否確認・合格証書の保管 |
| 令和9年1月 | 2月実施の実務補習の申込 | 受付期間を協会サイトで確認して申し込む |
| 令和9年2月〜3月 | 実務補習(2月実施分) | 15日間または8日間コースを受講 |
| 令和9年5月頃 | 7・8・9月実施の実務補習の申込 | 8日間コースの2回目などを申し込む |
| 実務要件を満たした後 | 登録申請 | マイナポータルで申請 |
| 申請受理月の翌々月 | 公示・資格者証の交付 | 登録完了 |
令和8年度から口述試験が廃止されたため、2次試験は筆記の合格発表で最終結果が確定します。合格発表から2月実施の実務補習までの間隔が短いので、発表前から段取りを考えておくと慌てずに済みます。
合格発表の直後にやること
合格発表の当日から数週間は、手続き面でもっとも忙しい時期です。発表前後にやることを整理します。
合格証書を受け取り、大切に保管する
登録申請では「中小企業診断士第2次試験合格証書」の提出が求められます(オンライン申請ではPDFデータ、紙申請では原本)。紛失すると手続きが滞るため、受け取ったらスキャンしてデータを残し、原本は保管しておきましょう。
実務補習の申込期間を確認する
2月実施の実務補習は、例年1月に受付が行われます。日本中小企業診断士協会連合会が公表した令和8年度の日程でも、令和9年2月〜3月実施分の受付は1月に設定されています。合格発表から受付締切までの期間が短くなる可能性があるため、発表日前に協会サイトの案内を確認しておくのが安全です。
職場・家族との日程調整
15日間コースや8日間コースは、平日を含む日程で組まれる回があります。企業内で働く方は、有給休暇の取得や業務の調整が必要になります。現役診断士の立場から見ると、合格発表を待たずに「合格していたら2〜3月に休みを取るかもしれない」と上司に伝えておくだけでも、調整が格段に楽になります。
実務補習とは|8日間・15日間コースと費用
実務補習は、登録実務補習機関である日本中小企業診断士協会連合会が実施する実習です。指導員のもとで受講生がチームを組み、実在する中小企業を訪問して経営診断を行い、報告書をまとめて提案します。
コースの種類と受講料
現在のコースは「15日間コース」と「8日間コース」の2種類です。以前あった5日間コースは廃止されています。受講料は令和8年7月実施分から改定されました。
| コース | 日数 | 受講料(令和8年7月実施分以降・税込) | 登録に必要な回数 |
|---|---|---|---|
| 15日間コース | 15日 | 240,000円 | 1回 |
| 8日間コース | 8日 | 128,000円(テキスト所持者は127,300円) | 2回 |
8日間コースは2回受講して合計16日となり、15日以上の要件を満たします。7・8・9月の夏季は2回分をまとめて申し込む区分もあり、受講料は255,300円(税込)と案内されています。改定前の令和8年2月実施分は、15日間コースが209,300円でした。受講料は改定されることがあるため、申込時に協会の最新の募集要項を確認してください。
実施時期と地域
実務補習は主に2月〜3月と7月〜9月に、全国の主要都市で開催されます。地域やコースごとに定員があり、人気の日程は早めに埋まることがあります。申込人数が一定数に満たない場合は中止になることもあるので、第2希望まで考えておくと安心です。
受講資格
受講できるのは、直近3年度以内の2次試験合格者で、まだ中小企業診断士の登録を受けていない方です。たとえば令和8年7・8・9月実施分は、令和5〜7年度の2次試験合格者が対象でした。
実務従事という選択肢
実務補習の代わりに、実務従事で要件を満たす方法もあります。中小企業庁の手引きでは、新規登録の実務要件は「登録実務補習機関が行う実務補習の受講」または「中小企業者に対する経営の診断助言業務、または経営の窓口相談業務への従事」と定められています。
実務従事として認められる業務
手引きに示された主な業務と証明書は次のとおりです。
- 経営の診断助言業務:診断助言業務実績証明書(様式第18・第19)
- 経営に関する窓口相談業務:窓口相談業務従事証明書(様式第20)。1日5時間以上の従事が1日の目安
- 実務補習の受講:実務補習修了証書(様式第13)
実務補習と実務従事を組み合わせて15日以上にすることもできます。なお、実務補習の「指導」や養成課程の実習指導は、新規登録の実務要件の対象外です。
カウントの注意点
1日に2社以上を指導しても、カウントは1日です。また、対象は中小企業支援法に定める中小企業者(一定の要件を満たす医療法人・社会福祉法人・NPO法人を含む)で、受診企業名の記載が原則必要です。勤務先の社長が診断士で、社長自身が自社を診断する場合は実績になりません。
実務従事の機会の探し方
実務従事は自分で機会を確保する必要があります。知人の経営者への診断助言のほか、診断士の団体や民間事業者が提供する実務従事の機会に参加する方法もあります。有償のプログラムもあるため、費用・日数・証明書の発行方法を事前に確認しましょう。
実務補習と実務従事の選び方
どちらで要件を満たすかは、時間・費用・人脈づくりの優先度で決まります。
比較表
| 観点 | 実務補習 | 実務従事 |
|---|---|---|
| 主催・確保 | 協会が企業と指導員を手配 | 自分で機会を探す |
| 費用 | 15日間コース240,000円など | 案件・プログラムによる |
| 日程の柔軟性 | 決められた日程に合わせる | 案件次第で調整しやすい |
| 指導・品質 | 指導員の指導を受けられる | 自分の力量に依存 |
| 人脈 | 同期の受講生・指導員とつながれる | 案件の相手先が中心 |
| 証明書 | 修了証書が発行される | 様式第18〜20を相手先に記入してもらう |
タイプ別の考え方
- 早く登録したい、まとまった休みが取れる:2月実施の15日間コース
- 休みを分けて取りたい:8日間コースを2回(2月と夏、または夏に2回)
- 費用を抑えたい、診断の相手先に心当たりがある:実務従事
- 独立や副業を考えていて人脈を広げたい:実務補習
実務でよく見る誤解は「実務従事のほうが楽」というものです。証明書の書式・押印・日数の数え方に不備があると申請が通らないため、手間はむしろかかる場合があります。初めての方は、実務補習で報告書作成の流れを経験しておく価値があります。
登録申請の手続き|必要書類とオンライン申請
実務要件を満たしたら、中小企業庁に登録を申請します。令和8年6月からマイナポータルでのオンライン手続きが始まり、原則オンラインでの申請が求められています。
必要書類
| 書類 | オンライン申請 | 紙申請 |
|---|---|---|
| 中小企業診断士登録申請書(様式第1) | 画面入力で代替 | 原本 |
| 第2次試験合格証書 | PDFデータ | 原本 |
| 実務補習修了証書 または 実務従事の実績証明書 | 修了証書は原本、実績証明書はPDFデータ | 原本 |
| 住民票の写し | 不要 | 原本(個人番号の記載がないもの) |
紙申請は、マイナンバーカードを持っていないなど、オンライン申請ができない方向けの方法です。紙申請の理由を確認されることもあります。
申請期限
1次・2次試験の合格者は、第2次試験合格日以降3年以内に実務要件を満たして申請する必要があります。令和8年度の合格者なら、合格日(令和9年1月13日予定)が起算点です。期限を過ぎると、この合格に基づく新規登録はできなくなります。
費用
登録申請に手数料や登録免許税はかかりません。紙申請の場合の郵送費や住民票の発行手数料程度です。
公示と資格者証の交付
申請内容が確認されると手続き完了しだい登録となり、申請を受理した日の属する月の翌々月に氏名と登録番号が公示されます。オンライン申請の方には「デジタル資格者証」が発行され、紙申請の方には登録証が簡易書留で郵送されます。手続中の登録証明書は発行されないため、名刺の発注や社内の資格申請は、登録完了を待って行いましょう。
登録後の5年間|更新要件は最初から意識する
登録の有効期間は、登録の日から5年間です。更新するには、有効期間内に次の2つを満たす必要があります。
更新登録の要件
| 要件 | 内容 | 必要量 |
|---|---|---|
| 専門知識補充要件 | 理論政策更新研修の修了、論文審査の合格、研修講師の担当 | 合計5回以上 |
| 実務要件 | 診断助言業務等への従事、実務補習の受講、実習・実務補習の指導 | 合計30日以上 |
更新申請は有効期間満了日の約1か月前から満了日まで受け付けられ、中小企業庁から事前の案内はありません。
5年を逆算した計画
理論政策更新研修は1年に1回ずつ受ければ5年で5回になります。実務30日も、1年あたり6日程度に分ければ無理がありません。企業内診断士の方は、最終年度にまとめて実務日数を確保しようとして苦労するケースがあるため、登録した年から少しずつ積み上げるのが現実的です。
中小企業庁の手引きでは、有効期間内に更新要件を満たせない人は「経営診断業務の休止」の申請を検討するよう案内されています。休止と再開の手続きも手引きに定められているので、転勤や育児などで実務から離れる予定がある方は、早めに確認しておきましょう。
合格者が見落としやすい注意点
合格後の手続きで、つまずきやすいポイントをまとめます。
登録前に「中小企業診断士」と名乗らない
登録が完了するまでは、制度上まだ中小企業診断士ではありません。名刺やSNSのプロフィールでは「中小企業診断士試験 合格」などと正確に表記しましょう。
3年の期限は合格日から進む
「実務補習は来年でいい」と先延ばしにすると、仕事や家庭の事情で受講できない年が続き、期限が迫ることがあります。8日間コースを2回で満たす計画なら、1回目は合格した年度のうちに受けておくと余裕が生まれます。
実務補習はキャンセル料がかかる
申込後のキャンセルは、時期に応じて受講料の一部が返金されない規定があります。申し込む前に、休暇を取れるかどうかを確定させておきましょう。
協会への入会は任意
登録と都道府県の診断士協会への入会は別の手続きです。入会は任意で、研究会や仕事の紹介などを目的に検討する方が多い一方、入会しなくても登録・更新はできます。
ケース別モデルスケジュール
令和8年度に合格した場合の進め方を、3つのケースで示します。日程は例年の傾向にもとづく目安です。
ケース1:2月の15日間コースで早期に登録
- 令和9年1月13日:合格発表
- 1月:2月実施の15日間コースに申込
- 2月〜3月:実務補習を受講、修了証書を受け取る
- 4月:マイナポータルで登録申請
- 6月:公示・デジタル資格者証の交付(4月受理の場合、翌々月)
ケース2:8日間コースを2回に分ける
- 1月:2月実施の8日間コースに申込
- 2月〜3月:1回目を受講
- 5月:夏季の8日間コースに申込
- 7月〜9月:2回目を受講
- 修了後に登録申請、受理の翌々月に公示
ケース3:実務従事で要件を満たす
- 合格後:診断助言の相手先や実務従事の機会を探す
- 数か月〜1年:15日以上の診断助言を行い、様式第18〜20の証明書を取得
- 要件を満たした段階で登録申請
よくある質問
Q. 2次試験に合格したら、すぐに中小企業診断士と名乗れますか?
名乗れません。合格後に実務補習または実務従事で15日以上の実務要件を満たし、登録申請を経て登録されてから中小企業診断士となります。それまでは「2次試験合格者」と表記するのが正確です。
Q. 登録申請の期限はいつまでですか?
第2次試験の合格日以降3年以内に、実務要件を満たして申請する必要があります。令和8年度の合格者は、合格発表日(令和9年1月13日予定)が起算点です。期限が近づいてから慌てないよう、合格した年度のうちに実務補習の計画を立てておきましょう。
Q. 実務補習の費用はいくらですか?
令和8年7月実施分以降の受講料は、15日間コースが240,000円、8日間コースが128,000円(税込)です。8日間コースは2回受講が必要なので、合計では15日間コースより高くなります。受講料は改定されることがあるため、申込時に協会の募集要項で確認してください。
Q. 5日間コースはもうないのですか?
現在の実務補習は15日間コースと8日間コースの2種類です。過去に5日間コースを受講済みの方は、受講日数の合計が15日以上になるように組み合わせる扱いが案内されています。
Q. 登録にお金はかかりますか?
登録申請そのものに手数料や登録免許税はかかりません。費用の中心は実務補習の受講料で、紙申請の場合は郵送費や住民票の発行手数料が加わる程度です。
Q. 申請してから登録完了までどれくらいかかりますか?
中小企業庁の手引きでは、申請を受理した日の属する月の翌々月に氏名と登録番号を公示し、デジタル資格者証を発行するとされています。たとえば4月に受理されれば6月の公示が目安です。
Q. 勤務先の業務で実務従事の日数を満たせますか?
勤務先が中小企業者で、経営者の指示のもとで自社の経営診断助言を行った場合などは、様式第19の証明書で実績にできる場合があります。ただし、社長自身が診断士で自社を診断するケースは対象外です。該当するか迷う場合は、中小企業庁の手引きのQ&Aを確認するか、担当窓口に問い合わせてください。
Q. 3年以内に登録できなかったらどうなりますか?
その合格に基づく新規登録の申請期限が過ぎることになります。仕事の繁忙期や出産・転勤などの予定がある方は、早めに実務補習を受けておくか、日程の融通が利く実務従事を組み合わせると、期限切れのリスクを抑えられます。
まとめ
- 2次試験の合格後は、15日以上の実務要件(実務補習または実務従事)を満たし、合格日から3年以内に登録申請する
- 令和8年度は口述試験が廃止され、令和9年1月13日の合格発表で合否が確定する。2月実施の実務補習の申込は1月
- 実務補習は15日間コース(240,000円)か8日間コース×2回(1回128,000円)。受講料は改定されることがある
- 登録申請はマイナポータルが原則で、手数料はかからない。受理月の翌々月に公示される
- 登録後は5年ごとに更新があり、理論政策更新研修5回と実務30日を計画的に積み上げる
試験の振り返りがまだの方は、再現答案の作り方や得点開示の方法もあわせてご覧ください。合格から登録までの全工程は中小企業診断士になるにはで、費用の総額は中小企業診断士の費用の記事で解説しています。
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出典・参考
- 中小企業庁 経営支援部 経営支援課「中小企業診断士の各種申請・届出の手引き及びQ&A」(令和8年6月)
- 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度の試験日程について」
- 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「令和8年7月・8月・9月実施 中小企業診断士実務補習について」「令和8年2月実施 中小企業診断士実務補習について」「令和8年度 中小企業診断士実務補習の日程について」

