中小企業診断士と税理士の最大の違いは、税理士には税務の独占業務があり、中小企業診断士にはないという点です。税理士は「税金の専門家」、診断士は「経営全般の相談相手」で、そもそも守備範囲が異なります。
この記事では、資格の位置づけ、試験制度、難易度と学習時間、仕事内容、年収、将来性の6つの軸で両者を比較し、さらに税理士資格による診断士1次試験の科目免除、ダブルライセンスの相性、どちらを目指すべきかのタイプ別判断まで整理しました。「どちらが上か」ではなく「自分の目的にどちらが合うか」で判断できる構成にしています。
中小企業診断士と税理士の違いを最初に整理する
細かい制度の話に入る前に、両者の性格の違いを押さえておきましょう。ここを取り違えると、比較の議論そのものが噛み合わなくなります。
税理士は「税務」、診断士は「経営」
税理士は税理士法に基づく国家資格で、税務代理・税務書類の作成・税務相談という3つの独占業務を持ちます。独占業務とは、その資格を持つ人でなければ報酬を得て行えない業務のことです。顧問先の申告書を作り、税務署とのやり取りを代理し、節税や税務処理の相談に乗るのが中心的な役割になります。
一方、中小企業診断士は中小企業支援法に基づく経営コンサルタントの国家資格です。経営戦略、マーケティング、組織・人事、生産管理、財務、法務、情報システム、中小企業政策までを横断的に扱います。独占業務は持たず、名称独占(有資格者だけが「中小企業診断士」を名乗れる)の資格です。
収入の生まれ方が構造的に違う
この違いは、そのまま収入の作り方に直結します。税理士は月次の顧問契約と決算・申告業務という継続収入が積み上がる構造を持ちます。診断士は公的支援機関の専門家派遣、補助金の計画策定支援、研修・執筆といった案件ごとの収入が中心です。
- 税理士:顧問契約というストック型の収入基盤を作りやすい
- 診断士:案件・スポット型が中心で、企業内で働きながら活用する人も多い
「どちらが上か」ではなく「何をしたいか」
現役診断士の立場から見ると、この2つは競合する資格ではありません。実務では、税理士が数字を作り、診断士が数字から打ち手を出すという役割分担が自然に成立します。比較検討の出発点は、「会計・税務の専門家として生きたいのか」「経営全体を見る立場に立ちたいのか」という問いです。
資格の位置づけと独占業務の違い
制度上の位置づけを、もう少し正確に整理します。
税理士の独占業務と登録要件
税理士の独占業務は税理士法第2条に定められた次の3つです。
- 税務代理:申告・申請・不服申立てなどを納税者に代わって行う
- 税務書類の作成:確定申告書、法人税申告書などを代理で作成する
- 税務相談:具体的な税額計算や税法の適用について相談に応じる
このほか、税理士は財務書類の作成や会計帳簿の記帳代行なども業務として行います。税理士になるには、試験合格(5科目)に加えて2年以上の実務経験が必要で、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録して初めて業務を行えます。
中小企業診断士の位置づけ
中小企業診断士には独占業務がありません。「経営コンサルティングは資格がなくてもできる」ためです。ただし、資格そのものに意味がないわけではありません。
- 経済産業大臣が登録する国家資格として、経営に関する知識の公的な証明になる
- 中小企業支援機関(よろず支援拠点、商工会議所、公的機関の専門家派遣制度など)の専門家として登録できるルートが整っている
- 経営革新計画や補助金申請の支援で、認定支援機関の一員として関わる場面がある
- 企業内で働きながら活用する「企業内診断士」という選択肢が広く存在する
資格の性格の違いは中小企業診断士は国家資格?位置づけの解説でも整理しています。
登録の更新要件も異なる
見落とされがちですが、資格維持の負担も違います。中小企業診断士は5年ごとの更新制で、更新には理論政策更新研修の受講(5年で5回以上)と実務従事(5年で30日以上)の要件があります。税理士は登録の更新制ではありませんが、税理士会が定める研修の受講に努めることが求められ、会費の負担も発生します。
試験制度の違いを比較する
受験を検討するうえで最も差が大きいのが試験制度です。表で整理します。
試験制度の比較表
| 項目 | 中小企業診断士 | 税理士 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 中小企業支援法 | 税理士法 |
| 独占業務 | なし(名称独占) | あり(税務代理・税務書類の作成・税務相談) |
| 受験資格 | 制限なし(誰でも受験可) | 会計学科目は制限なし。税法科目は学識・資格・職歴のいずれかの要件が必要 |
| 試験の構成 | 1次7科目(マークシート)+2次4事例(記述)+実務補習等 | 会計学2科目+税法3科目の計5科目 |
| 科目合格の有効期間 | 1次の科目合格は3年間有効 | 科目合格は生涯有効 |
| 試験実施 | 年1回(1次は8月、2次は10月) | 年1回(8月上旬に3日間) |
| 合格基準 | 1次は総点数60%以上かつ40%未満の科目なし | 各科目満点の60%が基準とされる |
| 合格までの期間 | 概ね1〜3年 | 概ね3〜10年 |
| 資格取得の追加要件 | 実務補習15日間または実務従事15日以上 | 2年以上の実務経験 |
税理士試験は「科目合格の積み上げ」型
税理士試験の大きな特徴は、一度合格した科目が生涯有効である点です。会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)の2科目は必須で、税法に属する科目から3科目(所得税法または法人税法のいずれかは必須)を選択します。年に1科目ずつでも積み上げていける設計で、働きながら長期戦で挑む人が多い試験です。
なお、令和5年度から受験資格が緩和され、簿記論・財務諸表論は受験資格の制限なく誰でも受験できるようになりました。税法科目については、学識(大学等で社会科学に属する科目を履修)・資格(日商簿記1級合格など)・職歴(会計や税務の実務経験2年以上など)のいずれかの要件を満たす必要があります。
診断士試験は「一気に仕上げる」型
対する中小企業診断士は、1次7科目を1〜2年で仕上げ、2次の記述式に進む構造です。1次の科目合格は翌年度と翌々年度までの3年間有効で、税理士のように生涯持ち越すことはできません。制限時間のある短期決戦型といえます。
- 1次試験:経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の7科目
- 2次試験:事例Ⅰ〜Ⅳの記述式4事例
- 令和8年度から口述試験は廃止され、2次筆記試験の合格をもって2次試験合格となる
令和8年度は1次が8月1日・2日、2次が10月25日の予定です。詳細は令和8年度試験の日程・変更点にまとめています。
難易度と学習時間はどれくらい違うか
「どちらが難しいか」は最も検索される論点ですが、試験の構造が違うため単純比較はできません。数字と質の両面から整理します。
難易度・学習時間の比較表
| 項目 | 中小企業診断士 | 税理士 |
|---|---|---|
| 標準学習時間 | 概ね1,000〜1,200時間と言われる | 概ね3,000〜4,000時間と言われる |
| 1科目あたりの目安 | 100〜200時間程度 | 400〜600時間程度 |
| 直近の合格率 | 1次 令和7年度23.7%、2次 令和6年度18.7% | 各科目概ね10〜20%台で推移 |
| 最終合格までの実質難度 | ストレート合格は数%程度と言われる | 5科目到達者は年間で数百人規模 |
| 学習の性質 | 広く浅く、7分野を横断 | 狭く深く、条文レベルの精緻さ |
| 挫折しやすいポイント | 7科目を回す持久力、2次の記述 | 税法科目の暗記量と長期戦 |
総学習時間では税理士が診断士の3倍前後というのが一般的な見方です。ただし、税理士は科目合格を積み上げられるため、1年あたりの負荷は分散できます。一方で診断士は科目合格の有効期間が3年しかなく、短期に集中する必要があります。
難しさの「質」が違う
学習の中身に踏み込むと、求められる能力がかなり異なります。
- 中小企業診断士:範囲の広さが壁になる。経済学から情報システムまで守備範囲が広く、7科目を並行して回す管理能力が要る。2次試験は模範解答が公表されない記述式で、「考えて書く力」が問われる
- 税理士:深さと正確性が壁になる。税法科目は理論暗記(条文レベルの記述)と計算の両方が求められ、1科目でも中途半端では通らない。長期戦を続けるメンタルの持久力も要る
「広さの診断士、深さの税理士」と整理すると理解しやすいでしょう。どちらが上かではなく、負荷のかかり方が違うというのが実態に近い表現です。他資格との位置づけは中小企業診断士の難易度を他資格と比較でも扱っています。
合格までの年数のリアル
診断士は1〜3年で決着をつける人が多い試験です。税理士は科目合格制のため、社会人が働きながら1年1科目のペースで進めれば、5科目到達まで5年前後かかる計算になります。人生設計の中で確保できる年数という観点も、選択の判断材料になります。
仕事内容の違い(実務の現場から)
資格を取った後、実際に何をするのかを比べます。ここが最も判断に効く部分です。
業務内容の比較表
| 領域 | 税理士 | 中小企業診断士 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 税務申告、税務相談、記帳・決算支援 | 経営診断、事業計画策定、業務改善の助言 |
| 顧客との関係 | 月次顧問など継続的 | プロジェクト・スポット型が中心 |
| 相談される内容 | 税額、節税、決算、資金繰りの数字 | 売上を伸ばす方法、組織の問題、事業承継の方向性 |
| 補助金・制度支援 | 認定支援機関として関与 | 計画策定支援・申請支援で関与 |
| 事業承継 | 株価評価、相続税・贈与税の設計 | 承継後の経営体制、後継者育成 |
| 金融機関との接点 | 決算書・試算表の提出 | 経営改善計画・事業性評価の支援 |
| 企業内での活かし方 | 経理・財務部門、税務部門 | 経営企画、営業企画、金融機関の法人部門など |
税理士の仕事は「継続して伴走する」形
税理士の実務は、月次の巡回監査や記帳指導、年に一度の決算・申告というサイクルで回ります。顧問契約により、中小企業の社長にとって最も身近な相談相手になりやすい立場です。実際、経営の悩みは税務の話から始まることが多く、税理士が経営相談を受ける場面は珍しくありません。
診断士の仕事は「課題を切り出して解決する」形
診断士の実務は、経営課題の分析から始まります。現状分析、課題の特定、改善策の提案、実行支援という流れで、多くはプロジェクト単位です。公的支援機関の専門家派遣、補助金申請の計画策定支援、研修講師、執筆といった仕事も含まれます。
- 公的機関経由:よろず支援拠点や商工会議所の相談員、専門家派遣
- 民間直請け:経営改善計画の策定、事業計画の伴走支援
- 周辺業務:企業研修、セミナー登壇、記事や書籍の執筆
企業内診断士として社内で活用する人が相当数いるのも診断士の特徴です。税理士が「独立して事務所を構える」イメージが強いのに対し、診断士は所属先を変えずに知識を活かす道が広く開かれています。企業内での活かし方は企業内診断士の働き方にまとめています。
現場では役割が補完し合う
実務の現場では、両者が対立することはほとんどありません。税理士が把握している数字の裏側(なぜこの利益率なのか、なぜ資金繰りが厳しいのか)に、診断士が経営面から切り込むという協働が自然に起こります。税理士は「過去と現在の数字」に強く、診断士は「未来の打ち手」に強いという補完関係です。
年収・収入構造の違い
収入は関心の高いテーマですが、個人差が大きく、平均値だけを見ても実態はつかめません。構造の違いから理解しましょう。
収入の目安と幅
公的な職業情報や各種調査では、税理士(公認会計士と合算された統計が多い)の平均年収は概ね700万円台〜900万円台と示されることが多いとされます。ただしこれは勤務税理士と独立開業者が混ざった数字で、開業税理士の収入は顧問先数によって大きく変動します。
中小企業診断士については、中小企業診断協会が実施しているアンケート調査で、コンサルティング業務を主たる収入源とする診断士の年間売上が示されています。業務日数が多い層ほど収入が高い傾向があり、幅は数百万円から1,000万円超まで広く分布します。企業内診断士の場合は勤務先の給与体系が基本となり、資格手当が付く企業もあります。年収の実態は中小企業診断士の年収のリアルで詳しく扱っています。
収入構造の比較表
| 観点 | 税理士 | 中小企業診断士 |
|---|---|---|
| 収入の型 | 顧問料によるストック型 | 案件ごとのフロー型が中心 |
| 収入の安定性 | 顧問契約が積み上がれば安定しやすい | 案件獲得力に依存しやすい |
| 独立時の立ち上がり | 顧問先ゼロからの営業が必要 | 公的機関の登録から始められる場合がある |
| 企業内での評価 | 経理・税務部門で直接的に評価されやすい | 経営企画・企画部門で評価されやすい |
| 副業との相性 | 税務業務は本業との兼務に制約が出やすい | 執筆・研修・スポット相談など副業と相性がよい |
| 収入の上限 | 事務所規模の拡大で伸ばせる | 単価と稼働の設計次第で伸ばせる |
独立を考えるなら押さえたい違い
独立を視野に入れる場合、**税理士は「顧問先を何件持てるか」、診断士は「案件をどう継続化するか」**という異なる課題に向き合います。税理士は一度契約すれば継続しやすい反面、新規開拓の競争は厳しくなっています。診断士は公的支援機関の登録から実績を積み、そこから民間案件につなげる流れを作る人が多い構図です。
いずれにせよ、資格があれば自動的に収入が付いてくるわけではない点は共通しています。営業力、専門分野の深さ、人脈の3点が収入を左右します。副業から始める考え方は中小企業診断士の副業ロードマップも参考にしてください。
税理士資格と中小企業診断士試験の科目免除
制度面で両資格が交差するのが科目免除です。誤解が多い部分なので正確に整理します。
税理士は1次「財務・会計」が免除される
税理士(税理士となる資格を有する者を含む)は、中小企業診断士1次試験の「財務・会計」の科目免除を申請できます。また、税理士試験のうち会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)に合格した人も、同様に免除の対象となります。
免除対象は財務・会計の1科目のみで、他の6科目は通常どおり受験が必要です。免除申請には資格を証明する書類の添付が求められるため、出願時の準備を忘れないようにしましょう。制度全体は科目免除制度の完全ガイドで整理しています。
免除を使うべきかは戦略で判断する
免除できるからといって、必ずしも免除した方が有利とは限りません。1次試験は総点数の60%以上が合格基準であり、免除科目は分母からも除かれます。つまり、得意科目で稼ぐ戦略が使えなくなります。
- 免除する場合:学習負担が減る一方、得点源としての活用機会を失う
- 免除しない場合:学習負担は増えるが、税務・会計の素養を活かして高得点を狙える
税理士であれば財務・会計は得点源になりやすい科目です。あえて受験して総点数の底上げに使うという判断も十分に合理的でしょう。1次の得点設計は1次試験の合格基準と戦略を参考にしてください。
逆方向(診断士→税理士)の免除はない
一方、中小企業診断士の資格を持っていても、税理士試験の科目免除や受験資格の付与にはつながりません。税理士試験の免除は、修士の学位等による免除や、国税従事者としての一定の職歴による免除などに限られます。この非対称性は押さえておきましょう。
なお、税法科目の受験資格については「日商簿記1級合格」や「会計・税務の実務経験2年以上」といったルートがあります。診断士学習で得た知識は税理士試験の土台としては役立ちますが、制度上のショートカットにはなりません。
ダブルライセンスとして組み合わせる価値
両方を持つ選択肢についても触れておきます。相性は良い組み合わせです。
相性が良い理由
税理士が持つ「数字を作る力」と、診断士が持つ「数字を経営に翻訳する力」は補完的です。中小企業の現場では、この2つを1人が担えると提案の幅が大きく広がります。
- 決算書を作る立場から、そのまま経営改善提案につなげられる
- 事業承継で、税務(株価評価・相続対策)と経営(承継後の体制づくり)の両面を扱える
- 補助金・制度融資の支援で、計画策定から数値計画まで一気通貫で対応できる
- 顧問契約という継続接点を持ちながら、コンサルティング業務を上乗せできる
取得順序の考え方
一般に、税理士を先に取ってから診断士を追加する順序の方が現実的とされます。理由は3つです。
- 税理士があれば診断士1次の財務・会計を免除できる(学習負担が減る)
- 税理士は5科目という長期戦のため、途中で他資格に分散すると停滞しやすい
- 税理士業務という収入基盤を作ってから、コンサル領域を広げる方が事業設計しやすい
逆に、すでに診断士を持っている人が税理士を目指す場合は、5科目の長期戦をどう設計するかが課題になります。詳しくは税理士×診断士のダブルライセンス戦略で扱っています。
両方は必須ではない
念のため補足すると、両方を取ることが誰にとっても最適解というわけではありません。取得にかかる時間は合計で数千時間規模になります。目的が「経営支援の幅を広げること」なら、診断士1つでも十分に成立します。実務経験や専門分野の深掘りに時間を使う方が、資格を増やすより効果的な場合もあります。
現役診断士から見た、よくある誤解
比較検討の場面で耳にする誤解を、実務目線で整理します。
誤解1:診断士は独占業務がないから価値がない
独占業務の有無は業務範囲の話であって、価値の有無とは別です。診断士が担う経営支援は、そもそも独占業務になじまない領域です。評価されるのは資格の排他性ではなく、提供できる助言の質になります。公的支援機関のルートや企業内での活用など、資格が効く場面は具体的に存在します。「意味がない」と言われる背景は中小企業診断士は意味ないのかでも検証しています。
誤解2:税理士の方が上位資格である
学習時間の総量では税理士の方が大きいものの、上下関係があるわけではありません。専門領域が違うため、比較の軸そのものが噛み合いません。経営者から見れば、税務の相談は税理士、事業の方向性の相談は診断士という使い分けが自然です。
誤解3:診断士を取れば税務相談もできる
これは制度上の誤りです。税務相談は税理士の独占業務であり、診断士が報酬を得て具体的な税務相談に応じることはできません。経営改善の文脈で数字の話をする際も、税務判断が絡む部分は税理士につなぐのが原則です。実務で気をつけたい線引きの一つです。
誤解4:どちらか一方を選べばキャリアが決まる
資格はキャリアの入口であって、ゴールではありません。どちらを取っても、その後にどの領域で経験を積むかで到達点は変わります。資格選びに悩む時間が長引くくらいなら、着手できる方から始めるという判断も現実的です。
どちらを目指すべきか(タイプ別の判断軸)
ここまでの比較を踏まえ、状況別の考え方を整理します。
タイプ別の推奨
| あなたの状況・志向 | 向きやすい資格 | 理由 |
|---|---|---|
| 独占業務による安定した基盤がほしい | 税理士 | 顧問契約というストック収入を作りやすい |
| 経営全般を見る立場で仕事をしたい | 中小企業診断士 | 戦略・組織・マーケまで横断的に扱える |
| 会社を辞めずに知識を活かしたい | 中小企業診断士 | 企業内診断士としての活用ルートが広い |
| 会計・税務の実務経験がすでにある | 税理士 | 実務経験が受験資格・登録要件に直結する |
| 1〜3年で結果を出したい | 中小企業診断士 | 短期集中型の試験設計 |
| 5年以上かけてでも専門性を極めたい | 税理士 | 科目合格制で長期戦を設計しやすい |
| 経営企画・金融機関で評価を得たい | 中小企業診断士 | 事業性評価や経営企画の場面で活きる |
| 独立して個人事業として成立させたい | 税理士(診断士は組み合わせ) | 収入基盤の作りやすさで差が出る |
判断に迷ったときの3つの問い
次の3つに答えてみると、方向性が見えやすくなります。
- 確保できる学習期間はどれくらいか:3年以内に決着をつけたいなら診断士、5年以上を許容できるなら税理士も選択肢
- 今の仕事との接点はどこにあるか:経理・税務なら税理士、営業・企画・製造なら診断士の学習内容が業務と結びつきやすい
- 独立志向か、社内活用志向か:独立の基盤重視なら税理士、社内でのキャリア拡張なら診断士
診断士から始めやすい理由
受験資格の制限がなく、学習内容が業務全般と結びつきやすいという意味では、中小企業診断士は着手のハードルが低い資格です。7科目の学習は経営の共通言語を身につける過程そのものなので、合格の可否にかかわらず日々の仕事に還元しやすい面があります。学習の全体像は初心者のための学習ロードマップで整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 中小企業診断士と税理士はどちらが難しいですか?
総学習時間で見ると、税理士(概ね3,000〜4,000時間と言われる)が中小企業診断士(概ね1,000〜1,200時間と言われる)を上回ります。ただし税理士は科目合格が生涯有効で年単位に負荷を分散でき、診断士は科目合格の有効期間が3年で短期集中を求められます。総量の税理士、密度の診断士という違いがあり、単純な上下比較にはなじみません。
Q. 税理士を持っていると診断士試験は有利になりますか?
有利になります。1次試験の「財務・会計」の科目免除を申請でき、免除しない場合でも得点源にしやすい科目です。さらに2次試験の事例Ⅳ(財務・会計)でも会計知識が土台になります。ただし免除は分母からも除かれるため、得意科目で稼ぐ戦略を取るなら、あえて受験する選択も合理的です。
Q. 診断士を持っていると税理士試験の科目免除はありますか?
ありません。税理士試験の免除は、修士の学位等による免除や、国税従事者としての一定の職歴による免除などに限られており、中小企業診断士の資格は対象外です。受験資格の付与にもつながりません。免除の関係は税理士から診断士への一方向と理解しておきましょう。
Q. 年収はどちらが高いですか?
個人差が大きく、資格だけで決まるものではありません。公的な職業情報では税理士(公認会計士と合算された統計が多い)の平均が高めに示される傾向がありますが、これは勤務者と開業者が混在した数字です。診断士は企業内で働く人が多く、勤務先の給与体系に左右されます。収入を分けるのは資格の種類より、専門分野の深さと案件獲得力というのが実感に近いところです。
Q. 独立を考えるならどちらが有利ですか?
収入基盤の作りやすさでは税理士に分があります。顧問契約というストック収入の構造があるためです。診断士は案件ごとのフロー型が中心ですが、公的支援機関の専門家登録から実績を積むルートがあり、初期の立ち上げ方が異なるという理解が正確です。独立の時期や生活設計に応じて選ぶとよいでしょう。
Q. 両方取るなら、どちらを先にすべきですか?
一般には税理士を先に取る順序が現実的とされます。税理士があれば診断士1次の財務・会計を免除でき、また税理士試験は長期戦のため他資格と並行すると停滞しやすいためです。すでに診断士を持っている場合は、税理士5科目をどの年度に配分するかの計画づくりが最初の作業になります。
Q. 中小企業診断士でも税務のアドバイスはできますか?
具体的な税額計算や税法の適用に関する相談は税理士の独占業務にあたるため、診断士が報酬を得て応じることはできません。経営改善や事業計画の文脈で数字を扱うことはできますが、税務判断が絡む部分は税理士に引き継ぐのが原則です。この線引きは実務でも重要になります。
Q. 簿記の知識がなくても診断士試験に対応できますか?
対応できます。診断士1次の財務・会計は仕訳を切る力ではなく、財務諸表を読んで意思決定につなげる力を問う設計です。ただし会計の前提知識がまったくない場合、序盤でつまずきやすいのも事実です。不安があれば日商簿記3級を助走として挟む進め方が取り組みやすく、中小企業診断士と簿記はどっち?でも整理しています。
Q. 働きながらでも両立できますか?
どちらも社会人受験生が中心の資格です。診断士は1〜3年の短期集中型で、平日1〜2時間+休日にまとめて確保する形が一般的です。税理士は年1科目ペースなら平日の学習時間を抑えられますが、5年以上のスパンで生活設計に組み込む覚悟が要ります。時間の作り方は働きながら合格する時間管理術を参考にしてください。
まとめ
中小企業診断士と税理士の違いについて、要点を整理します。
- 税理士は独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を持つ税務の専門家、診断士は独占業務を持たない経営の専門家という位置づけの違いがある
- 学習時間は税理士が概ね3,000〜4,000時間、診断士が概ね1,000〜1,200時間とされ、税理士は科目合格が生涯有効、診断士は3年間有効という設計の差がある
- 仕事内容は、税理士が顧問契約による継続的な伴走、診断士がプロジェクト型の課題解決という違いがある
- 収入は税理士がストック型、診断士がフロー型+企業内活用という構造の差があり、どちらも資格だけで自動的に決まるものではない
- 税理士は診断士1次「財務・会計」の科目免除を申請できるが、その逆方向の免除はない
- 相性は良く、事業承継や経営改善の場面ではダブルライセンスが活きる。取得順序は税理士→診断士が現実的
「どちらが上か」という比較よりも、自分が数字の専門家として立つのか、経営全体を見る立場に立つのかという問いに答える方が、進路の判断は早く固まります。診断士エアポートでは、全7科目の映像授業と過去問演習を月額3,980円で提供しています。学習の進め方を検討したい方は、トップページのほか、税理士とのダブルライセンス戦略、科目免除制度の完全ガイド、中小企業診断士の年収のリアルもあわせてご覧ください。
出典・参考
- 一般社団法人 中小企業診断協会/日本中小企業診断士協会連合会 公式サイト
- 国税庁「税理士試験」公式ページ、日本税理士会連合会 公式サイト
- 経済産業省・中小企業庁 公表資料

