中小企業診断士の講座でも、厚生労働大臣の指定を受けた講座なら教育訓練給付金を使えます。診断士講座の多くは「一般教育訓練」に指定されており、修了後に受講費用の20%(上限10万円)がハローワークから支給されます。
ただし、雇用保険の加入期間が足りない、講座を修了できなかった、申請期限を過ぎた、といった理由で受け取れないケースもあります。この記事では、制度の仕組みから受給条件、支給額の計算、申請の流れと必要書類までを、厚生労働省・ハローワークの公表資料にもとづいて整理します。
中小企業診断士の講座で教育訓練給付金は使える?
結論から言うと、使えるかどうかは「講座ごと」に決まります。中小企業診断士の講座であれば何でも対象になるわけではなく、その講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうかが分かれ目です。
指定を受けた診断士講座は実際にある
厚生労働省が公表している「一般教育訓練 新規指定講座一覧」「再指定講座一覧」(いずれも令和8年10月1日付け)には、中小企業診断士の1次・2次対策講座が複数掲載されています。通学制の講座だけでなく、通信制やeラーニング(オンライン受講)の講座も含まれています。
指定の有効期間は3年間で、講座の指定は年2回(4月1日・10月1日)行われます。同じスクールでも、指定を受けているコースと受けていないコースが混在するのが普通です。
確認は「講座検索システム」で行う
対象かどうかは、厚生労働省の「教育訓練給付金 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で検索できます。講座名、指定講座番号、指定期間、給付の種類(一般・特定一般・専門実践)が確認できます。
スクールのパンフレットに「給付金対象」と書かれていても、コース名や開講月が少し違うだけで対象外ということがあります。申し込むコースの正式名称で検索して確かめましょう。
教育訓練給付金とは|3種類の違い
教育訓練給付金は、雇用保険の給付の一つです。働く人の能力開発やキャリア形成を支援する目的で、指定講座を修了した人に受講費用の一部が支給されます。
給付は3種類あり、給付率が異なる
対象となる教育訓練は、レベルなどに応じて3種類に分かれます。2024年(令和6年)10月の拡充以降の給付内容は次のとおりです。
| 種類 | 対象の考え方 | 給付率と上限 | 雇用保険の加入期間(初回) | 受講前の手続き |
|---|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練 | 20%(上限10万円) | 3年以上(初回は1年以上) | 不要(支給要件照会は任意) |
| 特定一般教育訓練 | 速やかな再就職・早期のキャリア形成に資する教育訓練 | 40%(上限20万円)、資格取得等+就職等で最大50%(上限25万円) | 3年以上(初回は1年以上) | 訓練前キャリアコンサルティング、受講開始日の2週間前までに受給資格確認 |
| 専門実践教育訓練 | 中長期的なキャリア形成に資する教育訓練 | 50%(年間上限40万円)、資格取得等+就職等で70%(年間上限56万円)、さらに賃金5%以上上昇で80%(年間上限64万円) | 3年以上(初回は2年以上) | 訓練前キャリアコンサルティング、受講開始日の2週間前までに受給資格確認 |
※特定一般の50%、専門実践の80%の追加給付は、令和6年10月1日以降に受講を開始した場合に限られます。
診断士講座の中心は「一般教育訓練」
上の表のうち、診断士の受験対策講座で目にすることが多いのは一般教育訓練です。令和8年10月1日付けで公表された特定一般・専門実践の新規指定講座一覧には、中小企業診断士を目標とする講座は見当たりませんでした。
一方、専門実践教育訓練の指定類型には「専門職大学院の専門職学位課程(MBA等)」が含まれています。大学院が実施する登録養成課程(2次試験の代わりに修了で登録できる課程)を検討する場合は、その課程がどの区分で指定されているかを個別に確認してください。養成課程の仕組みは中小企業診断士の養成課程とはで解説しています。
指定を受けている診断士講座の傾向
ここでは、厚生労働省の一般教育訓練の指定講座一覧(令和8年10月1日付けの新規・再指定分)から、中小企業診断士の講座の傾向を整理します。特定のスクールを比較する目的ではないため、施設名は伏せています。
一覧に載っている講座の例
| 講座の内容 | 実施方法 | 訓練期間 | 経費合計(入学料+受講料) | 給付額の目安(20%) |
|---|---|---|---|---|
| 1次・2次対策のセット講座 | 通学 | 9か月 | 250,000円 | 50,000円 |
| 1次・2次対策のセット講座 | 一部eラーニング | 11か月 | 250,000円 | 50,000円 |
| 2次対策講座 | 通信(Web) | 8か月 | 280,000円 | 56,000円 |
| 2次対策講座 | 一部eラーニング | 11か月 | 120,000円 | 24,000円 |
| 2次対策講座(アーカイブ受講) | eラーニング | 12か月 | 150,000円〜160,000円 | 30,000円〜32,000円 |
※厚生労働省「一般教育訓練の新規指定講座一覧」「一般教育訓練の再指定講座一覧」(令和8年10月1日付け)から編集部が抜粋。給付額は経費合計の20%で単純計算したもので、実際の支給額は割引や還付の有無で変わります。
表から読み取れること
- 1次・2次のセット講座だけでなく、2次対策だけの講座も指定を受けている
- オンライン(eラーニング)中心の講座も対象になり得る
- 経費合計が10万〜30万円程度の講座だと、給付額は2万〜6万円程度になる
一般教育訓練の上限10万円に届くのは、経費合計が50万円以上の場合です。診断士の受験講座では、上限に届かないケースのほうが多いと考えておくとよいでしょう。講座費用の全体像は中小企業診断士の取得にかかる費用の総額にまとめています。
教育訓練給付金を受給できる人の条件
一般教育訓練給付金を受け取れるのは、次のどちらかに当てはまり、指定講座を修了した人です。
在職中の人(雇用保険の被保険者)
受講開始日の時点で雇用保険の被保険者であり、「支給要件期間」が3年以上ある人が対象です。初めて教育訓練給付金を受ける人は、当面の間、1年以上で対象になります。
支給要件期間とは、受講開始日までに同じ事業主のもとで被保険者として雇用された期間のことです。転職している場合でも、前の会社を辞めてから次の会社で加入するまでの空白が1年以内なら、前後の期間を通算できます。
退職した人(被保険者であった人)
受講開始日の時点で被保険者でない人は、離職日の翌日から受講開始日までが1年以内で、支給要件期間が3年以上(初回は1年以上)あれば対象です。
妊娠、出産、育児、病気やけがで30日以上続けて受講できない期間がある場合は、ハローワークに申し出ると、この1年の期間を延長できます(延長は最大19年、合計で最大20年以内)。
2回目以降の利用には制限がある
- 受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受けたことがある場合は、支給されません
- 過去に給付金を受けた場合、そのときの受講開始日より前の加入期間は通算されません
- 複数の講座について同時に支給申請することはできません
たとえば、数年前に簿記やFPの講座で給付金を受けた人は、そのときの受講開始日以降の加入期間で判定されます。初回の「1年以上」の特例も使えなくなるため、3年以上が必要です。
対象にならない人
雇用保険の被保険者ではない人、たとえば自営業者やフリーランス、雇用保険に加入していない公務員は、この制度の対象外です。会社員でも、週の所定労働時間が短く雇用保険に入っていない場合は対象になりません。
支給額の計算方法と対象になる経費
支給額は「教育訓練経費×20%」
一般教育訓練給付金の支給額は、受講者が教育訓練実施者(スクール)に支払った教育訓練経費の20%です。20%に当たる額が10万円を超える場合は10万円、4,000円を超えない場合は支給されません。
つまり、教育訓練経費が2万円以下だと給付はゼロです。単科の短期講座やオプション講座だけで申請しようとすると、この下限に引っかかることがあります。
対象になる経費・ならない経費
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる | 入学料、受講料(最大1年分) |
| 条件付きで加算できる | 受講開始日前1年以内に受けたキャリアコンサルティングの費用(上限2万円) |
| 対象にならない | 検定試験の受験料、必須ではない補助教材費、補講費、行事参加費、交通費、パソコンなどの機器代、クレジット会社への手数料、申請時点で未払いの額 など |
中小企業診断士の場合、1次試験・2次試験の受験料は対象外です。受験料は講座費用とは別に、自分で負担する前提で予算を組みましょう。
割引や会社負担がある場合
- キャンペーン割引や再受講割引が適用された場合は、割引後の金額が教育訓練経費になります
- スクールや販売代理店から一定額の還付(現金だけでなく機器の無償提供なども含む)が予定されている場合は、その分を差し引いて申告します
- 勤務先から受講費用の補助が出る場合、入学料・受講料に充てられる分は教育訓練経費から差し引きます
会社の資格取得支援制度と給付金を併用する場合は、二重取りにならないよう、会社負担分を除いた自己負担額で計算する点に注意してください。
手続きの流れ|申込前から支給まで
一般教育訓練は、特定一般・専門実践と違い、受講前の受給資格確認は必須ではありません。修了後の申請だけで受け取れます。とはいえ、受講前に確認しておくと安心です。
ステップ1:講座が指定講座か確認する
講座検索システムで、申し込むコースの正式名称と指定期間を確認します。受講開始日が指定期間内に入っていることが条件です。
ステップ2:必要なら「支給要件照会」をする
自分の加入期間が足りているか不安な場合は、ハローワークで支給要件照会ができます。「教育訓練給付金支給要件照会票」に記入し、本人確認書類を添えて、住所を管轄するハローワークに来所・郵送・電子申請のいずれかで提出します。電話での照会は受け付けていません。
ステップ3:受講を申し込み、受講開始日を把握する
受講開始日は給付の可否を決める重要な日付です。通学制は講座の所定の開講日、通信制は教材などの発送日で、いずれもスクールが証明する日です。自分が実際に最初に受講した日とは限りません。
ステップ4:修了要件を満たして修了する
給付の対象は「修了」した人だけです。スクールが定める修了認定基準(出席率、課題の提出、確認テストなど)を満たし、修了証明書の発行を受けます。
ステップ5:修了日の翌日から1か月以内に申請する
修了日の翌日から起算して1か月以内に、原則として住所を管轄するハローワークへ支給申請します。方法は本人または代理人の来所、電子申請、郵送のいずれかで、郵送の場合も1か月以内の消印が必要です。
支給申請に必要な書類
一般教育訓練給付金の支給申請では、次の書類を提出します。修了証明書や経費等確認書はスクールが発行するため、修了が近づいたら発行のタイミングを確認しておきましょう。
| 書類 | 入手先・補足 |
|---|---|
| 教育訓練給付金支給申請書 | ハローワーク(スクールから渡される場合もある) |
| 教育訓練修了証明書 | スクールが修了認定にもとづいて発行 |
| 教育訓練経費の領収書 | スクールが発行。クレジット払いはクレジット契約証明書など |
| 教育訓練経費等確認書 | スクールが発行 |
| 本人・住居所確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など |
| 個人番号確認書類 | マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票の写し |
| 振込先がわかるもの | 通帳やキャッシュカード(公金受取口座を指定する場合などは不要) |
| 返還金明細書 | 領収書発行後に経費の一部が還付された場合のみ |
| 委任状 | 代理人が手続きする場合のみ |
キャリアコンサルティング費用を経費に含める場合は、その領収書に加えて「キャリアコンサルティングの記録」と「キャリアコンサルティング実施証明書」も必要です。
給付金を受け損ねるよくある失敗
現役診断士の立場から見ると、給付金をもらい損ねる原因は制度の難しさよりも「確認不足」と「期限切れ」がほとんどです。よくあるパターンを挙げます。
申し込んだコースが指定外だった
同じスクールの診断士講座でも、指定を受けているのは特定のコースだけということがあります。申込直前にコースを変更した、開講月の違うコースを選んだ、といった理由で対象外になる例は珍しくありません。
修了要件を満たせなかった
診断士の学習は1年近い長丁場になりがちです。仕事が忙しくなって途中で受講が止まり、課題の提出や確認テストが修了基準に届かず、修了証明書が出ないケースがあります。試験の合否ではなく講座の修了が条件である点を覚えておきましょう。
申請期限の1か月を過ぎた
修了日は試験日と一致するとは限りません。2次試験の直前期は学習に集中したい時期でもあり、修了後の申請を後回しにして期限を過ぎてしまうことがあります。修了日をあらかじめスクールに確認し、カレンダーに入れておくと防げます。
退職のタイミングで1年を超えた
会社を辞めて学習に専念する場合、離職日の翌日から受講開始日までが1年を超えると対象外になります。退職後しばらく休んでから講座を申し込む予定の人は、受講開始日を逆算しておきましょう。
過去に別の講座で給付金を受けていた
数年前に別の資格講座で給付金を受けた記憶があいまいな人は、支給要件照会で確認しておくと安心です。前回の受講開始日から3年以上の加入期間がないと、新たな受給資格は得られません。
給付対象講座を選ぶときの考え方
給付金は講座費用の負担を軽くしてくれますが、給付金の有無だけで講座を決めるのはおすすめしません。
実質負担額で比べる
講座の比較は、表示価格ではなく「受講料−給付額」の実質負担額で行うと公平です。たとえば25万円の指定講座なら実質20万円、指定外の講座はそのままの金額で比較します。ここに受験料や教材費などの別途費用を加えた総額で考えると、判断を誤りにくくなります。
自分の学習スタイルに合うかを優先する
給付額は数万円程度にとどまることが多く、合わない講座を選んで1年を棒に振るほうが損失は大きくなります。通学か通信か、1次から学ぶのか2次対策だけか、質問や添削のサポートが必要か、といった点を先に決めましょう。講座選びの観点は中小企業診断士の講座の選び方で整理しています。
指定講座以外の学習手段と組み合わせる
月額制のオンライン学習サービスや市販の問題集など、指定を受けていない学習手段は給付の対象になりません。指定講座を軸にしつつ、苦手科目の補強や過去問演習に別の教材を組み合わせる受験生も多くいます。費用を抑える工夫は中小企業診断士の費用を抑える方法も参考にしてください。
よくある質問
Q. 教育訓練給付金は試験に合格しないともらえませんか?
一般教育訓練給付金は、試験の合否ではなく講座の修了が支給の条件です。スクールの修了認定基準を満たして修了証明書が発行されれば、不合格でも申請できます。なお、特定一般・専門実践の追加給付(50%・70%・80%)は資格取得等が要件になります。
Q. 1次試験の講座と2次試験の講座で別々に申請できますか?
同時に複数の講座について支給申請することはできません。また、受講開始日の前日から3年以内に給付金を受けている場合は支給されないため、1次講座で受給した後、すぐに2次講座でもう一度受給することは難しいと考えてください。1次・2次をまとめたセット講座で1回申請するのが現実的です。
Q. オンライン(eラーニング)の講座でも対象になりますか?
対象になり得ます。厚生労働省の指定講座一覧には、eラーニングや通信制の中小企業診断士講座も掲載されています。ただし、すべてのオンライン講座が指定を受けているわけではないため、講座検索システムで個別に確認してください。
Q. 給付金はいつ振り込まれますか?
修了後にハローワークへ支給申請し、審査を経て指定口座に振り込まれます。受講料はいったん全額を自分で支払う必要があり、給付金は後から戻ってくる仕組みです。具体的な振込時期は申請先のハローワークで確認してください。
Q. 会社が受講料を一部負担してくれる場合も使えますか?
使えますが、会社から受け取った補助のうち入学料・受講料に充てられる分は、教育訓練経費から差し引いて申請します。給付額は自己負担分をもとに計算されるため、会社負担が大きいと給付額は小さくなります。
Q. 退職して勉強に専念する予定です。いつまでに受講を始めればいいですか?
離職日の翌日から受講開始日までが1年以内であることが条件です。妊娠・出産・育児・病気などで30日以上受講できない期間がある場合は、ハローワークへの申し出で期間を延長できます。失業給付(基本手当)を受けている人は、失業の認定日が講座と重なっても原則として変更されない点にも注意してください。
Q. 自分が対象かどうか、事前に確認する方法はありますか?
ハローワークで「支給要件照会」ができます。受講開始(予定)日の時点での受給資格の有無と、希望する講座が指定講座かどうかを確認できます。照会票に記入し、本人確認書類を添えて来所・郵送・電子申請で提出します。
Q. 給付金の対象講座のほうが合格しやすいのですか?
指定の有無は給付制度の要件を満たしているかどうかの区別で、講座の内容や合格のしやすさを国が保証するものではありません。教材の質、サポート体制、学習スタイルとの相性など、ほかの観点も合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
- 中小企業診断士の講座は、厚生労働大臣の指定講座なら教育訓練給付金の対象。多くは一般教育訓練で、受講費用の20%(上限10万円)が支給される
- 受給には、雇用保険の加入期間3年以上(初回は1年以上)が必要。退職者は離職翌日から受講開始まで1年以内が条件
- 対象経費は入学料と受講料(最大1年分)で、1次・2次試験の受験料は含まれない
- 支給の条件は試験の合格ではなく講座の修了。申請は修了日の翌日から1か月以内にハローワークへ
- 給付額は数万円程度になることが多いため、実質負担額で比べつつ、学習スタイルとの相性を優先して講座を選ぶ
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出典・参考
- 厚生労働省「教育訓練給付金」
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「一般教育訓練の『教育訓練給付金』のご案内」
- 厚生労働省「一般教育訓練の新規指定講座一覧」「一般教育訓練の再指定講座一覧」(令和8年10月1日付け)
- 厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました」「特定一般教育訓練の指定講座を公表しました」(令和8年10月1日付け)

