中小企業診断士の登録の有効期間は5年間です。更新するには、期間内に理論政策更新研修などを合計5回以上、診断助言などの実務を合計30日以上こなし、満了日までに申請します。更新申請に手数料はかかりません。
この記事では、中小企業庁の「中小企業診断士の各種申請・届出の手引き及びQ&A」と、日本中小企業診断士協会連合会(以下、協会)の理論政策更新研修の案内をもとに、更新要件の中身・費用・手続き・更新できなかったときの扱いを整理しました。
中小企業診断士の更新制度とは
中小企業診断士の登録には有効期間があり、更新しないと登録が消除(抹消)されます。
登録の有効期間は5年間
手引きでは、診断士の登録の有効期間は登録の日から起算して5年間と定められています。引き続き登録を希望する人は、登録証に記載された有効期間の満了日までに更新登録申請をします。
更新登録がされると、新しい有効期間は従前の有効期限から続けて始まります。
更新制がある理由
中小企業診断士は、中小企業支援法にもとづいて経済産業大臣が登録する国家資格です。中小企業を取り巻く政策や経営環境は毎年変わるため、登録後も知識を補い、実際に企業の支援に関わり続けることが求められています。現役診断士の目線で言えば、更新を続けていること自体が、一定の活動実績の裏付けにもなります。
更新要件の全体像|研修5回と実務30日
更新には、専門知識補充要件と実務要件の2つを両方満たす必要があります。どちらか一方だけでは更新できません。
2つの要件の一覧
| 要件 | 必要な実績 | 対象になる活動 |
|---|---|---|
| 専門知識補充要件 | 合計5回以上 | ①理論政策更新研修の修了 ②論文審査の合格 ③理論政策更新研修の講師(4時間以上) |
| 実務要件 | 合計30日以上 | ①診断助言業務等への従事 ②実務補習の受講 ③実習・実務補習の指導 |
それぞれの要件の中では、活動を組み合わせて数えられます。たとえば研修4回と論文審査1回で5回、診断助言25日と実務補習の指導5日で30日、という形です。
実績を数える期間
要件を満たす期間は、登録の有効期間の開始日から更新の申請日までです。前回の有効期間に積んだ実績を次の期間に持ち越すことはできません。
5年で研修5回・実務30日なので、平均すると年1回の研修と年6日の実務です。最後の1〜2年でまとめて取り戻そうとすると、日程や実務の機会が合わずに苦労します。
専門知識補充要件|理論政策更新研修と論文審査
専門知識補充要件は、新しい知識を補うための要件です。もっとも一般的なのは、理論政策更新研修を年1回ずつ受講する方法です。
理論政策更新研修とは
理論政策更新研修は、中小企業基盤整備機構や、国に登録された理論政策更新研修機関が実施する4時間の研修です。協会も登録研修機関の一つで、各地の都道府県協会を通じて開催しています。
協会の令和8年度の案内では、研修のテーマは次の構成です。
- テーマ1:「新しい中小企業政策について」(すべての研修で採用)
- テーマ2:地区ごとに、生産性向上支援、事業承継支援、伴走支援、新事業展開支援などから選んで採用
受講時間は経済産業省令で4時間以上と決まっています。協会の案内では、遅刻や早退で4時間に届かない場合は理由を問わず修了と認められないとされています。
リモート受講もできる
協会の研修には、Web会議システムを使ったリモート研修もあります。案内では、カメラとマイク付きのパソコン(スマートフォンは不可)と安定した通信環境が必要で、受講中はカメラを常にオンにすることが求められています。
カメラをオフにしたり席を外したりして4時間に満たなかった場合も、修了とは認められません。自宅から受講できる一方、集合研修と同じく4時間しっかり参加する前提です。
論文審査で1回分を満たす方法
協会は論文審査も実施しています。論文審査に合格すると、理論政策更新研修の修了1回分として数えられます。令和8年度は年2回の受付で、テーマは必修テーマ「新しい中小企業政策の動向」と、選択テーマ「最近の診断に関する理論及びその応用」の2本立てです。
研修の日程が合わない人の選択肢になりますが、不合格だと回数に数えられないため、期限が迫っている時期の頼みの綱にするのは避けたほうが安全です。
実務要件|30日の数え方と対象になる業務
実務要件は、5年間で合計30日以上、中小企業の支援に実際に関わることです。新規登録のときの実務要件(15日以上)と似ていますが、更新では指導する側の実績も数えられる点が違います。
実務要件の対象と証明書
| 対象になる活動 | 証明書(様式) | 証明する人 |
|---|---|---|
| 公的機関から派遣された診断助言、金融機関・大企業などに所属して取引先に行う診断助言 | 診断助言業務実績証明書(様式第18) | 実施機関の代表者 |
| 診断士が事業として行う診断助言、勤務先の中小企業で経営者の指示の下に行う自社の診断助言 | 診断助言業務実績証明書(様式第19) | 診断助言先の代表者 |
| 国・自治体・支援団体などが行う窓口相談業務 | 窓口相談業務従事証明書(様式第20) | 実施機関の代表者 |
| 実務補習の受講 | 実務補習修了証書(様式第13) | 実施機関が発行 |
| 実務補習の指導 | 実務補習指導証明書(様式第14) | 実施機関が発行 |
| 養成課程・登録養成課程の実習指導 | 実習指導証明書(様式第21) | 実施機関が発行 |
診断助言は、有償か無償かを問いません。経営者などに直接、経営の診断や助言を行った日と、それに付随する業務を行った日が対象です。
日数の数え方のルール
手引きのQ&Aには、日数を数えるうえで押さえておきたいルールがいくつかあります。
- 1日に2社を指導しても1日として数える(証明書はどちらか1社分が有効)
- 窓口相談業務は、1日5時間以上の従事で1日と数える
- 証明書には、有効期間内で最初に診断助言した日と最後の日、合計日数を書き、全ての実施日を余白などに記入する
- 証明書の証明日は、終了日以降の日付にする
対象にならない業務・相手先
実務でよくある誤解は、「診断士として関わった仕事なら何でも数えられる」というものです。手引きでは、診断助言と関係のない調査・分析、資料作成、申請書作成などの業務や、セミナー講師、執筆活動は対象外とされています。
相手先にも制限があります。中小企業支援法の中小企業者に当たる会社・個人事業主のほか、一定の要件を満たす医療法人・社会福祉法人・NPO法人は対象になります。一方、一般社団法人・公益財団法人・商工会議所・学校法人・独立行政法人などは、診断助言先として実務実績の対象になりません。
また、社長自身が診断士である場合に、社長としての自社の経営判断を実務実績にすることはできません。証明書には原則として受診企業名の記載が必要で、匿名にはできない点も覚えておきましょう。
中小企業診断士の更新にかかる費用
更新の費用は、申請そのものよりも要件を満たすための費用が中心です。
費用の内訳
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 更新登録申請の手数料 | かからない | 登録免許税もかからない |
| 理論政策更新研修(協会実施分) | 1回6,300円(税込) | 5回受講で31,500円 |
| 論文審査(協会実施分) | 1回6,300円(税込) | 合格で研修1回分 |
| 実務要件 | 活動の内容による | 仕事として受ける診断助言では、むしろ報酬を受け取る側 |
| 郵送費 | マイナポータル申請なら原則不要 | 紙申請では簡易書留などの郵送費 |
研修の受講料は、協会の令和8年度の案内にある金額です。中小企業基盤整備機構やほかの登録研修機関が行う研修の受講料は、実施機関ごとに確認してください。
5年間で見た最低限の費用
協会の研修だけで5回をそろえる場合、研修費は5年間で31,500円です。実務要件を本業や受託業務の中で満たせる人なら、更新にかかる費用はほぼ研修費だけで済みます。
一方、企業内診断士で実務の機会が少ない人は、実務補習の指導や有償の実務従事プログラムなどを使って日数を確保することもあります。この場合の費用は、選ぶ方法によって大きく変わります。
研修のキャンセルに注意
協会の案内では、受講料を納めたあとのキャンセルは、原則として返金されないとされています。リモート研修でも、カメラオフや離席で4時間に満たなければ修了と認められず、受講料も返金されません。
更新登録申請の手続き|マイナポータルが原則に
2026年6月から、中小企業診断士の各種申請はマイナポータルからの手続きが原則になりました。中小企業庁のリーフレットでは、更新登録申請も対象の手続きに含まれています。
申請の受付期間
手引きでは、更新登録申請は有効期間の満了日の約1か月前から満了日まで受け付けるとされています。申請内容に不備がある場合は、その対応も満了日までに済ませる必要があるため、受付開始後は早めに申請しましょう。
また、更新対象者が多い3月31日が満了日の人には、処理の遅れを防ぐために別途早期申請を求めることがあり、その都度中小企業庁のウェブサイトに掲載すると手引きに書かれています。3月末満了の人は、年明けから中小企業庁のお知らせを確認しておくと安心です。
必要書類
手引き(紙申請時代の版)で定められている更新登録申請の書類は次のとおりです。
- 中小企業診断士登録申請書(様式第1)
- 専門知識補充要件の証明書等(5回分以上)
- 実務要件の実績証明書(30日分以上)
- 中小企業診断士登録証(紛失した場合は再交付申請書)
マイナポータルでの申請では、申請書は画面入力になり、紙で受け取った証明書はスキャンなどでPDF化して添付します。同じ種類の書類が複数枚ある場合は、1つのPDFにまとめるよう案内されています。協会も、理論政策更新研修の修了証明書の電子化(PDF化)を進めていて、電子化までは紙の証明書を各自でスキャンするよう求めています。
既に登録している人は「初期設定申請」が先
すでに登録している診断士が初めてマイナポータルを使うときは、既存の資格情報とマイナンバーを結びつける初期設定申請が必要です。リーフレットでは、初期設定の完了までに日数がかかる場合があり、有効期限内の手続きが必要とされています。
有効期限が2027年以降の人には、在住地域ごとに推奨スケジュールが示される予定です。更新の時期が来てから慌てないよう、初期設定は先に済ませておきましょう。
登録証はデジタル資格者証へ
マイナポータルへの移行に伴い、登録証はマイナポータル上で確認できるデジタル資格者証に移行します。既存の紙の登録証は、記載の有効期限までは有効です。
なお手引きでは、更新後の登録証が届くまでの間も、規則第9条により従前の登録は有効期間の終了後も効力を持つとされています。満了日までに申請していれば、審査中に資格が途切れる心配はありません。
更新を忘れた・要件が足りないときの扱い
更新の申請をしないまま満了日を過ぎると、登録は消除されます。消除された人の氏名・登録番号・消除年月日は公示されます。
消除から1年以内なら再登録できる場合がある
更新の申請を忘れただけの人は、消除された日から1年を超えないうちであれば、再登録を申請できます。再登録後の有効期間は、消除前の有効期間に続く5年間です。
ただし、再登録の要件は更新の要件と同じで、消除前の有効期間の満了日までの5年間に研修5回と実務30日を満たしている必要があります。手引きでは、要件を満たしていなかった人が事後的に満たしても再登録はできないと明記されています。
状況別の対応
| 状況 | できること | ポイント |
|---|---|---|
| 要件は満たしたが申請を忘れた | 消除から1年以内なら再登録申請 | 1年を過ぎると再登録できない |
| 満了日までに要件が足りない見込み | 満了日までに休止申請 | 再開時に研修5回・実務15日が必要 |
| 満了日を過ぎ、要件も不足していた | 再登録はできない | 事後的に要件を満たしても認められない |
一番避けたいのは3つ目のケースです。満了日の時点で要件が足りないと分かったら、満了日を過ぎる前に休止申請を検討してください。
休止制度と業務再開|海外赴任や育児で要件を満たせないとき
海外赴任や家庭の事情で、5年間に要件を満たせないこともあります。手引きのQ&Aでは、海外赴任に対する猶予措置はないとしたうえで、経営診断業務の休止申請を活用するよう案内しています。
休止申請のルール
- 申請は、5年間の有効期間の満了日までに行う
- 休止できる期間は、申請日から最長15年間
- 休止申請をした翌月1日から満了日までの「残りの有効期間」が、再開後の有効期間になる
- 再開の申請をしないまま15年が過ぎると、登録は消除される
マイナポータルでは海外から手続きができないため、海外赴任が決まった人は出国前に休止申請を済ませておきましょう。
業務再開の要件
休止から戻るときは、業務再開の申請をします。再開の要件は、申請日前3年以内に次の両方を満たすことです。
- 理論政策更新研修などを5回以上修了
- 実務または実務補習などに15日以上従事・受講
再開後の有効期間は一律5年ではなく、休止したときの残りの期間です。再開後に初めて迎える更新では、実務要件15日以上だけが求められ、専門知識補充要件はありません。休止中は理論政策更新研修も受講できるため、再開を見据えて少しずつ研修を受けておく方法もあります。
なお、マイナポータル移行に伴い、休止申請の際に紙で届いていた「業務再開の申請可能証書」は廃止されました。再開申請の期限や再開後の残りの有効期間は、マイナポータルの保有資格照会画面で確認します。
5年間で更新要件を満たす計画の立て方
更新でつまずく人の多くは、要件の難しさよりも管理不足が原因です。とくに本業が別にある企業内診断士は、計画的に実績を積み上げることが欠かせません。
年単位のモデルスケジュール
- 1年目:理論政策更新研修を1回受講。実務の機会を探し始め、証明書の様式を手元に用意しておく
- 2〜3年目:研修を各1回。実務を年6日以上のペースで積み、案件が終わるたびに証明書を受け取る
- 4年目:研修5回目を予定に入れる。実務日数を集計し、30日に届かない場合は残り1年で確保する方法を決める
- 5年目:満了日の約1か月前から申請。3月末満了の人は早期申請の案内に注意する
4年目までに研修5回をそろえておくと、5年目に予定外の欠席があっても対応できます。
証明書は「その都度」もらう
実務の実績証明書は、5年分をまとめて最後にもらおうとすると、相手先の担当者が替わっていたり、会社が廃業していたりして、証明を受けられないことがあります。案件ごと、少なくとも年度ごとに証明書を受け取り、PDFで保管しておくと安心です。
企業内診断士の実務の積み方や、新規登録時の実務従事の考え方は実務従事の記事で、企業内診断士の働き方そのものは企業内診断士の記事で詳しく扱っています。
よくある質問
Q. 中小企業診断士の更新に費用はいくらかかりますか?
更新登録申請そのものに手数料や登録免許税はかかりません。主な費用は理論政策更新研修の受講料で、協会の研修は1回6,300円(税込)、5回で31,500円です。実務要件を本業や受託業務で満たせれば、更新の費用はほぼ研修費だけで済みます。
Q. 理論政策更新研修は1年に1回しか受けられませんか?
同じ年に複数回受講しても回数として数えられます。手引きでは、効率的な知識補充になるよう研修内容を確認したうえで受講するよう勧めています。ただし計画的に年1回ずつ受けておくほうが、最終年に日程が合わないリスクを避けられます。
Q. 企業内診断士でも実務30日を満たせますか?
対象になる業務を知っておけば、方法はいくつもあります。勤務先が中小企業なら経営者の指示の下で行う自社の診断助言、金融機関などに所属していれば取引先への診断助言が対象になります。それ以外にも、公的機関の窓口相談、実務補習の指導、休日を使った診断助言など、複数の方法を組み合わせるのが一般的です。
Q. 更新の申請はいつからできますか?
有効期間の満了日の約1か月前から満了日まで受け付けています。不備の修正も満了日までに終える必要があるため、受付が始まったら早めに申請しましょう。3月31日が満了日の人には、別途早期申請が求められることがあります。
Q. 更新を忘れて満了日を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
消除された日から1年以内であれば、再登録を申請できます。ただし、消除前の有効期間内に研修5回と実務30日を満たしていたことが条件で、後から要件を満たしても再登録はできません。早めに中小企業庁の担当窓口に相談しましょう。
Q. 海外赴任中は更新要件が猶予されますか?
猶予措置はありません。国内で診断助言ができない期間が続く場合は、有効期間の満了日までに経営診断業務の休止を申請します。休止は最長15年まで可能で、手続きは出国前に済ませておきます。
Q. 新規登録で使った実務補習の日数は、更新の実務要件にも数えられますか?
更新の実務要件は、登録の有効期間の開始日から申請日までの実績が対象です。登録前に受けた実務補習は登録の要件として使ったもので、その後の有効期間の実績には含まれません。登録後に改めて実務補習を受講したり、指導したりした日は、更新の実務要件として数えられます。
まとめ
- 中小企業診断士の登録の有効期間は5年間。更新には研修など5回以上と実務30日以上の両方が必要
- 理論政策更新研修は4時間で、協会の受講料は1回6,300円。論文審査の合格でも1回分になる
- 更新申請に手数料はかからず、申請は満了日の約1か月前から満了日まで。2026年6月からマイナポータルでの申請が原則
- 申請を忘れても、要件を満たしていれば消除から1年以内に再登録できる。要件が足りない見込みなら満了日までに休止申請を検討する
- 研修は年1回、実務は年6日のペースで積み、証明書はその都度受け取っておく
合格から登録までの流れは合格後の流れの記事で、初回登録の書類と手続きは登録手続きの記事で確認できます。
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出典・参考
- 中小企業庁 経営支援部 経営支援課「中小企業診断士の各種申請・届出の手引き及びQ&A」(令和6年11月)
- 中小企業庁「令和8年6月から中小企業診断士の各種申請がマイナポータルからできるようになります」(リーフレット)
- 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「理論政策更新研修・論文審査」「令和8年度理論政策更新研修の概要」「リモート理論政策更新研修について」「理論政策更新研修修了証明書の電子化(PDF化)のお知らせ」(令和8年5月22日)

