合格率の数字だけを比べると、中小企業診断士試験は2次のほうが低く、突破しにくい試験です。ただし1次と2次では難しさの種類がまったく違うため、どちらが壁になるかは受験生のタイプによって変わります。
この記事では、1次と2次の合格率を年度別に比較したうえで、それぞれの難しさの正体、5つの観点での比較、タイプ別にどちらが壁になりやすいか、そして両方に効く対策までを、現役診断士の監修で整理しました。合格率そのものの読み方は合格率の推移記事、全体設計は1次から2次までのロードマップ記事も併せてご覧ください。
結論:数字では2次、体感では1次が壁になる人も多い
まず結論から整理します。「どちらが難しいか」は、数字で見るか体感で見るかによって答えが変わります。
合格率だけを比べると2次のほうが低い
1次試験の合格率は年度によって20%台後半まで動くのに対し、2次筆記試験の合格率は例年おおむね18〜19%前後で安定しています。単純な数字の比較では、2次のほうが狭き門です。
ただし母集団の質が異なる
見落とされがちなのが、受験者層の違いです。2次を受けられるのは1次を突破した人だけで、すでに一定の選抜がかかっています。2次の18%台は「1次を通った人の中での18%台」であり、同じ18%でも重みが違います。
難しさの「種類」が違う
1次は範囲の広さと量の勝負、2次は正解が公表されない中での記述の勝負です。性質が異なるため、単純な優劣ではなく「自分にとってどちらが重いか」で捉えるほうが実践的です。
- 1次の難しさ:7科目分の知識を、期限までに一定水準まで積み上げる持久戦
- 2次の難しさ:明確な答えがない中で、採点者に伝わる記述を80分で作る技術戦
現役診断士の視点でいえば、学習前は「2次が難しそう」と身構える方が多い一方、実際に挫折が起きやすいのは1次の学習期間中です。難易度は合格率だけでは測れません。
数字で見る1次と2次の難易度比較
感覚論に寄らないよう、公式発表の合格率を確認しておきます。
1次試験の合格率推移
1次試験の合格率は年度によって振れ幅があり、単年度の数字だけで判断しないことが大切です。
| 年度 | 1次試験 合格率 |
|---|---|
| 令和5年度 | 29.6% |
| 令和6年度 | 27.5% |
| 令和7年度 | 23.7% |
直近3年では令和5年度が高く、令和7年度が低めです。1次は絶対評価(総点数の60%以上かつ40%未満の科目がないこと)で判定されるため、問題が難しい年は合格率が下がる傾向があります。
2次筆記試験の合格率推移
一方、2次筆記試験の合格率は年度をまたいでも大きく動きません。
| 年度 | 2次筆記試験 合格率 |
|---|---|
| 令和5年度 | 18.9% |
| 令和6年度 | 18.7% |
制度上は2次も「総点数の60%以上かつ40%未満の科目がないこと」が基準ですが、合格率が安定して推移していることから、実質的には上位者を選抜する相対評価に近い性質があるとされます。ここが1次との決定的な違いです。
全体で見た通過率
1次と2次を1年で連続して通過する、いわゆるストレート合格の割合は、単純計算では両合格率の積になります。年度によりますが、業界では概ね4〜6%程度とされ、決して簡単な数字ではありません。
- 1次が約25%、2次が約18%なら、単純計算で4.5%前後
- 多年度受験者が混在するため、この計算はあくまで目安
数字を見るときは、単年度の合格率よりも「自分の学習量が合格ラインに届いているか」を基準にしたほうが判断を誤りにくくなります。
1次試験の難しさの正体
1次は「知識を問うマークシート式」と説明されますが、その難しさは知識の細かさよりも構造にあります。
7科目という範囲の広さ
1次試験は7科目で構成され、経営・経済・会計・法務・IT・生産・政策と、扱う分野がまたがります。それぞれ独立した専門領域であり、1科目ずつなら難関ではなくても、7科目分をまとめて一定水準まで引き上げるには相応の時間が必要です。
- 経済学と財務・会計は理解型で、積み上げに時間がかかる
- 経営法務と経営情報システムは暗記型で、直前期の維持コストが高い
- 中小企業経営・政策は毎年内容が更新され、使い回しが効きにくい
足切り(40点未満)のリスク
1次は総点数60%以上でも、1科目でも40点未満があると不合格になります。得意科目で稼いで苦手科目を捨てる作戦が通用しないため、7科目すべてに最低限の手当てが要ります。この「取りこぼせない」構造が、1次の実質的な難易度を押し上げています。
学習期間が長く、離脱が起きやすい
1次合格までに必要な学習量は、業界では概ね800〜1,000時間が目安とされます。働きながらだと1年前後の継続が前提になり、途中でモチベーションが落ちる局面も訪れがちです。試験本番の難しさより、そこまで走り続ける難しさのほうが実際には大きい、という受験生は少なくありません。継続の工夫は挫折の理由と対策の記事で詳しく扱っています。
2次試験の難しさの正体
2次筆記試験は事例Ⅰ〜Ⅳの4事例からなり、与件文(企業の状況説明)を読んで設問に記述で答えます。難しさの質は1次とまったく異なります。
模範解答が公表されない
2次試験は、試験機関から模範解答が公表されません。出題の趣旨は公表されるものの、正解そのものが示されないため、自分の答案が何点なのかを自力で判定できません。「勉強したのに手応えがつかめない」という状態が続くのが、2次特有のストレスです。
80分で読む・考える・書くを完結させる
1事例80分の中で、2〜3ページの与件文を読み、設問を解釈し、100字前後の解答を4〜5問書き切る必要があります。知識があっても、時間内に文章化できなければ得点になりません。
- 読解に時間をかけすぎると書く時間が足りなくなる
- 設問要求を外すと、内容が正しくても加点されにくい
- 手書きのため、書き直しのコストが大きい
努力と得点が比例しにくい
1次は勉強量が過去問の正答率という形で見えますが、2次は演習量を増やしても点数が単調には伸びません。答案の方向性がずれていると、量を重ねても同じ失点を繰り返すためです。ここが2次の合格率が安定して低い理由の一つでもあります。2次対策の全体像は2次試験対策の基本記事で解説しています。
5つの観点で比較する1次と2次
難しさの違いを、観点ごとに整理します。
| 観点 | 1次試験 | 2次筆記試験 |
|---|---|---|
| 出題形式 | マークシート(択一) | 記述(100字前後が中心) |
| 問われる力 | 知識の量と正確さ | 知識の運用と表現力 |
| 評価の性質 | 絶対評価(60%以上) | 基準は同じだが実質は選抜的 |
| 対策の再現性 | 高い(過去問で伸びる) | 低め(型づくりが必要) |
| 主なリスク | 科目の足切り・学習量不足 | 設問要求のずれ・時間切れ |
対策の再現性という決定的な差
1次は「何をやれば点が伸びるか」がはっきりしています。過去問を回し、間違えた論点を潰せば、正答率は素直に上がります。対して2次は、努力の方向がずれていると成果が出にくく、方向を修正する仕組みが要ります。
得点の安定性
1次は本番でも実力どおりの点数が出やすい試験です。2次は与件文との相性や設問の解釈で振れ幅が生じ、同じ実力でも年度によって結果が変わることがあります。この不安定さも、2次が難しいと言われる理由です。
時間軸の違い
1次は長期戦、2次は短期決戦です。ストレート合格を狙う場合、2次対策に使えるのは1次終了後の約2.5か月しかありません。短期間で別種の力を仕上げる圧縮が、2次の体感難易度を上げています。
どちらが壁になるかはタイプで変わる
合格率は全体の傾向にすぎず、個人にとってどちらが難所になるかは経験や適性で変わります。
1次が壁になりやすい人
- 学習を長期間継続することに不安がある
- 暗記が苦手で、範囲の広さに圧倒されやすい
- 簿記や経済学に触れた経験がまったくない
- 平日にまとまった学習時間を確保しにくい
1次はやることが明確な分、必要な時間を投入できるかどうかが勝負になります。時間の確保が課題の方は働きながら合格する記事が参考になります。
2次が壁になりやすい人
- 知識のインプットは得意だが、文章を書くのが苦手
- 与えられた情報から要点を絞る作業に慣れていない
- 「正解が示されない」状況が精神的に苦しい
- 制限時間内に判断を下すのが不得手
タイプ別の自己診断の目安
| あなたの傾向 | 重くなりやすい試験 | 先に手を打つこと |
|---|---|---|
| 暗記が苦手・時間が取りにくい | 1次 | 学習順序と習慣の設計 |
| 数字・計算に苦手意識がある | 1次・事例Ⅳ | 簿記の基礎から着手 |
| 書く作業が苦手・要約が不得意 | 2次 | 早期に100字記述の練習 |
| 知識はあるが応用が苦手 | 2次 | 解答プロセスの型づくり |
| 実務で企業分析の経験がある | 1次 | 知識の網羅を優先 |
自分がどちらに寄っているかを早めに把握しておくと、限られた時間の配分を誤りにくくなります。
1次試験の攻略法
難易度の性質が分かれば、対策も自然と分かれます。まず1次からです。
満点ではなく420点を積む発想
1次は7科目合計700点のうち420点(60%)で合格です。全科目で高得点を狙う必要はなく、得意科目で70点台を取り、苦手科目は50点台で耐える設計が現実的です。具体的な得点設計は1次の合格基準と得点戦略の記事で扱っています。
科目に優先順位をつける
7科目を均等に扱うと時間が足りません。2次にも直結する企業経営理論・財務会計・運営管理に厚く配分し、暗記中心の科目は範囲を絞るのが基本方針です。
過去問を軸に回す
インプットが一周したら、早めに過去問演習へ移ります。1次は過去問との相関が高く、5年分を繰り返すだけでも到達度は大きく変わります。
- 1周目は解けなくてよい。出題の粒度をつかむのが目的
- 2周目以降は7割を安定して超えるかを指標にする
- 財務・会計の計算問題だけは毎日短時間でも触れる
2次試験の攻略法
2次は知識の追加よりも、解答を作る手順の安定化が中心になります。
解答プロセスを型として固める
「設問を読む→与件文を読む→対応づける→骨子を作る→書く」という一連の手順を、毎回同じ順序で実行できるようにします。型が固まると、初見の事例でも大崩れしにくくなります。与件文の読み方は与件文を読み解くコツの記事が実践的です。
事例Ⅳを得点源にする
事例Ⅳ(財務・会計)は4事例の中でもっとも「正解がはっきりしている」領域です。頻出の計算パターンを固めれば、安定した得点源になります。記述中心の事例Ⅰ〜Ⅲが不安定でも、事例Ⅳで下支えできると合格の可能性が上がります。詳しくは事例Ⅳの計算パターン記事をご覧ください。
第三者の目を入れる
自分の答案は自分では評価しにくいのが2次の構造的な弱点です。答案を他人に読んでもらう、あるいは添削やAIによるフィードバックを使うなど、方向のずれを早期に検知する仕組みを持つことが重要です。独学で2次に挑む場合の現実は2次試験の独学記事で整理しています。
1次学習中から2次を意識して差を埋める
1次と2次を別々の試験と捉えると、2次対策の立ち上がりで時間を失います。難易度差を埋める最大のコツは、1次の段階から橋を架けておくことです。
2次に直結する科目を見極める
2次の4事例は、それぞれ特定の1次科目と結びついています。
| 2次事例 | 主に対応する1次科目 |
|---|---|
| 事例Ⅰ(組織・人事) | 企業経営理論 |
| 事例Ⅱ(マーケティング・流通) | 企業経営理論・運営管理 |
| 事例Ⅲ(生産・技術) | 運営管理 |
| 事例Ⅳ(財務・会計) | 財務・会計 |
この対応を知っていれば、1次学習中に「この論点は事例Ⅰで使う」と紐づけながら覚えられます。同じ時間の学習でも、後で効く度合いが変わります。
事例Ⅳだけは早期に着手する
事例Ⅳは知識より慣れが効く領域です。1次の財務・会計を学ぶ段階で、月に1事例でも2次の過去問に触れておくと、1次終了後の約2.5か月を事例Ⅰ〜Ⅲに集中させられます。
100字で書く練習を先に始める
2次で求められるのは、要点を100字前後にまとめる技術です。1次で学んだ論点を「100字で説明する」練習を挟むだけでも、2次移行時の負担は軽くなります。開始時期の考え方は2次対策はいつから始めるかの記事も参考になります。
令和8年度の制度変更と難易度への影響
直近の制度変更が、1次と2次の難易度バランスに与える影響も押さえておきましょう。
口述試験の廃止
令和8年度から口述試験が廃止されます。これにより、2次筆記試験の合格がそのまま最終合格に直結します。従来も口述の通過率は高く、実質的な関門は筆記でした。廃止によって「筆記がすべて」という構造がより明確になったと捉えるのが妥当です。
令和8年度の試験日程
令和8年度は1次試験が8月1〜2日、2次筆記試験が10月25日の予定です。1次終了から2次までは約12週間で、この期間の使い方が難易度の体感を大きく左右します。日程の詳細は令和8年度の試験日程記事にまとめています。
制度変更は難易度の低下を意味しない
口述廃止は手続きの簡素化であり、筆記試験の水準が下がるわけではありません。1次は範囲の広さ、2次は記述の精度という本質的な難しさは変わらない前提で計画を立てるのが安全です。
1次合格の有効期間という時間的な制約
難易度で見落とせないのが、2次に挑戦できる回数の制限です。
2次を受けられるのは2回まで
1次試験に合格すると、その合格年度とその翌年度に2次試験を受験できます。つまり2次のチャンスは最大2回で、2回とも不合格なら再び1次から受け直しになります。
この制約が2次の体感難易度を上げる
「あと1回しかない」という状況は、心理的な負荷を高めます。1次は毎年何度でも挑戦できる一方、2次には実質的な期限があるため、同じ不合格でも重みが違います。
制約を前提にした設計
- 1年目から2次を視野に入れ、事例Ⅳに早期着手する
- 1次合格年度の2次で仕上げるつもりで計画を組む
受験回数と有効期間の詳細は受験回数と多年度戦略の記事で整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、1次と2次はどちらが難しいのですか?
合格率という数字で見れば2次のほうが低く、狭き門です。ただし2次の受験者は1次を通過した人に限られるため、母集団の質が異なります。難しさの種類も、1次は範囲の広さ、2次は記述の精度と異なるため、自分の適性でどちらが重いかを判断するのが実践的です。
Q. 1次に合格できれば2次も何とかなりますか?
1次合格は2次のスタートラインに立っただけ、と考えるほうが安全です。1次で問われる「知識を選ぶ力」と、2次で問われる「知識を使って書く力」は別物で、切り替えに時間がかかります。1次学習中から100字記述や事例Ⅳに触れておくと、この段差を小さくできます。
Q. 2次のほうが合格率が低いのに、なぜ1次で挫折する人が多いのですか?
1次は学習期間が長く、7科目を通しで仕上げる持久戦だからです。試験当日の難しさより、1年前後にわたって学習を続ける難しさのほうが現実的なハードルになります。学習の継続を仕組み化できるかが、1次突破の分かれ目です。
Q. 文系・理系で1次と2次の得意不得意は分かれますか?
一概には言えませんが、財務・会計や事例Ⅳの計算に苦手意識を持つ方は簿記の基礎から入ると負担が減ります。逆に理系の方は、2次の記述で「要点を絞って書く」訓練に時間を割くと効果的です。科目別の対策は文系でも合格できるかの記事で扱っています。
Q. 2次の点数はどのくらい取れば合格ですか?
制度上は総点数の60%以上で、かつ40%未満の科目がないことが基準です。ただし模範解答が公表されないため、自分の答案が何点かを正確に把握するのは困難です。「満点を狙う」より「大きく外さない答案を4事例そろえる」発想のほうが、結果につながりやすくなります。
Q. 1次対策と2次対策を同時並行で進めるべきですか?
完全な並行は負荷が高いため、1次を主軸に置きつつ、事例Ⅳだけを月1〜2事例のペースで挟む形が現実的です。1次の学習中に2次の設問に触れておくと、知識の使い道が見えて1次の理解も深まります。
Q. 2次対策は1次終了後の約2.5か月で間に合いますか?
1次学習中に事例Ⅳの土台ができていれば、現実的な範囲です。ただし事例Ⅰ〜Ⅲの解答プロセスを固めるには時間がかかるため、9月末までに自分の型を作り、10月は通し演習に充てる配分を目安にするとよいでしょう。
Q. 難易度を下げるために科目合格制度を使うべきですか?
可処分時間が限られる方には有効な選択肢です。科目合格は翌年度・翌々年度まで有効で、1次の負担を分散できます。ただし最終合格までの期間は延びるため、2次に使える時間との兼ね合いで判断しましょう。
まとめ
中小企業診断士試験の1次と2次の難易度比較について、要点を整理します。
- 合格率の数字では2次(例年おおむね18〜19%)が1次(直近3年で23.7〜29.6%)より低い
- ただし2次の受験者は1次通過者に限られ、母集団の質が異なる
- 1次の難しさは7科目の範囲の広さと足切り、そして長期継続にある
- 2次の難しさは模範解答が公表されないことと、80分で書き切る時間制約にある
- どちらが壁になるかは適性で変わる。自分の傾向を早めに見極めて配分を決める
- 1次学習中から事例Ⅳと100字記述に触れておくと、2次への段差を小さくできる
- 令和8年度から口述試験が廃止され、2次筆記の合格が最終合格に直結する
難易度は「どちらが上か」ではなく「自分にとってどちらが重いか」で捉えると、対策の優先順位がはっきりします。診断士エアポートでは、全7科目の映像授業と過去問演習を月額3,980円で提供しており、1次から2次までを見通した学習にも活用いただけます。学習の全体設計を確認したい方はトップページや1次から2次までのロードマップ記事もご参照ください。
出典・参考
- 一般社団法人 中小企業診断協会/日本中小企業診断士協会連合会 公式統計(令和5・6・7年度 試験結果データ)
- 令和8年度 中小企業診断士試験 実施スケジュール(中小企業診断士協会連合会発表)

