原価の分類と計算とは、製品の製造にかかった費用を「何に使ったか」「どの製品のためか」「操業度で変わるか」という切り口で分類し、製品ごとに集計する手続きです。形態別には材料費・労務費・経費の3つに分け、さらに製品に直接ひも付く直接費と、複数製品に共通する間接費に分けます。間接費は配賦基準を使って各製品に割り当て、費目別→部門別→製品別の3段階で製造原価を計算します。
- 形態別分類(材料費・労務費・経費)× 製品との関連(直接費・間接費)で6分類。間接材料費・間接労務費・間接経費の合計が製造間接費
- 製造間接費は直接作業時間などの配賦基準で各製品に配分する。予定配賦率を使うと実際発生額との間に配賦差異が生じる
- 支払利息のような財務費用や、異常な原因による損失は非原価項目。正常な仕損・減損・棚卸減耗損は原価に含まれる
原価の分類と計算とは
原価計算の目的は、製品1個あたりにいくらかかったかを正しく把握することです。これが分からないと、販売価格の設定も、損益計算書の売上原価も、貸借対照表の棚卸資産(製品・仕掛品)の金額も決まりません。
ところが工場で発生する費用は、材料の購入代金、工員の賃金、電気代、機械の減価償却費などさまざまです。しかも「この製品のために使った」と言い切れるものと、工場全体で共通に使っているものが混ざっています。そこで、費用をいくつかの軸で分類し、集計のルールを決める必要があります。
もう1つの理由は管理目的です。直接費と間接費、変動費と固定費の区分は、標準原価計算や直接原価計算、CVP分析(損益分岐点分析)の前提になります。原価の分類は原価計算全体の土台であり、ここが曖昧だと後の論点もすべて曖昧になります。
原価の分類と計算の仕組み
分類の3つの軸
| 分類の軸 | 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|---|
| 形態別分類(何に使ったか) | 材料費 | 製造に消費された材料の原価 | 主要材料、補助材料、工場消耗品 |
| 労務費 | 製造に従事する人の賃金等 | 直接工・間接工の賃金、工場事務員の給料 | |
| 経費 | 材料費・労務費以外の製造原価 | 外注加工賃、減価償却費、電力料 | |
| 製品との関連(どの製品のためか) | 直接費 | 特定の製品に直接ひも付けられる原価 | 直接材料費、直接労務費、直接経費 |
| 間接費 | 複数の製品に共通して発生する原価 | 補修用材料、工場長の給料、工場建物の減価償却費 | |
| 操業度との関連(量で変わるか) | 変動費 | 操業度に比例して増減する原価 | 直接材料費など |
| 固定費 | 操業度に関係なく一定額発生する原価 | 減価償却費、地代家賃など |
形態別分類と直接・間接の区分を掛け合わせると、次の6分類になります。
| 直接費 | 間接費 | |
|---|---|---|
| 材料費 | 直接材料費 | 間接材料費 |
| 労務費 | 直接労務費 | 間接労務費 |
| 経費 | 直接経費 | 間接経費 |
右の列(間接材料費・間接労務費・間接経費)をまとめたものが製造間接費です。直接労務費や直接経費は製造間接費に含まれない点に注意してください。
原価の構成(総原価)
製造原価に、販売や本社管理にかかる費用を加えたものが総原価です。
- 製造直接費 + 製造間接費 = 製造原価
- 製造原価 + 販売費及び一般管理費 = 総原価
- 総原価 + 利益 = 販売価格
一方、経営目的(製造・販売)に関係しない費用や、異常な原因による損失は原価に含めません。これを非原価項目といいます。
| 原価に含める | 原価に含めない(非原価項目) |
|---|---|
| 製造用設備の減価償却費(製造間接費) | 支払利息などの財務費用 |
| 売上債権に対する貸倒引当金繰入(販売費及び一般管理費) | 異常な原因による仕損・減損・棚卸減耗損 |
| 正常な仕損・減損・棚卸減耗損 | 経営目的に関連しない価値の減少 |
計算の3段階と製造間接費の配賦
製造原価は次の3段階で計算します。
- 費目別計算:材料費・労務費・経費を、直接費と間接費に分けて集計する
- 部門別計算:製造間接費を、製造部門・補助部門に集計・配分する
- 製品別計算:製品ごとに原価を集計する。受注生産なら個別原価計算(製造指図書ごとに集計)、大量生産なら総合原価計算
直接費は製品に直接賦課(直課)できますが、製造間接費は配賦が必要です。配賦基準には直接作業時間、機械運転時間、直接材料費などを使います。
- 予定配賦率 = 製造間接費の年間予算額 ÷ 年間の予定配賦基準数値(予定直接作業時間など)
- 予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際の配賦基準数値
- 配賦差異 = 予定配賦額 − 実際発生額(マイナスなら不利差異)
具体例で確認する
例1:製造間接費を配賦して製品原価を求める
ある工場は製品Aと製品Bを作っています。製造間接費の年間予算は24,000,000円、年間の予定直接作業時間は12,000時間です。当月のデータは次のとおりです。
| 項目 | 製品A | 製品B |
|---|---|---|
| 直接材料費 | 2,500,000円 | 1,000,000円 |
| 直接作業時間 | 600時間 | 400時間 |
| 直接労務費(賃率1,500円/時間) | 900,000円 | 600,000円 |
| 直接経費(外注加工賃) | 200,000円 | 0円 |
| 完成数量 | 100個 | 80個 |
当月の製造間接費の実際発生額は2,100,000円でした。
手順1:予定配賦率を求める 24,000,000円 ÷ 12,000時間 = 2,000円/時間
手順2:各製品に予定配賦する
- 製品A:2,000円 × 600時間 = 1,200,000円
- 製品B:2,000円 × 400時間 = 800,000円
- 合計:2,000,000円
手順3:製品原価を集計する
| 費目 | 製品A | 製品B |
|---|---|---|
| 直接材料費 | 2,500,000円 | 1,000,000円 |
| 直接労務費 | 900,000円 | 600,000円 |
| 直接経費 | 200,000円 | 0円 |
| 製造間接費(予定配賦額) | 1,200,000円 | 800,000円 |
| 製造原価合計 | 4,800,000円 | 2,400,000円 |
| 1個あたり原価 | 48,000円 | 30,000円 |
手順4:配賦差異を求める 予定配賦額2,000,000円 − 実際発生額2,100,000円 = −100,000円(不利差異) 実際の製造間接費が予定より100,000円多くかかった、という意味です。
例2:労務費を直接・間接に分ける
直接工の予定賃率が1時間1,500円、当月の作業時間が直接作業1,000時間、間接作業300時間、手待時間20時間だったとします。賃金の支払額は1,900,000円、前月末の未払額は300,000円、当月末の未払額は400,000円です。
- 直接労務費:1,000時間 × 1,500円 = 1,500,000円
- 間接労務費:(300時間 + 20時間)× 1,500円 = 480,000円(手待時間は間接労務費)
- 実際の労務費発生額:1,900,000円 − 300,000円 + 400,000円 = 2,000,000円
- 賃率差異:予定消費額1,980,000円(1,320時間 × 1,500円)− 実際2,000,000円 = −20,000円(不利差異)
直接工の賃金でも、直接作業の時間分だけが直接労務費になります。間接作業や手待時間の分は間接労務費として製造間接費に入る点がポイントです。
試験での問われ方
1次試験の財務・会計では、原価の分類は「計算問題の資料を正しく仕分けられるか」という形で出題されます。主なパターンは次の3つです。
① 労務費の計算と直接・間接の区分 令和8年度 第12問は、直接工の予定賃率・作業時間・未払額の資料から、間接労務費、実際の労務費発生額、直接労務費、賃率差異のうち正しい記述を選ぶ問題です。手待時間を間接労務費に含めること、実際発生額を「当月支払額 − 前月末未払額 + 当月末未払額」で求めることが問われました。上の例2と同じ構造です。
② 個別原価計算での原価の振り分け 令和6年度 第10問は、製造指図書ごとの月別原価と製造開始日・完成日・引渡日の資料から、月末の仕掛品・製品・売上原価を判断する問題です。「未完成なら仕掛品」「完成・未引渡なら製品」「引渡済なら売上原価」と、製造指図書の状態で分類できるかがカギになります。
③ 原価と非原価の区別 令和4年度 第6問は、貸倒引当金繰入、減価償却費、仕損・減損・棚卸減耗損、支払利息の中から非原価項目を選ぶ知識問題です。正解は支払利息で、財務活動から生じる費用は正常なものでも原価に算入されません。
いずれも計算そのものは四則演算で済みます。差がつくのは「どの数字をどこに入れるか」という分類の正確さです。
間違えやすいポイント
「直接工の賃金 = 直接労務費」ではありません。直接工でも、間接作業や手待時間の分は間接労務費です。
- 直接労務費を製造間接費に含めてしまう:製造間接費は間接材料費・間接労務費・間接経費の合計です。直接費は含みません。
- 減価償却費を変動費と考える:減価償却費は操業度に関係なく一定額発生するため、一般に固定費です。
- 外注加工賃を間接費と考える:特定の製品の加工を外部に委託した費用なので、直接経費に分類されます。
- 仕損・減損をすべて非原価にする:正常な範囲のものは原価に含めます。非原価になるのは異常な原因によるものです。
- 支払利息を製造間接費にする:支払利息は財務費用であり、非原価項目です。
- 配賦差異の符号を逆にする:実際発生額が予定配賦額を上回れば、予定より多くかかったので不利差異です。
- 直接費と変動費を同じものと考える:直接・間接は「製品との関連」、変動・固定は「操業度との関連」で、別の軸です。工場建物の減価償却費は間接費かつ固定費、補助材料は間接費かつ変動費、というように組み合わせは独立しています。
覚え方・解き方のコツ
- 6分類は2×3の表で覚える:縦に材料費・労務費・経費、横に直接・間接。右列の合計が製造間接費、と図で覚えると混同しません。
- 「この製品のためと言い切れるか」で直接・間接を判定する:言い切れれば直接費、工場全体で共通なら間接費です。
- 非原価は「経営目的と関係ない」「異常」の2語で判定する:支払利息などの財務費用、異常な損失が典型です。
- 計算問題は最初に資料の数字を分類する:直接費/間接費、原価/非原価に印をつけてから計算に入ると、ひっかけの選択肢に引っかかりにくくなります。
- 労務費は「支払 − 前月末未払 + 当月末未払」:現金で払った額と、当月に発生した費用は一致しない、と意識しておきます。
変動費と固定費の区分を使う損益分岐点の計算は、生産性分析・損益分岐点分析で、予算と実績の差異の考え方は予算管理・利益計画で整理しています。わからない箇所は、診断士エアポートのトーレス先生(AI講師)にその場で質問できます。
よくある質問
製造間接費には何が含まれますか?
製造間接費は、間接材料費・間接労務費・間接経費の合計です。たとえば補修用材料や工場消耗品、工場長の給料や間接作業の賃金、工場建物の減価償却費や電力料などが含まれます。直接材料費・直接労務費・直接経費は含まれません。
直接費と変動費は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。直接費・間接費は「特定の製品にひも付けられるか」、変動費・固定費は「操業度に比例して増減するか」という別々の軸による分類です。たとえば工場建物の減価償却費は間接費であり固定費です。
支払利息はなぜ原価に含まれないのですか?
支払利息は資金調達という財務活動から生じる費用で、製造や販売という経営目的に直接関係しないためです。原価計算ではこうした費用を非原価項目として扱い、正常なものであっても原価に算入しません。損益計算書では営業外費用に表示されます。
手待時間の賃金は直接労務費と間接労務費のどちらですか?
間接労務費です。手待時間は材料待ちや機械の故障などで作業ができなかった時間で、特定の製品のための作業ではないからです。直接工の賃金であっても、直接作業時間の分だけが直接労務費になります。
製造間接費の配賦差異はなぜ生じるのですか?
予定配賦率を使って製品に配賦すると、予定配賦額と実際の発生額が一致しないことがあるためです。実際発生額のほうが大きければ不利差異、小さければ有利差異になります。予定配賦率を使うのは、実際額の集計を待たずに製品原価を計算できるようにするためです。
個別原価計算と総合原価計算はどう使い分けますか?
受注生産のように製品を1つずつ作る場合は、製造指図書ごとに原価を集計する個別原価計算を使います。同じ製品を大量に連続生産する場合は、一定期間の原価を生産量で割る総合原価計算を使い、月末仕掛品は完成品換算量で評価します。
まとめ
- 原価は形態別(材料費・労務費・経費)× 直接・間接の6分類で整理し、間接費の合計が製造間接費
- 変動費・固定費は操業度との関連による別の軸の分類で、CVP分析や直接原価計算の基礎になる
- 製造原価は費目別→部門別→製品別の3段階で計算し、製造間接費は配賦基準で各製品に配分する
- 予定配賦率を使うと配賦差異が生じ、実際発生額が予定配賦額を上回れば不利差異
- 支払利息などの財務費用や異常な損失は非原価項目。正常な仕損・減損・棚卸減耗損は原価に含める
