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法人税・消費税の基礎とは?課税所得と納付税額の計算を過去問で解説

法人税の課税所得(益金−損金)と税務調整、損金不算入・益金不算入の代表例、消費税の仕入税額控除と納付税額の計算を、中小企業診断士1次試験の過去問に沿って解説。申告調整や仮受・仮払消費税の計算手順も例題で確認できます。

公開 2026-11-04 ・ 約16分で読めます

目次▾

法人税は、法人の所得(益金 − 損金)に対して課される国税です。消費税は、モノやサービスの取引に対して課され、最終的には消費者が負担する間接税で、事業者は「預かった消費税 − 支払った消費税」を納めます。どちらも、会計上の数字と税務上の数字が一致しないところが試験のポイントになります。

  • 課税所得は「会計上の利益 + 加算調整 − 減算調整」で求める(税務調整・申告調整)。損金不算入は加算、益金不算入は減算
  • 消費税の納付税額は「仮受消費税 − 仮払消費税」(仕入税額控除)。売れ残った在庫の分も仕入税額控除の対象になる
  • 1次試験では「申告調整の計算」「消費税の納付税額と会計処理」「法人税の制度(申告期限・青色申告・欠損金)の正誤」の3パターンが中心

法人税・消費税とは

会社が負担する税金のうち、財務・会計で扱う中心は法人税と消費税です。性格がまったく違うので、まず全体像を整理しておきます。

項目 法人税 消費税
課税の対象 法人の所得(もうけ) 財貨・サービスの取引
税の種類 直接税(会社自身が負担) 間接税(消費者が負担し、事業者が納める)
計算の出発点 会計上の税引前当期純利益 売上・仕入に含まれる消費税額
税額の計算 課税所得 × 税率 仮受消費税 − 仮払消費税
損益計算書への影響 「法人税等」として利益から差し引く 税抜方式なら損益に影響しない

法人税は会社の「もうけ」にかかるため、赤字なら原則として税額は生じません。一方、消費税は取引にかかるため、赤字の会社でも売上があれば納税が発生します。

なお、法人税・住民税・事業税を合わせた実質的な税負担率を実効税率といい、おおむね30%程度です。1次試験の計算問題では「実効税率30%」「法人税率20%」のように、問題文で税率が与えられることがほとんどです。

法人税の仕組み:課税所得と税務調整

益金・損金と会計上の収益・費用の違い

法人税法では、所得の金額を「益金の額 − 損金の額」と定めています。益金・損金は会計上の収益・費用とほぼ重なりますが、範囲が完全には一致しません。

そこで実務では、会計上の利益を出発点にして、ズレている部分だけを足し引きして課税所得を求めます。これを**税務調整(申告調整)**といい、確定申告書の「別表四」で行います。

法人税法は確定決算主義を採っており、株主総会で確定した決算が課税所得計算の出発点になります。税務申告だけのために、決算とは別の利益を一から計算することはできません。

加算調整と減算調整

調整 内容 課税所得への影響 代表例
損金不算入 会計上は費用だが、税務上は損金にならない 加算(増える) 交際費の限度超過額、寄附金の限度超過額、減価償却の償却超過額、引当金の繰入限度超過額、法人税・住民税本体、役員報酬の不相当部分
益金算入 会計上は収益でないが、税務上は益金になる 加算(増える) —
損金算入 会計上は費用でないが、税務上は損金になる 減算(減る) 繰越欠損金の損金算入、前期に否認された引当金の当期認容
益金不算入 会計上は収益だが、税務上は益金にならない 減算(減る) 受取配当等の益金不算入額、法人税の還付金

式にまとめると次のとおりです。

課税所得 = 会計上の利益 + 損金不算入額 + 益金算入額 − 損金算入額 − 益金不算入額

試験で特に出るのは「損金不算入 → 加算」「益金不算入 → 減算」の2つです。名前に「不算入」とついていても、損金なら加算、益金なら減算と方向が逆になる点に注意してください。

主な損金不算入・益金不算入の項目

交際費は原則として損金不算入です。ただし中小法人(資本金1億円以下)には、年800万円まで損金に算入できる特例があります。このほか接待飲食費の50%を損金算入できる特例もありますが、対象となる法人の範囲などは税制改正で変わるため、最新の情報で確認してください。

減価償却費には税法上の損金算入限度額があり、法定耐用年数・法定償却方法に基づいて計算します。限度額を超えた部分(償却超過額)は当期の損金になりませんが、翌期以降に繰り越して損金に算入できるため、永久に損金にならないわけではありません。

役員報酬で損金にできるのは「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3つに限られます。役員が報酬を自由に動かして利益を圧縮することを防ぐためのルールです。

受取配当金は、配当の原資がすでに法人税を課された後の利益なので、もう一度課税すると二重課税になります。そのため、持株比率に応じて一部または全部が益金不算入となります。

法人税・住民税の本体は損金不算入です。「税金も費用なのだから損金になる」と考えてしまいやすい点です。

法人税の税率

執筆時点では、法人税の基本税率は23.2%です。中小法人(資本金1億円以下)は、年800万円以下の所得に軽減税率15%が適用されます。税率や特例は税制改正で変わるため、最新の情報は国税庁の資料で確認してください。

区分 所得の範囲 税率
中小法人 年800万円以下の部分 15%(軽減税率)
中小法人 年800万円を超える部分 23.2%
大法人 所得全体 23.2%

このように法人税の税率は資本金の規模によって変わります。「税率は資本金と無関係」という選択肢は誤りです。

申告と青色申告

法人税の確定申告書は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出します。3月末決算なら5月末が期限です。課税所得がゼロや赤字でも、申告義務はなくなりません。

納税地の所轄税務署長の承認を受けると、青色申告で確定申告ができます。青色申告法人は、欠損金の繰越控除や特別償却などの特典を受けられます。逆に、白色申告では欠損金の繰越控除は使えません。

消費税の仕組み:仕入税額控除

納付税額の計算

事業者は、売上のときに顧客から消費税を預かり(仮受消費税)、仕入のときに仕入先へ消費税を支払います(仮払消費税)。納めるのはその差額です。

納付税額 = 仮受消費税 − 仮払消費税

この方式を仕入税額控除といい、取引の各段階で税が二重・三重にかかる(税の累積)のを防ぐ役割があります。現行の税率は10%(軽減税率8%)で、仕入税額控除を受けるにはインボイス制度による適格請求書が必要です。

税抜方式の会計処理

場面 仕訳のイメージ ポイント
仕入時 (借)仕入・仮払消費税 (貸)現金 仮払消費税は資産
売上時 (借)現金 (貸)売上・仮受消費税 仮受消費税は負債
決算時 (借)仮受消費税 (貸)仮払消費税・未払消費税 相殺した差額を未払消費税として計上

税抜方式では、消費税は売上・仕入に含めないため、損益計算書の利益に影響しません。税込金額から消費税を取り出すときは「税込金額 × 10/110」で計算します。

具体例で確認する

例1:課税所得と法人税額の計算

資本金1億円以下の中小法人が、次の状況だったとします。

  • 会計上の税引前当期純利益:1,000万円
  • 交際費:1,000万円(うち800万円は損金算入の特例の範囲内)
  • 減価償却の償却超過額:30万円
  • 受取配当金の益金不算入額:50万円

手順1 加算調整を拾う 交際費は800万円まで損金に算入できるので、超過分の200万円が損金不算入です。償却超過額30万円も損金不算入です。加算は合計230万円です。

手順2 減算調整を拾う 受取配当金の益金不算入額50万円を減算します。

手順3 課税所得を求める 課税所得 = 1,000万円 + 200万円 + 30万円 − 50万円 = 1,180万円

手順4 法人税額を求める(中小法人の税率) 800万円 × 15% = 120万円 (1,180万円 − 800万円)× 23.2% = 380万円 × 23.2% = 88.16万円 法人税額 = 120万円 + 88.16万円 = 208.16万円

会計上の利益は1,000万円でも、課税所得は1,180万円になります。損金不算入の項目があると、課税所得は会計上の利益より大きくなります。

1次試験の計算問題は「法人税率20%」のように単一の税率が与えられることが多く、軽減税率の段階計算まで求められることは少なめです。問題文の税率の指定を必ず確認してください。

例2:消費税の納付税額と税の累積を防ぐ仕組み

税率10%として、原材料業者 → メーカー → 小売店 → 消費者と商品が流れる場合を考えます(金額は税抜)。

事業者 売上(税抜) 仮受消費税 仮払消費税 納付税額
原材料業者 20,000円 2,000円 0円 2,000円
メーカー 60,000円 6,000円 2,000円 4,000円
小売店 100,000円 10,000円 6,000円 4,000円
合計 — — — 10,000円

各事業者の納付税額の合計10,000円は、消費者が最後に支払った消費税10,000円(100,000円 × 10%)と一致します。事業者は税を預かって納めているだけで、負担しているのは消費者です。

試験での問われ方

採用した過去問を見ると、出題は大きく3つのパターンに分かれます。

パターン 形式 過去問
申告調整から法人税額を計算 計算 令和5年度 第6問
消費税の納付税額・会計処理 計算/正誤 令和7年度 第3問、令和8年度 第2問
法人税の制度(所得の定義・申告・青色申告) 正誤 令和6年度 第9問、令和8年度 第1問

パターン1:申告調整の計算

令和5年度 第6問は、税引前当期純利益に、受取配当金の益金不算入額・交際費の損金不算入額・前期に否認された貸倒引当金の当期認容を反映させて、法人税を求める問題です。

益金不算入と認容は減算、損金不算入は加算です。課税所得は 800,000 − 24,000 + 36,000 − 10,000 = 802,000円、法人税率20%で 160,400円 になります。誤答の選択肢には、引当金の認容を加算してしまった値(822,000円 × 20% = 164,400円)などが並んでいます。

「前期に損金不算入(加算)だったものが、当期に損金算入(減算)される」という認容の考え方は、償却超過額や引当金で繰り返し使われます。税効果会計の一時差異とも同じ発想です。

パターン2:消費税の計算と会計処理

令和7年度 第3問は、商品を1,000個仕入れて800個を販売し、200個が在庫に残るケースで、消費税の納付税額と法人税の所得金額を判定させます。

  • 仮受消費税:800個 × 150円 = 120,000円
  • 仮払消費税:1,000個 × 100円 = 100,000円
  • 納付税額:120,000 − 100,000 = 20,000円

ここでの落とし穴は、在庫200個分の消費税も仕入税額控除の対象になることです。一方、所得金額は売れた800個分の売上原価だけで計算するので、800個 ×(1,500円 − 1,000円)= 400,000円 になります。選択肢の200,000円は全1,000個の仕入を費用にした値、440,000円は税込金額のまま計算した値です。

令和8年度 第2問は税抜方式の会計処理の正誤問題です。仮払消費税は資産であること、決算で仮受消費税と相殺して差額を未払消費税にすること、給与は不課税取引であること、税込11,000円に含まれる消費税は 11,000 × 10/110 = 1,000円であることが問われました。

パターン3:法人税の制度の正誤

令和8年度 第1問は、所得の定義(収益 − 費用ではなく益金 − 損金)、所得ゼロでも申告義務があること、白色申告では欠損金の繰越控除が使えないこと、確定申告の期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)を問う問題です。

令和6年度 第9問も同じ型で、青色申告には税務署長の承認が必要なことが正解でした。誤りの選択肢には、欠損金は損金に算入できない、所得は収益から所得控除を引いたもの、税率は資本金と無関係、といった記述が並びます。

間違えやすいポイント

「不算入」の加算・減算の方向

用語 何が起きているか 調整
損金不算入 費用を税務上は認めない → 所得が増える 加算
益金不算入 収益を税務上は課税しない → 所得が減る 減算

「不算入=減らす」と覚えると、損金不算入で間違えます。課税所得が増えるか減るかで判断してください。

所得の定義は「収益 − 費用」ではない

法人税の所得は「益金 − 損金」です。「収益の額から費用の額を控除した金額」という選択肢は、会計上の利益の定義なので誤りになります。令和8年度・令和6年度と続けて出たひっかけです。

仮払消費税は費用ではなく資産

仮払消費税は、将来の納付税額から差し引ける権利なので資産です。仮受消費税は預かったお金を納める義務なので負債です。

税込金額に10%を掛けない

税込11,000円の消費税は 11,000 × 10% = 1,100円 ではなく、11,000 × 10/110 = 1,000円 です。税抜金額に10%を掛けるのか、税込金額から取り出すのかを区別します。

在庫分の消費税と売上原価の扱いの違い

消費税は「仕入れた分」すべてを控除し、法人税の所得計算では「売れた分」だけを売上原価にします。同じ取引でも、消費税と法人税で数える個数が違う点が、令和7年度 第3問のひっかけでした。

覚え方・解き方のコツ

  • 申告調整は表を書く:「加算」「減算」の2列をつくり、問題文の項目を1つずつ振り分けてから足し引きします。認容(前期の否認分を当期に損金算入)は減算に入れます
  • 「所得が増えるか減るか」で判断:用語の字面ではなく、税務上の所得がどちらに動くかで加算・減算を決めます
  • 消費税は「預かった − 払った」:個数を確認し、仮受は売上個数、仮払は仕入個数で計算します
  • 制度問題の頻出3点:確定申告の期限は「翌日から2か月以内」、青色申告は「税務署長の承認」、欠損金の繰越控除は「青色申告法人のみ」
  • ファイナンスとのつながりも押さえる:支払利息や減価償却費が損金になると、その額 × 税率だけ税金が減ります(タックスシールド)。たとえば支払利息100万円、実効税率30%なら税金は30万円減ります。NPVのキャッシュフロー計算やWACCの税引後負債コストで使う考え方です

よくある質問

会計上の利益と課税所得が一致しないのはなぜですか?

会計は企業の業績を正しく示すこと、税法は公平に課税することを目的としており、費用や収益として認める範囲が違うためです。たとえば交際費の限度超過額は、会計上は費用でも税務上は損金になりません。そのズレを、会計上の利益に加算・減算して調整するのが税務調整です。

損金不算入と益金不算入は、課税所得をどちらに動かしますか?

損金不算入は、費用として認められない分だけ所得が増えるので加算します。益金不算入は、収益として課税されない分だけ所得が減るので減算します。どちらも「不算入」ですが、調整の方向は逆です。

受取配当金が益金不算入になるのはなぜですか?

配当の原資は、支払った会社がすでに法人税を払った後の利益だからです。受け取った会社でもう一度課税すると二重課税になるため、持株比率に応じて一部または全部が益金不算入になります。

減価償却の償却超過額は、ずっと損金にならないのですか?

いいえ。償却超過額は当期の損金にはなりませんが、翌期以降に繰り越して損金に算入できます。会計と税務で損金になる時期がずれるだけなので、税効果会計でいう一時差異にあたります。

消費税の納付税額で、在庫分の消費税も差し引けるのですか?

はい。仕入税額控除は仕入れた分に対して行うので、期末に売れ残った在庫分の仮払消費税も控除の対象になります。売れた分だけを費用にする法人税の売上原価とは扱いが異なるため、計算問題では個数の違いに注意してください。

赤字の会社でも法人税や消費税の申告は必要ですか?

法人税は、課税所得がゼロでも確定申告書を提出する義務があります。消費税は取引にかかる税なので、課税事業者であれば赤字でも預かった消費税と支払った消費税の差額を納めます。

まとめ

  • 法人税の課税所得は「益金 − 損金」で、実務では会計上の利益に加算調整・減算調整を行って求める
  • 損金不算入(交際費の超過額・償却超過額など)は加算、益金不算入(受取配当金など)は減算。認容は減算
  • 消費税の納付税額は「仮受消費税 − 仮払消費税」。在庫分の消費税も仕入税額控除の対象
  • 税抜方式では仮払消費税は資産、仮受消費税は負債。決算で相殺し、差額を未払消費税にする
  • 制度問題は「申告期限は翌日から2か月以内」「青色申告は承認制」「欠損金の繰越控除は青色申告法人のみ」を押さえる

わからない箇所は、診断士エアポートのトーレス先生(AI講師)にその場で質問できます。

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