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NPV(正味現在価値)とは?計算式・税引後CF・投資判断を過去問で解説

NPV(正味現在価値)の意味・計算式・投資判断の基準を、中小企業診断士1次試験の過去問に沿って解説。税引後キャッシュフローとタックスシールド、年金現価係数と複利現価係数の使い分け、残存価額や運転資本の扱いも例題で確認できます。

公開 2026-10-08 ・ 約15分で読めます

目次▾

NPV(Net Present Value、正味現在価値)とは、投資から将来得られるキャッシュフロー(CF)を現在価値に割り引いて合計し、そこから初期投資額を差し引いた金額です。NPVがプラスならその投資は企業価値を増やすので実行し、マイナスなら見送ります。中小企業診断士1次試験の財務・会計では計算問題として繰り返し出題され、2次試験の事例Ⅳでも毎年のように出題される最重要論点です。

  • NPV = 将来CFの現在価値合計 − 初期投資額。NPV>0なら実行、NPV<0なら見送り。複数案ならNPV最大の案を選ぶ
  • CFは税引後で考える。税引後CF = 税引後利益 + 減価償却費(減価償却費のタックスシールドを忘れない)
  • 毎年同額のCFは年金現価係数、特定の年だけのCF(残存価額・運転資本の回収など)は複利現価係数で割り引く

NPV(正味現在価値)とは

今日の100万円と5年後の100万円は、同じ価値ではありません。今日の100万円なら運用して増やせるため、将来の金額は「割り引いて」考える必要があります。この、将来の金額を割引率で割り引いた現時点での価値を現在価値といいます。

投資の採否を判断するときは、将来入ってくるCFをすべて現在価値にそろえ、今出ていく初期投資額と比べます。その差額がNPVです。NPVは「この投資で企業価値がいくら増えるか(減るか)」を金額で示すため、企業価値の最大化という目的と直結した判断基準になります。

割引率には、通常、資金調達のコストであるWACC(加重平均資本コスト)を使います。つまり「NPV>0」とは、資本コストを上回るリターンが得られ、その超過分だけ企業価値が増えることを意味します。

用語 意味
NPV(正味現在価値) 将来CFの現在価値合計 − 初期投資額。正ならば投資実行
割引率 将来CFを現在価値に換算する率。通常はWACCを使用
現在価値 将来の金額を割引率で割り引いた現時点での価値
キャッシュフロー 投資から生み出される現金収支。税引後CFを用いる

NPVの計算式と仕組み

基本式

NPV = Σ{CFt ÷ (1+r)^t} − I₀

  • CFt:t期(t年目末)のキャッシュフロー
  • r:割引率(資本コスト)
  • I₀:初期投資額(0年目に支出)

各年のCFを (1+r) のt乗で割って現在価値に直し、合計してから初期投資額を差し引きます。試験では (1+r)^t を自分で計算することはほとんどなく、現価係数表が与えられます。

投資判断の基準

NPVの値 意味 判断
NPV>0 資本コストを上回るリターン。企業価値が増える 投資実行(採択)
NPV=0 資本コストちょうどのリターン。企業価値は変わらない どちらでもよい(理論上は無差別)
NPV<0 資本コストに届かない。企業価値が減る 投資見送り(棄却)

複数の投資案から1つを選ぶ場合(相互排他的投資案)は、NPVが最大の案を選びます。

2種類の現価係数

係数 使う場面 意味
複利現価係数 特定の1年だけ発生するCF 1 ÷ (1+r)^t。t年後の1円の現在価値
年金現価係数 毎年同額のCFがn年続く 1年目〜n年目の複利現価係数の合計。{1−(1+r)^(−n)} ÷ r

たとえば割引率10%・5年の年金現価係数は3.791です。毎年300万円のCFが5年続くなら、300万円×3.791で5年分の現在価値を一度に求められます。

税引後キャッシュフローとタックスシールド

NPVで使うCFは、会計上の利益ではなく税引後の現金収支です。減価償却費は現金支出を伴わない費用なので、利益から求めるときは足し戻します。

求め方 式
利益から求める 税引後CF = 税引前利益 ×(1 − 税率)+ 減価償却費
現金収支から求める 税引後CF =(収入 − 現金支出)×(1 − 税率)+ 減価償却費 × 税率

2つ目の式の「減価償却費×税率」がタックスシールド(税の節約効果)です。減価償却費は現金が出ていかないのに課税所得を減らすため、その分だけ税金が軽くなり、CFが増えます。

初期投資と最終年のCF

  • 初期投資:設備の購入額に加え、運転資本の増加額も含める。設備の取替えで旧設備を売却する場合は、売却収入を差し引き、売却益にかかる税金を加える
  • 最終年のCF:通常の営業CFに、設備の残存価額(売却収入)と運転資本の回収額を加える。これらも複利現価係数で割り引く

具体例で確認する

例1:毎年同額のCFが続く設備投資

初期投資額1,000万円、税引後CFが毎年300万円で5年間、割引率(WACC)10%の投資案です。年金現価係数(5年・10%)は3.791とします。

項目 金額
CFの現在価値合計 300万円 × 3.791 = 1,137.3万円
初期投資額 1,000万円
NPV 1,137.3 − 1,000 = 137.3万円

NPV>0なので、この投資は企業価値を約137万円増やすと判断し、実行します。

例2:税引後CFを自分で計算する

増分売上高1,000万円、増分変動費400万円、減価償却費200万円、法人税率30%のときの毎年の営業CFを求めます。

  1. 税引前利益:1,000 − 400 − 200 = 400万円
  2. 法人税:400 × 0.3 = 120万円
  3. 税引後利益:400 − 120 = 280万円
  4. 営業CF:280 + 200(減価償却費の足し戻し)= 480万円

別の式でも確かめます。(1,000 − 400)× 0.7 + 200 × 0.3 = 420 + 60 = 480万円。タックスシールドは60万円で、どちらの式でも同じ結果になります。

例3:最終年に残存価額がある投資

初期投資1,000万円、3年間にわたり毎年400万円の税引後CF、3年目末に残存価額100万円を回収できる投資案です。割引率は5%、複利現価係数は1年0.9524、2年0.9070、3年0.8638とします。

年 CF 複利現価係数 現在価値
0 −1,000 1 −1,000.00
1 400 0.9524 380.96
2 400 0.9070 362.80
3 400 + 100 = 500 0.8638 431.90
合計(NPV) 175.66

年金現価係数(3年・5%)2.7232を使うと、400 × 2.7232 = 1,089.28万円、残存価額 100 × 0.8638 = 86.38万円、合計1,175.66万円から1,000万円を引いて、同じく175.66万円です。毎年同額の部分は年金現価係数、最終年だけの上乗せは複利現価係数と組み合わせるのが効率的です。

例4:運転資本と旧設備の売却がある場合の初期投資

新設備2,000万円を購入し、旧設備(簿価500万円)を800万円で売却、運転資本が150万円増える場合(税率30%)の0年目のCFは次のとおりです。

内訳 金額
新設備の購入 −2,000万円
旧設備の売却収入 +800万円
売却益への税金((800−500)×0.3) −90万円
運転資本の増加 −150万円
0年目のCF合計 −1,440万円

増えた運転資本は事業終了時に回収されます。毎年の営業CFが480万円、最終年に残存価額200万円と運転資本の回収150万円があれば、最終年のCFは 480 + 200 + 150 = 830万円です。

試験での問われ方

1次試験では、令和6〜8年度に続けてNPVを使う計算問題が出題されており、令和7年度は2問続けて出ました。加えて、NPV法とIRR法などを比べる「投資評価基準の正誤問題」も繰り返し問われています。

パターン1:係数表を使う基本計算

令和7年度 第17問は、税金なし、各年のCFが異なる2年間の投資案でNPVを求める問題です。複利現価係数表から資本コスト6%の列を正しく読み、各年のCFに掛けて合計し、初期投資を差し引くだけで解けます。係数表には複数の割引率が並んでいるため、列の読み違いがそのまま失点につながります。

パターン2:税引後CF・残存価額を含む計算

令和7年度 第18問は、販売価格・販売数量・変動費・業務費・減価償却(残存価額は取得原価の10%)から毎年の税引後CFを組み立て、年金現価係数と複利現価係数を使い分ける総合問題です。税引後CFは毎年50,100千円、NPVは78,132千円になります。

この問題の誤答選択肢は、典型的なミスと対応しています。

  • 残存価額の売却収入(15,000千円×0.78)を入れ忘れると 66,432千円
  • 減価償却費の足し戻しを忘れると −38,508千円

パターン3:取替投資の差額CF

令和8年度 第18問は、現行設備を新設備に取り替える投資のNPVです。操業費の削減額と減価償却費の増加分から差額CFを求めます。税引後の利益増加700千円に減価償却費の増加300千円を足し戻して毎期1,000千円、1,000×4.45 − 4,000 = 450千円が答えです。足し戻しを忘れると 700×4.45 − 4,000 = −885千円となり、採否の結論まで逆になります。

パターン4:NPV法とIRR法の比較

令和6年度 第17問は、永続的に毎期100百万円のCFが生じる投資(初期投資800百万円、資本コスト10%)について、IRR法とNPV法の採否を問う問題です。永続CFの現在価値は CF ÷ 割引率 で求められるので、NPV = 100 ÷ 0.1 − 800 = 200百万円>0で採択です。

令和4年度 第21問は、回収期間法・NPV法・IRR法の特徴を問う正誤問題です。「CFの符号が複数回変わると異なる値が得られる」のはIRR法の弱点であり、NPVの値は一つに定まるという点が狙われました。IRR法の限界は IRR(内部収益率) のページで詳しく整理しています。

間違えやすいポイント

減価償却費の扱い

よくあるミスは、税引後利益を出したあとに減価償却費を足し戻し忘れることです。逆に、現金収支から求める式((収入−現金支出)×(1−税率))を使ったのに、さらに減価償却費を全額足してしまうミスもあります。この式で足すのは減価償却費×税率(タックスシールド)だけです。どちらの式を使っているかを意識してください。

運転資本の符号

運転資本の増加はCFのマイナス、減少(回収)はCFのプラスです。売上債権や在庫が増えると現金が事業に縛られる、とイメージすると覚えやすくなります。投資開始時に増やした運転資本は、最終年に回収としてプラスに戻します。

割り引く年数のずれ

初期投資は0年目(現在)なので割り引きません。CFが「期末」に発生する前提なら、1年目のCFは1年分割り引きます。問題文の「期首」「期末」の表現を必ず確認します。

係数の取り違え

毎年同額のCFに複利現価係数を掛ける、残存価額に年金現価係数を掛ける、といった取り違えは選択肢にそのまま用意されています。「毎年」なら年金現価係数、「その年だけ」なら複利現価係数です。

割引率が高いほど、将来CFの現在価値は小さくなり、NPVも小さくなります。「資本コストが上がるとNPVが増える」といった選択肢は誤りです。

覚え方・解き方のコツ

NPVの計算は、次の4ステップに分けると迷いません。

  1. 初期投資を特定する:設備購入額、運転資本の増加、旧設備の売却収入と売却損益の税金
  2. 毎年の営業CFを計算する:税引後利益 + 減価償却費
  3. 最終年のCFを計算する:営業CF + 残存価額 + 運転資本の回収
  4. 割り引いて合計し、初期投資を引く:同額部分は年金現価係数、単発部分は複利現価係数

計算問題では、選択肢の数値どうしの差を見ると「どのミスをするとどの選択肢になるか」が見えてきます。自分の答えが選択肢にあっても、減価償却費・残存価額・運転資本の入れ忘れがないかを最後に確認しましょう。

NPVの考え方は、企業全体の将来CFを割り引く DCF法による企業価値評価 とまったく同じ構造です。割引率となる資本コストの求め方は CAPM(資本資産評価モデル) で、WACCとの関係はブログ記事「WACC・NPVとは」で確認できます。わからない箇所は、診断士エアポートのトーレス先生(AI講師)にその場で質問できます。

よくある質問

NPV(正味現在価値)とは簡単にいうと何ですか?

投資で将来得られるお金を今の価値に直して合計し、投資額を差し引いた「正味のもうけ」の金額です。プラスなら投資によって企業価値が増え、マイナスなら減ります。そのため、NPV>0なら投資を実行し、NPV<0なら見送るのが基本の判断です。

NPVとIRRで判断が食い違うのはどんなときですか?

単独の投資案で、最初に投資してその後プラスのCFが続く通常の形なら、両者の採否は一致します。食い違うのは、規模の異なる相互排他的な投資案を比較するときや、CFの符号が複数回変わるときです。その場合は企業価値の増加額を直接示すNPV法を優先します。

NPVの計算で減価償却費を足すのはなぜですか?

減価償却費は損益計算書では費用ですが、実際には現金が出ていかない費用だからです。利益は減価償却費を差し引いて計算されているので、現金ベースのCFに直すには足し戻す必要があります。一方で減価償却費は課税所得を減らすので、減価償却費×税率だけ税金が軽くなる効果(タックスシールド)があります。

年金現価係数と複利現価係数はどう使い分けますか?

毎年同じ金額のCFが続く部分には年金現価係数を、特定の1年だけ発生するCFには複利現価係数を使います。最終年に残存価額や運転資本の回収がある場合は、毎年分を年金現価係数で、最終年の上乗せ分を複利現価係数で割り引いて合計します。

NPVがゼロの投資はどう判断しますか?

NPV=0は、投資のリターンが資本コストとちょうど同じで、企業価値は増えも減りもしない状態です。理論上は実行してもしなくても同じ(無差別)です。なお、NPVがゼロになる割引率がIRR(内部収益率)です。

割引率には何を使えばよいですか?

通常は、企業の資金調達コストであるWACC(加重平均資本コスト)を使います。試験では「資本コストは〇%」と与えられることがほとんどなので、その率の係数を表から読み取ります。割引率が高いほど将来CFの現在価値は小さくなり、NPVも小さくなります。

まとめ

  • NPV = 将来CFの現在価値合計 − 初期投資額。NPV>0なら実行、NPV<0なら見送り、複数案ならNPV最大の案を選ぶ
  • CFは税引後で考え、税引後利益に減価償却費を足し戻す。減価償却費×税率がタックスシールド
  • 毎年同額のCFは年金現価係数、残存価額や運転資本の回収など単発のCFは複利現価係数で割り引く
  • 1次試験では係数表を使う計算問題(令和6〜8年度に連続)と、IRR法などとの比較を問う正誤問題が繰り返し出題される
  • 誤答の選択肢は「減価償却費の足し戻し忘れ」「残存価額の入れ忘れ」など典型ミスに対応している

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