税効果会計は、会計上の利益と税務上の課税所得のズレ(一時差異)を調整し、法人税等を適切な期間に対応させる会計処理です。連結会計は、親会社と子会社をひとつの企業集団とみなして、グループ全体の財政状態・経営成績を表示する会計手法です。どちらも「個別の帳簿をそのまま足すだけでは実態を表せない」ところを直すための仕組みです。
- 税効果会計の対象は一時差異だけ。交際費の損金不算入などの永久差異は対象外
- 将来減算一時差異 → 繰延税金資産、将来加算一時差異 → 繰延税金負債。金額は「一時差異 × 法定実効税率」
- のれん = 取得原価 − 子会社純資産 × 親会社持分比率。日本基準では20年以内に定額法で償却、IFRSは非償却で減損テスト
- 非支配株主持分は連結貸借対照表の純資産の部に表示する(負債ではない)
税効果会計・連結会計とは
税効果会計とは
会計(企業会計)と税務(法人税法)は目的が違うため、費用・収益を認識するタイミングや範囲がずれます。たとえば会計では当期の費用にした引当金繰入額が、税務では当期の損金に認められないことがあります。この場合、当期は会計上の利益より課税所得が大きくなり、税金を「前払い」した状態になります。
何も調整しないと、損益計算書の「法人税等」は税引前当期純利益と対応しません。そこで税効果会計では、将来解消されるズレについて税金の前払い・後払いを繰延税金資産・繰延税金負債として計上し、相手勘定の法人税等調整額で法人税等を補正します。課税所得の計算そのもの(益金・損金と税務調整)は法人税・消費税の基礎で整理しています。
連結会計とは
親会社が子会社を支配している場合、法的には別会社でも、経済的にはひとつの企業集団です。親会社の個別財務諸表だけを見ても、子会社の資産・負債や業績は「子会社株式」という1行にしか表れません。
連結会計では、親会社と子会社の個別財務諸表を合算したうえで、グループ内部のやり取りを消去し、外部との取引だけが残るように作り直します。グループ内で商品を売っても、外部から見れば在庫が移動しただけだからです。
税効果会計の仕組み
一時差異と永久差異
差異には2種類あり、税効果会計の対象になるのは一時差異だけです。
| 区分 | 特徴 | 代表例 | 税効果会計 |
|---|---|---|---|
| 一時差異 | 将来いずれ解消される | 減価償却の償却限度超過額、引当金の損金算入限度超過額、繰越欠損金(※) | 対象 |
| 永久差異 | 将来も解消されない | 交際費・寄付金の損金不算入額、受取配当金の益金不算入額 | 対象外 |
※繰越欠損金は厳密には一時差異ではありませんが、将来の課税所得を減らす効果があるため一時差異と同様に扱います(令和4年度 第7問で出題)。
繰延税金資産と繰延税金負債
一時差異は、将来の課税所得を減らすか増やすかで2つに分かれます。
| 差異の種類 | 発生する場面 | 将来の効果 | 計上する科目 |
|---|---|---|---|
| 将来減算一時差異 | 会計上の費用 > 税務上の損金 | 将来の課税所得が減る | 繰延税金資産(資産の部) |
| 将来加算一時差異 | 会計上の費用 < 税務上の損金(例:積立金方式の圧縮記帳) | 将来の課税所得が増える | 繰延税金負債(負債の部) |
計上額はどちらも 一時差異 × 法定実効税率 です。繰延税金資産を計上するときの仕訳は「(借)繰延税金資産 /(貸)法人税等調整額」で、法人税等を減らす方向に働きます。
繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は「将来の税金が減る」という効果を前提にした資産なので、将来に十分な課税所得が見込まれる場合にだけ計上できます。赤字が続き将来の課税所得が見込めない企業では、計上が制限されたり、計上済みの繰延税金資産を取り崩したりします。業績不振企業で繰延税金資産の取り崩しが問題になるのはこのためです。
連結会計の仕組み
連結の基本手続き
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 個別財務諸表の合算 | 親会社と子会社のB/S・P/Lを科目ごとに足す |
| ② 投資と資本の相殺消去 | 親会社の「子会社株式」と、子会社の純資産(支配獲得時)を相殺する |
| ③ 内部取引の消去 | グループ間の売上と仕入、売掛金と買掛金などを相殺する |
| ④ 未実現利益の消去 | グループ内取引で付けた利益のうち、期末在庫などに残っている分を消す |
| ⑤ のれんの計上・償却 | 投資額が子会社純資産の持分額を超える部分をのれんとし、毎期償却する |
のれんと非支配株主持分
- のれん = 取得原価 − 子会社純資産(時価)× 親会社持分比率 ブランド力・顧客基盤・ノウハウなど、帳簿に載らない価値に支払ったプレミアムです。無形固定資産に計上し、日本基準では20年以内に定額法で償却します(償却額は販売費及び一般管理費)。IFRSでは償却せず、減損テストを行います。
- 負ののれん:取得原価が持分額を下回る差額。負債には計上せず、発生した期の利益(特別利益)として処理します。
- 非支配株主持分 = 子会社純資産 × 非支配株主の持分比率 親会社以外の株主に帰属する部分で、連結貸借対照表の純資産の部に表示します。子会社が利益を出せば「当期純利益 × 非支配株主比率」だけ増え、損失や配当で減ります。
具体例で確認する
例1:税効果会計(繰延税金資産の計上)
ある会社の当期の会計と税務の差異が次のとおりだったとします(法定実効税率30%)。
| 項目 | 会計上 | 税務上 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200万円 | 150万円 | 将来減算一時差異 50万円 |
| 貸倒引当金繰入額 | 100万円 | 60万円 | 将来減算一時差異 40万円 |
| 一時差異合計 | — | — | 90万円 |
| 繰延税金資産 | — | — | 90万円 × 30% = 27万円 |
税引前当期純利益が1,000万円なら、損益計算書は次のようになります。
- 課税所得 = 1,000 + 90 = 1,090万円
- 法人税等(実際の納税額)= 1,090 × 30% = 327万円
- 法人税等調整額 = △27万円(仕訳:(借)繰延税金資産 27 /(貸)法人税等調整額 27)
- 法人税等合計 = 327 − 27 = 300万円 = 税引前当期純利益1,000万円の30%
- 当期純利益 = 1,000 − 300 = 700万円
税効果会計を適用すると、法人税等の負担が税引前当期純利益にきちんと対応することがわかります。
例2:連結会計(のれん・非支配株主持分)
親会社Pが、子会社Sの株式の80%を1,200万円で取得しました。取得時のSの純資産(時価)は1,000万円です。
- 親会社持分 = 1,000 × 80% = 800万円
- のれん = 1,200 − 800 = 400万円
- 非支配株主持分 = 1,000 × 20% = 200万円
- のれんを10年で償却すると、毎年の のれん償却 = 400 ÷ 10 = 40万円(1年後の残高は360万円)
- 翌期にSが当期純利益100万円を計上すると、非支配株主持分は 100 × 20% = 20万円増えて 220万円
投資と資本の相殺消去では、Pの「S社株式1,200」とSの純資産1,000を消し、差額として のれん400 と 非支配株主持分200 を計上します。支配獲得時のSの利益剰余金はこの相殺で消えるため、連結B/Sの利益剰余金は親会社の分だけになります。
試験での問われ方
出題頻度は高くありませんが、令和4年度以降は税効果会計か連結会計のどちらかがほぼ毎年1問出ています。パターンは次の3つです。
| パターン | 内容 | 該当する過去問 |
|---|---|---|
| 連結B/Sの数値計算 | のれん・非支配株主持分・資産合計・利益剰余金を計算させる | 令和8年度 第9問 |
| 連結の正誤問題 | 期中取得、債権債務の相殺、非支配株主持分の表示、負ののれん、決算日の差異 | 令和7年度 第10問、令和5年度 第4問 |
| 税効果会計の計算・仕訳 | 繰延税金資産の増減、資産か負債かの判定、繰越欠損金の仕訳 | 令和7年度 第9問、令和4年度 第7問 |
- 令和8年度 第9問:親会社が子会社株式の70%を取得した直後の連結B/Sについて、のれん(10,000 − 9,000 × 70% = 3,700千円)、非支配株主持分(9,000 × 30% = 2,700千円)、資産合計、利益剰余金の正誤を判定します。正解は「利益剰余金は親会社分の10,000千円だけ」という肢でした。
- 令和7年度 第10問:期中取得の論点が中心です。取得日以降の子会社損益だけを連結するので、非支配株主持分は 500 + 100 × 30% = 530百万円。のれんを期中(10月1日)に計上した場合の償却額は月割りで 200 ÷ 10 × 6/12 = 10百万円になります。
- 令和5年度 第4問:「非支配株主持分は負債の部」「負ののれんは固定負債」といった誤りの肢を見抜けるかが問われました。
- 令和7年度 第9問:賞与引当金の損金不算入額が3,000千円から3,300千円に増えたとき、繰延税金資産は 900 → 990千円で90千円増えます。減価償却の耐用年数の違いで「繰延税金負債」が生じるとする肢は、資産か負債かの判定が論点です。
- 令和4年度 第7問:繰越欠損金400万円 × 30% = 120万円の繰延税金資産を計上する仕訳(借方 繰延税金資産、貸方 法人税等調整額)を選びます。
間違えやすいポイント
正誤問題のひっかけは、ほとんどが「資産と負債の取り違え」「永久差異の混入」「表示区分の誤り」です。
- 将来減算 → 資産、将来加算 → 負債を逆にした肢が定番です。「将来の税金が減る=前払いした=資産」と理由で覚えると逆にしません。
- 会計上の償却費が税務上の償却限度額より少ない場合、税務でも会計で費用にした額までしか損金にできない(損金経理が要件)ため、原則として差異は生じません。令和7年度 第9問の選択肢アのように、税務上の耐用年数が短いから繰延税金負債が出る、という肢に注意しましょう。
- 交際費・寄付金の損金不算入、受取配当金の益金不算入は永久差異。税効果会計の対象になるとする肢は誤りです。
- 非支配株主持分は純資産の部。負債の部とする肢は誤りです。
- 負ののれんは負債ではなく特別利益。のれんを「即時に全額費用処理」とする肢も誤り(日本基準)です。
- 連結P/Lの当期純利益は、親会社株主分と非支配株主分を合わせた金額です。親会社1,000+子会社500なら(内部取引がなければ)当期純利益は1,500で、1,000 + 500 × 70% = 1,350 は「親会社株主に帰属する当期純利益」です。
- 期中取得では、取得日より前の子会社損益は連結しません。のれん償却も取得日からの月割りです。
- 連結子会社には全部連結を適用します。持分法は非連結子会社や関連会社に使う方法で、連結子会社に持分法を使うとする肢は誤りです。
覚え方・解き方のコツ
- 税効果は「税金の前払い・後払い」と読み替える。当期に会計より多く税金を払った(将来減算)なら前払い=資産、少なく払った(将来加算)なら後払い=負債です。
- 繰延税金資産の増減は「期末残高 − 期首残高」で考える。一時差異の残高 × 税率で期首・期末の残高を出し、差を取れば法人税等調整額になります。
- 連結B/Sは3点セットで計算する。①子会社純資産 × 親会社比率 → のれん、②子会社純資産 × 非支配比率 → 非支配株主持分、③親会社資産 − 子会社株式 + 子会社資産 + のれん → 資産合計。令和8年度 第9問はこの順で解けます。
- 連結の利益剰余金は「支配獲得後に増えた分」だけ子会社から入る。取得直後なら親会社の利益剰余金そのままです。
- 深追いは禁物です。持分法の詳細や複雑な連結修正より、上の基本パターンを確実に取るほうが得点効率は高くなります。
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よくある質問
一時差異と永久差異はどう見分ければいい?
「その差がいつか逆向きに戻るか」で判断します。減価償却の限度超過額や引当金の繰入限度超過額は、資産の売却・償却完了や引当金の取崩しのときに損金になるので一時差異です。交際費の損金不算入額は将来も損金にならないので永久差異で、税効果会計の対象外です。
繰延税金資産と繰延税金負債の違いは?
繰延税金資産は将来減算一時差異から生じ、将来の税金を減らす効果を持つ「税金の前払い」です。繰延税金負債は将来加算一時差異から生じ、将来の税金を増やす「税金の後払い」です。どちらも一時差異に法定実効税率を掛けて計算します。
法人税等調整額とは何?
税効果会計で繰延税金資産・負債を計上・取り崩すときの相手勘定で、損益計算書の法人税等の下に加減して表示します。繰延税金資産を計上すると法人税等調整額はマイナス(法人税等を減らす)になります。これにより法人税等の合計が税引前当期純利益に対応します。
のれんはどうやって計算する?
のれんは「取得原価 − 子会社純資産(時価)× 親会社持分比率」で計算します。たとえば純資産1,000万円の会社の80%を1,200万円で取得すれば、1,200 − 800 = 400万円です。日本基準では無形固定資産に計上し、20年以内の期間で定額法により償却します。
非支配株主持分はどこに表示する?
連結貸借対照表の純資産の部に表示します。子会社の純資産のうち親会社以外の株主に帰属する部分であり、返済義務のある負債とは性質が違うためです。金額は子会社純資産に非支配株主の持分比率を掛けて求め、子会社の利益に応じて増減します。
日本基準とIFRSでのれんの扱いはどう違う?
日本基準では、のれんを20年以内の効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却し、収益性が低下すれば減損処理も行います。IFRSでは償却せず、毎期減損テストを行い、減損が生じたときだけ損失を計上します。試験では「IFRSでも償却する」「日本基準では償却しない」という入れ替えに注意します。
まとめ
- 税効果会計は一時差異に係る税金の前払い・後払いを調整し、法人税等を税引前当期純利益に対応させる処理。永久差異は対象外
- 将来減算一時差異 → 繰延税金資産、将来加算一時差異 → 繰延税金負債。金額は一時差異 × 法定実効税率で、資産は回収可能性があるときだけ計上できる
- 連結会計は合算 → 投資と資本の相殺消去 → 内部取引・未実現利益の消去 → のれんの計上・償却が基本手続き
- のれん = 取得原価 − 子会社純資産 × 親会社持分比率。日本基準は20年以内に償却、IFRSは非償却で減損テスト
- 非支配株主持分は純資産の部。負ののれんは特別利益。期中取得は取得日以降の損益だけを連結する
