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回収期間法とは?計算方法・割引回収期間法・欠点を過去問で解説

回収期間法の意味と計算方法(毎年のCFが均一な場合・異なる場合)、割引回収期間法との違い、貨幣の時間価値と回収後のCFを無視するという欠点を、中小企業診断士1次試験の過去問に沿って解説。NPV法・IRR法との比較も例題で確認できます。

公開 2026-10-22 ・ 約16分で読めます

目次▾

回収期間法とは、投資額を何年で回収できるかを計算し、その回収期間が基準期間以内であれば投資を実行するという投資評価の手法です。「何年で元が取れるか」という直感的な物差しで判断できるため、計算が簡単で実務でも広く使われています。その一方で、貨幣の時間価値と回収後のキャッシュフロー(CF)を考慮しないという欠点があり、中小企業診断士1次試験ではNPV法・IRR法と比べた「限界」が繰り返し問われます。

  • 回収期間 = 初期投資額 ÷ 年間CF(CFが均一の場合)。CFが異なる場合は累計CFが投資額に達するまでの年数を求め、端数は按分する
  • 欠点は「貨幣の時間価値を無視」「回収期間後のCFを無視」「基準期間の設定が恣意的」の3つ
  • 割引回収期間法はCFを現在価値に割り引いてから累計する改良版。時間価値の問題は解消するが、回収後のCFは依然として無視する

回収期間法とは

設備投資をするとき、経営者が真っ先に気にするのは「投じたお金がいつ戻ってくるか」です。回収期間法は、この感覚をそのまま数字にした手法で、投資額を毎年のCFで回収するのに要する年数(回収期間)を計算します。

求めた回収期間を、あらかじめ決めておいた基準期間と比べます。回収期間が基準期間以内なら投資を実行し、超えるなら見送ります。複数の投資案を比べる場合は、回収期間が短い案ほど有利と判断します。

用語 意味
回収期間 投資額を毎年のCFで回収するのに要する年数
基準期間 投資判断の閾値となる期間。この年数以内なら投資を実行
割引回収期間法 CFを現在価値に割り引いてから回収期間を求める改良版

回収期間法が重視するのは、投資の収益性よりも安全性です。早く回収できる投資ほど、資金が寝ている期間が短く、将来の不確実性にさらされる期間も短くなります。そのため、資金繰りが重要な中小企業や、技術の陳腐化が速くて長期の予測が難しい投資では、判断材料として役に立ちます。

回収期間法の計算方法とメリット・デメリット

計算方法

回収期間の求め方は、毎年のCFが均一かどうかで2通りあります。

CFのパターン 計算方法
毎年のCFが均一 回収期間 = 初期投資額 ÷ 年間CF
毎年のCFが異なる 各年のCFを累計し、投資額に達するまでの年数を求める。年の途中で回収し終わる場合は端数を按分する

CFが異なる場合の端数の按分は、次の式で求めます。

回収期間 = 回収し終わる前年までの年数 +(投資額 − その年までの累計CF)÷ 回収する年のCF

この按分は「その年のCFは1年間を通じて均等に入ってくる」と仮定した計算です。

メリットとデメリット

内容
メリット① 計算が簡単で、誰にでも理解しやすい
メリット② リスクの高い長期投資を排除できる(早く回収できる案が選ばれる)
メリット③ 資金繰りが重要な中小企業で、投資の安全性を確かめる指標として有用
デメリット① 貨幣の時間価値を無視する(将来のCFを割り引かずにそのまま足す)
デメリット② 回収期間後のCFを無視する(長期的な収益性を評価できない)
デメリット③ 基準期間の設定に客観的な根拠がなく、恣意的になりやすい

理論的にはNPV法やIRR法のほうが優れています。回収期間法は簡便なスクリーニング手法として使い、最終的な投資判断は NPV(正味現在価値)法 で行うのが望ましいとされます。

割引回収期間法

割引回収期間法は、各年のCFを割引率(資本コスト)で現在価値に換算してから累計し、投資額を回収するまでの期間を求める方法です。通常の回収期間法の欠点のうち「時間価値の無視」を克服していますが、回収期間後のCFを無視する点は変わりません。

観点 回収期間法 割引回収期間法
累計するCF 名目のCFをそのまま 現在価値に割り引いたCF
貨幣の時間価値 考慮しない 考慮する
回収期間後のCF 無視する 無視する
回収期間の長さ 短めに出る 割り引く分だけ長くなる
CFが不均一な場合 適用できる(累計して按分) 適用できる(累計して按分)

具体例で確認する

例1:毎年のCFが均一な場合

1,000万円を投資して、毎年250万円のCFが得られる投資案です。基準期間は3年とします。

  • 回収期間 = 1,000万円 ÷ 250万円 = 4年

4年は基準期間の3年を超えるので、回収期間法ではこの投資は見送りと判断します。

例2:毎年のCFが異なる場合

1,000万円を投資して、1年目300万円、2年目400万円、3年目500万円、4年目200万円のCFが得られる投資案です。

年 CF 累計CF
1年目 300万円 300万円
2年目 400万円 700万円
3年目 500万円 1,200万円
4年目 200万円 1,400万円
  1. 2年目末の累計は700万円で、投資額1,000万円まで残り300万円
  2. 3年目のCFは500万円なので、3年目のうち 300 ÷ 500 = 0.6年で回収できる
  3. 回収期間 = 2年 + 0.6年 = 2.6年

例3:回収期間が同じでも価値は違う

初期投資額が同じ600万円の2つの投資案を比べます。

項目 投資案A 投資案B
初期投資額 600万円 600万円
1年目CF 200万円 100万円
2年目CF 200万円 150万円
3年目CF 200万円 350万円
回収期間 3.0年 3.0年

どちらも3年間のCF合計が600万円なので、回収期間はともに3.0年です。回収期間法では2つの案に差がつきません。

ところが、割引率10%で3年間のCFを現在価値に直すと結果が変わります。

年 投資案Aの現在価値 投資案Bの現在価値
1年目 181.82万円 90.91万円
2年目 165.29万円 123.97万円
3年目 150.26万円 262.96万円
合計 497.37万円 477.84万円

早い時期にCFが多い投資案Aのほうが、現在価値の合計が約19.5万円大きくなります。回収期間法はCFが入ってくるタイミングの違いを区別できないため、こうした差を見落とします。

例4:割引回収期間法で計算する

1,000万円を投資して、毎年400万円のCFが4年間続く投資案です。割引率は10%とします。

まず通常の回収期間は、1,000 ÷ 400 = 2.5年です。次に、各年のCFを現在価値に割り引いて累計します。

年 CF 現在価値(10%) 累計現在価値
1年目 400万円 363.64万円 363.64万円
2年目 400万円 330.58万円 694.21万円
3年目 400万円 300.53万円 994.74万円
4年目 400万円 273.21万円 1,267.95万円
  1. 3年目末の累計現在価値は994.74万円で、投資額まで残り5.26万円
  2. 4年目の現在価値273.21万円で按分すると、5.26 ÷ 273.21 ≒ 0.02年
  3. 割引回収期間 ≒ 3年 + 0.02年 ≒ 3.02年

割り引いた分だけ1年回収できるCFが小さくなるので、割引回収期間(約3.02年)は通常の回収期間(2.5年)より長くなります。なお、4年目末の累計現在価値1,267.95万円から投資額を引いた267.95万円が、この投資案のNPVです。

例5:回収後のCFを無視する問題

どちらか一方しか選べない2つの投資案を、回収期間法とNPV法(割引率10%)で比べます。

項目 投資案C 投資案D
初期投資額 1,000万円 1,000万円
各年のCF 500万円 ×2年 300万円、300万円、400万円、600万円、600万円
回収期間 2年 3年
NPV(10%) △132.23万円 +603.55万円

回収期間法では2年で回収できる投資案Cが有利に見えます。しかし、投資案Cは回収した時点でCFが途絶えるため、時間価値を考えるとNPVはマイナスです。投資案Dは回収に3年かかるものの、4年目以降も大きなCFが続くため、NPVは大きなプラスになります。回収期間後のCFを見ない回収期間法では、長期的に収益性の高い案を見落とすことがわかります。

試験での問われ方

採用した過去問を見ると、回収期間法は単独で計算させるよりも、NPV法・IRR法などと並べた正誤問題の選択肢として問われるのが中心です。問われるのはほぼ「欠点・限界」と「割引回収期間法の性質」です。

年度・問題 形式 問われた内容
令和4年度 第21問 組み合わせ正誤 回収期間法が回収後のCFを無視すること、回収期間とIRRの関係

パターン1:回収期間法の欠点を問う

令和4年度 第21問 では「回収期間法では、回収後のキャッシュフローを無視している」という記述が正しいものとして出題されました。同じ問題で「回収期間が短いほど、内部収益率は高くなる」という記述は誤りです。IRRは回収後も含めた全期間のCFで決まるため、回収期間が短くても回収後のCFが少なければIRRは低くなります。例5の投資案Cと投資案Dの関係がまさにこれです。

パターン2:割引回収期間法の性質を問う

令和7年度 第19問 では、会計的投資利益率法・収益性指数法・内部収益率法と並んで「割引回収期間法は、各期のキャッシュフローが均一でない場合には適用できない」という記述が出され、これは誤りでした。割引回収期間法は各年のCFを個別に割り引いて累計するので、CFが均一でなくても問題なく計算できます(例4の計算手順を不均一なCFに当てはめるだけです)。

回収期間法の選択肢は、「何を考慮して、何を考慮しないか」を正確に覚えていれば判断できます。通常の回収期間法は時間価値も回収後CFも考慮しない、割引回収期間法は時間価値だけ考慮する、と整理しておきましょう。

間違えやすいポイント

回収期間法・NPV法・IRR法の違い

観点 回収期間法 NPV法 IRR法
何を見るか 何年で元が取れるか いくら価値が増えるか(金額) 投資の利回り(率)
判断基準 回収期間が基準期間以内なら採択 NPV>0なら採択 IRR>資本コストなら採択
貨幣の時間価値 考慮しない 考慮する 考慮する
全期間のCF 回収後のCFは無視 すべて考慮 すべて考慮
重視する観点 安全性 収益性 収益性

IRR法の詳しい計算や限界は IRR(内部収益率) のページで整理しています。

ひっかけ1:「回収期間法は時間価値を考慮する」

通常の回収期間法は将来のCFを割り引かずにそのまま足すので、時間価値を考慮しません。時間価値を考慮するのは割引回収期間法という別の手法です。両者を取り違えた選択肢に注意しましょう。

ひっかけ2:「割引回収期間法なら回収後のCFも評価できる」

割引回収期間法が克服したのは時間価値の問題だけです。回収期間を求めた時点で計算が終わるので、回収後のCFは依然として無視されます。全期間のCFを評価したいならNPV法を使います。

ひっかけ3:「回収期間が短いほど収益性が高い」

回収期間は「回収の速さ」を示すだけで、収益性の指標ではありません。回収期間が短くても、回収後にCFが途絶えればNPVはマイナスになりえます。「回収期間が短いほどIRRが高い」「回収期間が短いほどNPVが大きい」はいずれも誤りです。

ひっかけ4:「計算が複雑で実務に向かない」

回収期間法の最大のメリットは計算が簡便で理解しやすいことです。短所を問う問題で「計算が複雑」という選択肢が出たら、それは誤りの記述です。

割引回収期間は、割り引いた分だけ通常の回収期間より長くなります。毎年のCFがプラスで割引率もプラスである限り、割引回収期間が通常の回収期間より短くなることはありません。計算結果の検算に使えます。

覚え方・解き方のコツ

  • **「回収期間法は元が取れるまでしか見ない」**と覚える。だから「時間価値」も「回収後」も見ていない、と2つの欠点が自然に出てくる
  • 割引回収期間法は「半分だけ改良」:時間価値は解決、回収後CFは未解決。選択肢ではどちらの欠点の話をしているかを確認する
  • CFが異なるときは必ず累計表を作る:年・CF・累計CFの3列を書き、投資額を超える年を見つけてから端数を按分する
  • 按分の分母は「回収する年のCF」:累計CFではなく、その年1年分のCFで割る。割引回収期間法なら、その年のCFの現在価値で割る
  • 正誤問題は3手法の比較表で解く:時間価値・全期間CF・判断基準の3点で、回収期間法・NPV法・IRR法を見比べる

3つの手法をまとめて復習したい場合は、ブログ記事「WACC・NPVとは」も参考にしてください。わからない箇所は、診断士エアポートのトーレス先生(AI講師)にその場で質問できます。

よくある質問

回収期間法とは簡単にいうと何ですか?

投資額を何年で回収できるか、つまり「何年で元が取れるか」で投資を判断する手法です。回収期間が、あらかじめ決めた基準期間以内であれば投資を実行します。計算が簡単なので実務でもよく使われますが、理論的にはNPV法のほうが優れています。

回収期間の計算で端数が出たときはどうしますか?

回収し終わる年のCFが1年間を通じて均等に入ってくると仮定して按分します。「回収し終わる前年までの年数 +(投資額 − その年までの累計CF)÷ 回収する年のCF」で求めます。たとえば2年目末までの累計が700、投資額が1,000、3年目のCFが500なら、2 + 300 ÷ 500 = 2.6年です。

回収期間法の欠点は何ですか?

主な欠点は、貨幣の時間価値を無視すること、回収期間後のCFを無視すること、基準期間の設定が恣意的になりやすいことの3つです。このため長期的な収益性を正しく評価できず、企業価値を増やす投資を見落とすことがあります。試験ではこの欠点が正誤問題の選択肢として繰り返し問われます。

割引回収期間法と回収期間法の違いは何ですか?

割引回収期間法は、各年のCFを割引率で現在価値に換算してから累計し、回収期間を求めます。そのため貨幣の時間価値を考慮できる点が通常の回収期間法との違いです。ただし、回収期間後のCFを無視する点は変わらず、割引回収期間は通常の回収期間より長くなります。

割引回収期間法はCFが均一でなくても使えますか?

使えます。各年のCFをそれぞれ現在価値に割り引いて累計していくだけなので、CFが年ごとに違っても計算できます。令和7年度 第19問では「各期のCFが均一でない場合には適用できない」という記述が誤りの選択肢として出題されました。

回収期間が短い投資案ほどNPVやIRRも高いのですか?

そうとは限りません。NPVやIRRは回収後も含めた全期間のCFで決まるため、早く回収できても回収後のCFが少なければ、NPVやIRRは低くなります。令和4年度 第21問では「回収期間が短いほど内部収益率は高くなる」が誤りの記述でした。

まとめ

  • 回収期間法は投資額を何年で回収できるかで判断する手法。回収期間が基準期間以内なら採択する
  • 計算は「投資額 ÷ 年間CF」(均一の場合)、または累計CFが投資額に達するまでの年数を求めて端数を按分する
  • 欠点は「時間価値を無視」「回収後のCFを無視」「基準期間が恣意的」。メリットは計算が簡便で安全性を重視できること
  • 割引回収期間法は時間価値を考慮する改良版だが、回収後のCFは無視したまま。CFが不均一でも適用できる
  • 試験ではNPV法・IRR法と並べた正誤問題が中心。最終的な投資判断はNPV法で行う、という位置づけを押さえておく

「回収期間法」が出題された過去問

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