アプリで今すぐ学習
財務・会計ファイナンス > 企業価値

株価算定(配当割引モデル)とは?ゴードンモデルの公式を過去問で解説

配当割引モデル(DDM)による理論株価の求め方を、ゼロ成長モデル・定率成長モデル(ゴードンモデル)の公式、D₁とD₀の違い、PER・PBRとの関係まで、中小企業診断士1次試験の過去問に沿って解説。数値例で計算手順も確認できます。

公開 2026-10-23 ・ 約15分で読めます

目次▾

株価算定とは、株式の理論的な価値(理論株価)を求めることです。代表的な手法である配当割引モデル(DDM:Dividend Discount Model)は、将来受け取る配当をすべて株主資本コストで割り引き、その現在価値の合計を理論株価とする方法です。中小企業診断士1次試験の財務・会計では、配当が一定率で伸びる「定率成長モデル(ゴードンモデル)」の計算を中心に、サステナブル成長率やWACCと組み合わせた形で出題されます。

  • ゼロ成長モデルは P = D ÷ rE、定率成長モデル(ゴードンモデル)は P = D₁ ÷(rE − g)
  • 分子は来期の配当 D₁ = D₀ ×(1 + g)。今期配当 D₀ をそのまま使うのが定番のひっかけ
  • 公式が使えるのは rE > g のときだけ。成長率 g にはサステナブル成長率(ROE × 内部留保率)を使える
  • 式を変形すれば株主資本コストも求められる(rE = D ÷ P、rE = D₁ ÷ P + g)

株価算定(配当割引モデル)とは

株主が株式から受け取るお金は、保有中の配当と、売却したときの売却代金です。売却代金も、買った人がその先で受け取る配当の価値で決まると考えると、**株式の価値は「将来受け取るすべての配当の現在価値」**に行き着きます。これが配当割引モデルの考え方です。

発想は債券と同じです。債券の価値が「将来の利息と元本の現在価値」であるように、株式の価値は「将来の配当の現在価値」です。違うのは、株式には満期がなく、配当が永久に続くと仮定する点です。

割引率には株主資本コスト(rE)、つまり株主が要求する収益率を使います。会社全体の価値を求めるDCF法ではWACCで割り引きますが、配当は株主だけが受け取るお金なので、株主の要求収益率で割り引くのが筋です。株主資本コストはCAPMで求めることが多く、詳しくはCAPMのページで扱っています。

なお、理論株価を求める方法は配当割引モデルだけではありません。PER・PBRなどの倍率を使う方法や、企業全体のFCFから求めるDCF法もあり、実務では複数の方法を併用して妥当性を確かめます。

配当割引モデルの公式・仕組み

基本式と2つの代表モデル

配当割引モデルの基本式は次のとおりです。

P = D₁ ÷(1 + rE) + D₂ ÷(1 + rE)² + D₃ ÷(1 + rE)³ + …

(P:理論株価、Dt:t期の予想配当、rE:株主資本コスト)

配当が永久に続くため、このままでは計算できません。そこで、配当の伸び方に仮定を置いて式を簡単にします。試験で使うのは次の2つです。

モデル 配当の前提 公式 使う場面
ゼロ成長モデル 毎期一定額の配当が永久に続く P = D ÷ rE 「毎期一定額の配当」と書かれた問題
定率成長モデル(ゴードンモデル) 配当が毎期一定率 g で永久に成長する P = D₁ ÷(rE − g) 「毎年◯%ずつ増加」と書かれた問題

ゼロ成長モデルは、定率成長モデルで g = 0 とした特殊ケースです。どちらも永久に続くキャッシュフローの現在価値(永久年金の公式)と同じ形をしています。

公式の各記号

記号 意味 注意点
D₀ 今期(直近)の配当 実績値。公式には直接入れない
D₁ 来期の予想配当 D₁ = D₀ ×(1 + g)
rE 株主資本コスト(株主の要求収益率) CAPMで求めることが多い
g 配当の成長率 rE > g が前提。サステナブル成長率を使うことも

公式から読み取れる株価の動き

ゴードンモデル P = D₁ ÷(rE − g)からは、各要素が株価にどう効くかが読み取れます。

要素の変化 式への影響 理論株価
来期配当 D₁ が増える 分子が大きくなる 上がる
株主資本コスト rE が上がる 分母が大きくなる 下がる
成長率 g が上がる 分母が小さくなる(D₁ も増える) 上がる

rE ≦ g だと分母がゼロ以下になり、株価が無限大やマイナスになってしまいます。「成長率が割引率より高くても計算できる」という記述は誤りです。

PER・PBRによる株価算定

配当割引モデルと並んで押さえたいのが、倍率(マルチプル)を使う方法です。

指標 計算式 株価の求め方
PER(株価収益率) 株価 ÷ EPS(1株当たり利益) 理論株価 = EPS × 適正PER
PBR(株価純資産倍率) 株価 ÷ BPS(1株当たり純資産) 理論株価 = BPS × 適正PBR

PERの「E」は Earnings(利益)、PBRの「B」は Book value(帳簿上の純資産)です。また、ROE = EPS ÷ BPS なので PBR = ROE × PER の関係が成り立ちます。類似企業のPERを当てはめる方法は簡便ですが、市場全体の過大評価・過小評価の影響を受けます。

配当性向・内部留保とサステナブル成長率

ゴードンモデルの g をどう見積もるかで登場するのが、サステナブル成長率です。

用語 計算式
配当性向 配当金 ÷ 当期純利益
内部留保率 1 − 配当性向
サステナブル成長率 ROE × 内部留保率

外部から資金を調達せず、ROEと配当性向が毎期一定なら、利益も配当も毎期この率で伸びます。そのため、サステナブル成長率は配当割引モデルの成長率 g として使えます。

具体例で確認する

例題1:ゴードンモデルで理論株価を求める

今期の配当 D₀ = 50円、配当成長率 g = 3%、株主資本コスト rE = 8% の株式の理論株価を求めます。

手順1:来期の配当 D₁ を求める

D₁ = 50 ×(1 + 0.03)= 51.5円

手順2:ゴードンモデルに当てはめる

P = 51.5 ÷(0.08 − 0.03)= 51.5 ÷ 0.05 = 1,030円

市場株価が900円なら理論株価より安いので割安、1,200円なら割高と判断できます。もし D₀ = 50円 をそのまま使うと 50 ÷ 0.05 = 1,000円 となり、誤りの選択肢になります。

例題2:前提が変わると株価はどう動くか

例題1をもとに、条件を1つずつ変えてみます。

ケース 計算 理論株価
基準(rE 8%、g 3%) 51.5 ÷ 0.05 1,030円
rE が9%に上昇 51.5 ÷ 0.06 約858円
g が4%に上昇 52 ÷ 0.04(D₁ = 50 × 1.04) 1,300円
配当が毎期60円で一定(ゼロ成長) 60 ÷ 0.08 750円

分母の(rE − g)はわずかな差なので、1%の変化でも株価は大きく動きます。g が変わると D₁ も変わる点に注意してください。

例題3:株価から株主資本コストを逆算する

株価 P = 1,000円、来期の配当 D₁ = 50円、成長率 g = 3% のとき、ゴードンモデルを変形すると次のようになります。

rE = D₁ ÷ P + g = 50 ÷ 1,000 + 0.03 = 0.05 + 0.03 = 8%

ゼロ成長なら rE = D ÷ P です。この逆算はWACCの計算で株主資本コストが直接与えられていないときに使います(WACCのページも参照)。

例題4:PERとPBRで株価を求める

EPS = 80円、類似企業の平均PER = 12倍 なら、理論株価 = 80 × 12 = 960円 です。BPS = 800円 なら、PBR = 960 ÷ 800 = 1.2倍。ROE = 80 ÷ 800 = 10% なので、ROE × PER = 0.1 × 12 = 1.2倍 と一致します。

試験での問われ方

1次試験では、配当割引モデルの単独の計算に加えて、他の論点の「部品」として使わせる問題が目立ちます。

過去問 形式 問われた内容
令和7年度 第16問 計算 ゼロ成長の配当割引モデルで株主資本コストを求め、WACCを計算
令和6年度 第21問 計算 サステナブル成長率と、配当支払後の株主価値の組み合わせ
令和5年度 第20問 計算 毎年3%成長するキャッシュフローから定率成長モデルで株主価値を算定
令和5年度 第21問 正誤 サステナブル成長率の定義と、配当割引モデルの成長率としての利用

パターン1:式を逆に使って株主資本コストを出す

令和7年度 第16問は、毎期一定額の配当を行う会社のWACCを求める問題で、株主資本コストは「配当割引モデルによって求める」と指定されていました。株価を 5,000万円 ÷ 100万株 = 50円 と出し、rE = 5 ÷ 50 = 10% とするのがポイントです。

パターン2:定率成長モデルで価値を求める

令和5年度 第20問は、負債のない会社の株主価値を求める問題です。FCF = 1,200 + 300 − 500 − 100 = 900万円 を出し、900 ÷(6% − 3%)= 30,000万円 と計算します。成長率を無視した 900 ÷ 6% = 15,000万円 も選択肢に入っていました。配当でなくFCFを割り引く問題でも、式の形はゴードンモデルと同じです。

パターン3:サステナブル成長率との組み合わせ

令和6年度 第21問では、ROE 5%・配当性向40%から、サステナブル成長率 = 5% × 0.6 = 3% を求めます。株主価値は、当期末の自己資本 3,000 + 150 − 60 = 3,090万円 です。

この答えはゴードンモデルでも確かめられます。来期の配当は 3,090 × 5% × 40% = 61.8万円 なので、61.8 ÷(5% − 3%)= 3,090万円 と一致します。ROEと要求収益率がともに5%で等しいため、株主価値が自己資本の簿価と一致するのです。

令和5年度 第21問は正誤問題で、「サステナブル成長率は配当割引モデルにおける配当成長率として用いることができる」が正解でした。「ROEに配当性向を乗じる」という誤りの選択肢も出ています。

間違えやすいポイント

D₀ と D₁ の取り違え

定番のミスです。問題文の「今期の配当」「直近の配当」は D₀、「来期の予想配当」「次期の配当」は D₁ です。D₀ が与えられたら、必ず(1 + g)を掛けてから公式に入れます。選択肢には D₀ をそのまま使った値がよく用意されています。

成長率の引き忘れ・足し忘れ

定率成長の問題で rE だけで割ると、株価は小さく出ます(令和5年度 第20問の選択肢ア)。逆算で rE を求めるときは「D₁ ÷ P」に g を足すのを忘れないようにします。

rE > g の前提

「配当成長率が割引率を上回っても株価を計算できる」は誤りです。分母がマイナスになり、モデルが成り立ちません。

割引率の取り違え

求めたいもの 割り引く対象 割引率
株式価値(配当割引モデル) 配当 株主資本コスト
企業価値(DCF法) FCF WACC

負債のない会社では株主資本コスト = WACC なので、令和5年度 第20問のように「株主の要求収益率」でFCFを割り引く形になります。DCF法の手順はDCF法のページで詳しく解説しています。

サステナブル成長率と配当性向の関係

サステナブル成長率 = ROE ×(1 − 配当性向)です。ROE × 配当性向ではありません。配当性向を上げると内部留保率が下がり、サステナブル成長率は低下します。全額配当なら成長率はゼロです。

PER と PBR の混同

「PERは株価をBPSで割る」はPBRの説明なので誤りです。E(利益)と B(純資産)で区別します。

覚え方・解き方のコツ

  • 「1年先の配当 ÷(割引率と成長率の差)」と覚える。 分子は来期、分母は rE − g。まず D₁ を書き出すクセをつけると、D₀ のひっかけを避けられます。
  • 問題文の言葉でモデルを選ぶ。 「毎期一定額」ならゼロ成長、「毎年◯%増加」なら定率成長です。
  • 株主資本コストが与えられていなければ逆算を疑う。 WACCの問題で配当と株価(または時価総額と株式数)が与えられたら、rE = D ÷ P の出番です。
  • 永久年金の式とセットで覚える。 ゼロ成長の P = D ÷ r は、DCF法の継続価値やFCFの永久成長と同じ形です。1つの型で複数の論点を解けます。
  • 検算に公式の性質を使う。 rE が上がれば株価は下がる、g が上がれば株価は上がる、という向きと答えが合っているかを確かめます。

公式の意味や計算の流れでつまずいたら、診断士エアポートのトーレス先生(AI講師)にその場で質問できます。

よくある質問

配当割引モデルの公式で D₁ を使うのはなぜ?

株価は「今から見た将来の配当の現在価値」なので、最初に受け取るのは1年後の配当 D₁ だからです。今期の配当 D₀ はすでに支払われており、これから株式を買う人は受け取れません。D₀ が与えられたら D₁ = D₀ ×(1 + g)に直してから計算します。

ゼロ成長モデルと定率成長モデルはどう使い分ける?

配当が毎期一定額ならゼロ成長モデル(P = D ÷ rE)、毎期一定率で増えるなら定率成長モデル(P = D₁ ÷(rE − g))を使います。問題文に「毎期一定額の配当」「毎年◯%ずつ増加」といった前提が書かれているので、その言葉で判断します。

成長率 g が株主資本コスト rE より大きいとどうなる?

分母(rE − g)がゼロ以下になり、理論株価が求められません。ゴードンモデルは rE > g を前提とした公式です。試験では「成長率が割引率より高くても計算できる」という記述が誤りとして出されます。

配当割引モデルで株主資本コストを求めるには?

公式を変形して、ゼロ成長なら rE = D ÷ P、定率成長なら rE = D₁ ÷ P + g で求めます。令和7年度 第16問では、株価50円・配当5円から rE = 10% を出し、WACCの計算に使いました。

サステナブル成長率と配当割引モデルはどう関係する?

サステナブル成長率(ROE × 内部留保率)は、外部資金に頼らず内部留保だけで達成できる成長率です。ROEと配当性向が毎期一定なら配当も同じ率で伸びるため、ゴードンモデルの成長率 g として使えます。令和5年度 第21問ではこの関係が正解の選択肢になりました。

配当割引モデルとDCF法の違いは?

配当割引モデルは配当を株主資本コストで割り引いて株式の価値を直接求めます。DCF法はFCFをWACCで割り引いて企業価値を求め、そこから有利子負債を差し引いて株主価値を出します。配当を出していない企業にはDCF法のほうが使いやすく、汎用性が高い方法です。

まとめ

  • 配当割引モデルは、将来の配当を株主資本コストで割り引いた現在価値の合計を理論株価とする
  • ゼロ成長は P = D ÷ rE、定率成長(ゴードンモデル)は P = D₁ ÷(rE − g)。D₁ = D₀ ×(1 + g)に注意
  • rE > g が前提。g にはサステナブル成長率(ROE × 内部留保率)を使える
  • 式を変形すれば株主資本コストを求められ、WACCの問題で使われる
  • PER = 株価 ÷ EPS、PBR = 株価 ÷ BPS、PBR = ROE × PER の関係も押さえる

「株価算定(配当割引モデル等)」が出題された過去問

解説付きで無料公開しています。選択肢をタップするとその場で正誤と解説が読めます。

トーレス先生
月あたり3,317円〜で全機能が使える

トーレス先生と学ぶ、新時代の資格学習

現役診断士監修の映像授業・過去問演習・単語帳に、トーレス先生がいつでも伴走。 「わからない」をその場で質問でき、トーレスと一緒に学べば、つまずかずに合格まで走り抜けられます。

関連する論点